本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

万引きに売り上げの偽装手クセの悪い男

人には誰でも一つや二つ、悪癖というものがある。酒グセ、女グセ、虚言癖。
俺の場合は「手クセ」だ。
窃盗がリッパな犯罪だとは百も承知だが、バクらずにいれないこの性分。
盗みのない人生など、とても考えられない。モノ心ついたころから、手クセの悪いガキだった

幼稚園のころには、近所の駄菓子屋でガムやらキャンディをくすね、小学校に上がると、下校の道すがら、消しゴムやシャーペンなどの文房具、マンガ本をパクるのが日
課となっていた。
しかも俺の場合、商品は箱ごと、マンガなら一気に3,4冊かっさらい、後で友達に売つばらうから始末に悪い。
そして稼いだカネがなくなったら、またぞろ盗みに。まさにビョーキだ。
もちろん、良心の珂責などない。
まだ時代が昭和だったころの、関西の田舎町で営業している駄菓子屋や文房具屋など、防犯カメラどころか、店の人間も呼ばなきゃ出てこないようなところばかり。ごく自然に手が動いたというのが正直なところだ。
なぜここまでグレたのか・自分ではよくわからないが、共働きの両親の仲は悪く、家庭はいつも暗かった。
どこかに遊びに連れていってもらった記憶もない。盗みは、その寂しさを紛らわせるための手段だったのかもしれない。
小5になると、親の財布もターゲツトにした。初めて抜いた額は3万円。

ガキには大金だが、ゲームセンターで友達と豪遊し、3日ともたなかった。無くなればまた盗む・その繰り返しだった。
ようやく母親に悟られたのは、カギのかかった父親の机をクギ抜きでブッ壊し、中の金を盗んだときだ。
「おとーちゃんの財布から金抜いたんは誰や。ワタル、オマエか」
「知らんわ。おにーちゃんやろ」
「ほんまか?哲朗はやってない言うとるで」
「オカーチャンは、ボクのこと信用でけへんの?おにーちゃんの方が好きなん?」
「…わかったわ。私が悪かったから・機嫌直して」
母親は末っ子の俺にいつもアマかつた。小学校6年、初めての挫折が訪れる。
帰り道の本屋で『北斗の拳』の新刊を3冊ほどカバンに放り込んだところ、後ろから首根っこを掴まれた。
「ちょっと待たんかい」
後ろを振り返ると、そこには店主の顔があった・心臓が飛び出しそうだった。
1時間後、母親と担任の教師がやってきた。深々とアタマを下げる2人に、俺も神妙な顔にならざるをえない。
「ウチの店、ここ2,3年、マンガの万引きがスゴイんですよ。ホンマに初めてなんかなあって思って」
鋭いのう、オッサン。けど、ここは猫かぶらしてもらうで。

「ウウウッ…ゴメン、初めてや・もう二度としません。ごめんなさい」
「。。。。:」
涙ながらに言い訳するうち、何となくその場で収まり、結局は無罪放免となった。まったく子供というのは得な生き物だ。
次の日から、俺は少しだけ遠くの、それまで手を付けていなかった本屋を荒らし始めた。

中学にあがると、バクる対象が駄菓子や消しゴムから、CDや工口本に
変わった。相変わらずのセコイ盗み。
周囲に注意を払って、ポケットやバッグに入れる単純な手口も、ガキのころから変わっちゃいない。
いや、一つだけ変わったことがある。度胸だ。決してビクつかず、堂々とした態度でパクる。それこそがバレないコツだと俺は確信するようになった。
もっとでかいパクリができないだろうか。図に乗りだした俺に、金券ショップのチエーン店「M」の張り紙が目に飛び込んできたのは中学2年の夏休みだ。
『テレホンカード、高価買い取り」
折しも、アイドルや映画、アニメなどのテレカにプレミアが付きまくっていた時代。特に「夜のヒットス皇ンオ」
の番組特製テレカは、女性アイドルのモノは安くても5万もの値段が付いていた。
しかし、ブッはガラスのショーケースの中に納められている・バクることは不可能だ。

…いや、盗むのがムリなら、コイッとそっくりなモノを作って、金券屋に売りつけるってのはどうだ。当時、NTTでは、自分の好きな写真やイラストを持ち込むと、1枚1
千円(105度数)でオリジナルテレカを作ってくれるサービスを行っていた。
これを利用すれば、うまくいくかもしれない。
さっそく、アイドルショップで酒井法子のブロマイドを購入。家のワープロで、出演日や名前、番組タイトルを印字した写真をNTTに持ち込み、ニセのテレカを作り上げる。
が、どうにもショボイ・文字はカスレ気味だし、写真もへんに浮いている。マニアが見れば、発でパチモンとわかるシロモノだ。
そこで、Mの各店舗を調べて回っていたところ、一つの支店で、思わぬ光景を目撃した。ショーウィンドウの中に一枚も夜ヒットのテレカがないのだ。
それとなく店員に訊ねると、どうやら高額テレカが持ち込まれた場合、本店に電話をかけ、買い取る仕組みらしい。つまり、ニセのテレカを持ち込んでも、本物との照合が不可能というわけだ。
しかし、もし目利きの店員がいたら…・いや、行くしかあらへん・ハラを決め、テレカを持ち込んだ。
「…どうですか?」
「ええと、ウチだと1枚5千円での買い取りになるんやけど。もし了承するんやったらここにサインしてくれる?」
イケるやんけぇ1つ。
狂喜乱舞したオレは、以降、せっせとニセテレカを製造しては、金券ショップに持ち込む。NTTに支払う1千円を差し引いても、1枚4千円の純益だ。が、こんなシノギが長く続くわけもない。3週間後、いつものように店を訪れると、店員が探るような目を向けてきた。
「すまんけど、このテレカ、ニセモノらしいんや、本店の人間から買い取りストップが出てんのよ」
「ほ、ほんまですか・・・」
心臓をバクバクさせつつ、わざと落胆したようなリアクションを取る俺n何でも、買い取ったテレカは一度、本店に集めるらしく、そこで偽造と判明したらしい。
「これ?どこで手に入れたん?」
「え、あっ、いや、自分、友達の使いで来たんですよ。まさかニセモノやなんて」

 

地元の牛井チェーンでバイ卜を始めた・頭には売上金を盗むことしかなかった。
勤務先のX店は、店長1人に従業員3人だけの小さな店ながら、客の入りもそこそこ・そこで俺は井の盛りや、カウンター(注文を取って会計する係)、掃除、在庫管理などの仕事を自ら進んで覚えていく。
店長の信頼もつき、すっかりバイトの主要メンバーになった2カ月後、チャンスは訪れた。早番のバイトの仕切りや金の管理をまかされることになったのだ。
ただし、どんなに権限を持ったところで、バックルームで牛井ばかり盛っていたのでは、カネは抜けない・俺は店長に直訴した。
「俺を1人きりでカウンターに立たせてください」
「え”何を言い出すんや。昼メシどきなんか、100人からの客が来るんやで、とても1人じゃムリやないか」
目を丸くする店長を見据えつつ、呼吸置いてから、俺は言う。
「だって、俺だけ井が盛れるんじゃダメやないですか。他のコもちゃんと盛れるようにならないと」
井の盛りは、例えば並なら米が1すくい目に160グラム、2すくい目に100グラム、肉がグラムでタレが決められており、これを手の感覚だけで盛らねばならない。
ところが、ウチの店の場合、井盛りの教育がロクにされていないため、盛り付けができるのは店長や俺を含めた数人だけ・これはリアリティのある言い訳だった。
「さしあたって自分はキッくなりますけど…後のことを考えるとこの方がいいと思うんですよ。精算の仕事はそれからでも遅くないじゃないですか」
「。:・・・」
「店長もその方がグンとラクになるやないですか」
「…わかった。そこまで言うなら、やってくれ」『環境」を整えた俺は、さっそく仕事
に取りかかる。もちろん、単純にお代をポケットに入れるようなバカなマネはしない。使ったのは次のような手口だ。
まず、客からお代を受け取ったら、実際よりも少ない金額で打ち込む(客の位置からレジの画面は見えない)。
例えば特盛り5杯×650円Ⅱ32
50円なら、並5杯×400円Ⅱ2
000円といった具合だ。(価格は当時のもの)
そして、昼飯どきが終わったら、い
ったんレジ精算モードに切り替え、一
人きりで店長室へいき、先程のデータ
上の浮き分をそっくり懐に入れる。
これで誰の目にふれることなく、売
り上げ金を抜けてしまうのだ。
当然ながら、肉や米の減りが早く
なるが、あらかじめ在庫表に多めに
記入すれば、夜番の人間が盛りを間
違えたように取りつくろうことも可能。
あとは、店長から疑いの目を向けら
れぬよう、ときどきバイトたちを叱
りつけるだけだ。
「自分ら、盛りすぎなんちやうん?
いくらなんでも間違えすぎやで」
「…すんません」
かくして、彼らも少なく盛らざる
をえなくなり、ますます俺にとって都合の良い展開になっていくのちなみに、このやり方で抜く金額は、売り上げの少ない日で2万、多いと5万にも達した。

勤めて4年目、俺は人知れず悩んでいた。サラ金から100万近い借金をこさえ、
毎日のように督促電話がかかってきたのだ。あれだけパクってもまだ足りなかった。
原因は俺のおごりグセである。友達を2人、3人とキャバクラや風俗に連れて行き、勘定を1人で支払ってしまう。バカだとわかってはいるが、他人に好かれたくて仕方なかった。
ある日の夕方、自転車で自宅へ急いでいると、前方に、年季の入った黒いカバンを抱えたジイサンがヨタヨタ歩く姿が目に留まった。
もしや集金用のカバン?そう思った瞬間、カラダが動いた・ソーッとジイサンの背後に近づくや、一気に引ったぐる。
「コラ待たんかぁ」
怒声を背に、猛ダッシュ・俺サマが、
あんなョボョボに捕まるわけがない。
浅はかだった。なんと、偶然その場を通りかかった原付きバイクの男2
人組がジイサンに加勢、逃げる間も
なく取り押さえられてしまったのだ。
そのまま警察に連行され、取り調
べが始まると、例のごとく涙を流し
つつ、ウソ八百を並べ立てた。
「金がなくなってもうて、どうしようもなくて…」
「オマエ、こんな悪さしたんはホンマ
に初めてか」
「ウ、ウソなんかついてません・親に
聞いてくれればわかりますよど
往生際が悪いにもほどがあるが、
結局は「初犯」として認められ、警察
署で3週間、鑑別所で3週間の拘留
を経て、最終的には2年間の保護観
察処分で釈放されてしまう。まったく、
世の中はチョロイ。
シャバに舞い戻った俺は、性懲りも
なく、Y家の店長に電話を入れた。
「無断欠勤しまして、どうもすんま
せんでした」
「オマエ連絡もせんと、今まで何しと
ったんや!みんな心配しとったん
やで」
「…いままで内緒にしとったんですけど、
実はボク、暴走族やってまして・暴走
行為で警察にパクられて、親が家か
ら出してくれなかったんですわ」
「…まあ、ええわ。明日からまたバイ
ト出れるか。人出が足りんのや」「わかりました!すぐにそちらに
行きますんで」
信じられないかもしれないが、バイ
トのなり手のないY家では、この程度
のことは大目に見てくれるのだった。Y家の金を抜く一方で、俺はCDシ
ョップやパソコンショップに出かけては、
「万引き」に精を出すようになった。
「物を金を出して買う」という感覚
は遠くに失われていた。
手口としては、他店で盗んだCD
などのタグをクッの裏に貼って入店し、
入り口の万引き防止用センサーが鳴
るか否かを確認(ダミーとして置い
ているところも多い)・これでうんと
もすんとも言わなければ、中の商品
をそのままパクる。
ただし、ブザーが鳴ったからといって、
あきらめるわけではない。店内でバ
クったブッをセンサーと壁のわずか
な隙間から通し、自分だけ入り口を
潜りぬけてから、ブッをカバンにしま
えばいいのだ。
万が一、都合の良い隙間がなくても、
タグ同士をくっつけたり、カッターで
タグに傷を付ければ、防犯ブザーは
鳴らない。