本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

殺人犯=危険人物なのか?どうしてもヤクザを殺してしまった理由

私は殺人犯です。

「殺人及び死体遺棄」の罪で拘置所に収監されています。
容疑はすべて事実であり、裁判でも罪は認めています。しかし、
「金融業者の男性を金銭上のトラブルから殺害した」という動機付けがどうしても納得できません。
被害者の小島(仮名)は金融業者どころか、私から金品を搾取した上、地獄のような生活を強いてきた人間なのです。
だからといって人を殺していいわけはありませんが、現在、もう一度、審議をしてもらうため控訴を申し立てています。
皆さんは、殺人犯=危険人物と思うかもしれません。事件を起こすまでは私もそう思っていました。
しかし、私は決して短気でも暴力的なわけでもありません。ごく普通の人間がなぜ殺人という大罪を犯してしまったのか。ぜひ、話を聞いてください。

九州の地方都市に生まれた私は、平凡な家庭で育ちました。中レベルの公立高校を卒業し、国立大受験に失敗するとそのまま就職。潰れた後は転職の繰り返しです。
飛び込みの訪問販売で教材を売ったり、大型トレーラーの運転手もしました。仕事にありつけず、日雇い労働で食いつないだこともあります。
結婚して一息つけたのは、建設業時代の経験を生かし人材会社に登録してからです。派遣技術者として企業を渡り歩く単身赴任生活でしたが、妻子に仕送りしてもゆとりがありました。
が、それも束の間。不規則な長時間労働と次々変わる職場の人間関係に疲れ果て、昨年の春、退職を余儀なくされました。
当時、私は赴任先の福岡で知り合ったミドリ(仮名)と暮らしており、妻子の元に帰るわけにもいきません。
〈さて、どうしたもんか〉
昔の同僚の女から、相談したいことがあると電話が入ったのはそんなときです。
「急にお金が必要になったのよ・松下さん、どこかいい風俗店しらない?」
「そんなコネないよ。どうしても金がいるっていうなら、援助交際でもやれば」
冗談で言ったことばを、彼女は真に受けました。

「それもそうね。けど、私1人じゃ心細いから一緒にやらない。売上げの4割をバックするからさ」
思いも寄らぬ展開ですが、悪い話じゃありません。なにより日銭が入るのは魅力的です。
「じゃ、やってみるか」
こうして二人三脚のデートクラブが始まりました。彼女がテレフォンクラブで援助希望者をつかまえ、ホテルに入ったら部屋番号をメールで知らせてくる。

私は待ち合わせ場所まで送り迎えし、トラブル発生に備え待機していました。
まったくの素人商売でしたが、なんとか順調に回り出しました。
援助の相場は1万5千円〜2万ですから、日に2人客が付けば収入もまずまずです。
〈女のコを増やせば儲かるな〉
本腰を入れて稼ごうと、スポーツ紙に求人広告を打ったのはその年の夏のことでした。

デートクラブとはいえ、部屋を借りる余裕などありません。ホテル街近くのファミレスを事務所代わりに、打ち合わせや売上げの分配に利用していました。
6月のある日、店の駐車場で女を待っていたときのことです。1台の白いベンツが乱暴に止まり、
中から太った50代後半と思しき男が出てきました。頬の傷跡、高そうな服から覗く光り物、そして小指と薬指が欠けた左手。
〈ヤクザだ〉
関わり合いになりたくないと私が視線を逸らした途端、男が声をかけてきました。

「兄ちゃん何者だ。いつもここにいるけど何してんだ」
「いえ、別に。暇なもので…」
「ふ〜ん」
いぶかしそうな顔でいったん店に消えたヤシが戻ってくるまで、それから5分もたっていなかったでしよう。
「おまえ、店にずいぶん言いがかりつけているらしいな。俺が面倒を見てる店だ。ちょっと話聞かせてもらおうか」
男の言うとおり、以前、店に文句を言ったことはあります。しかしそれはお冷やのコップがいつも汚れていたからで、決して言いがかりではありません。
「俺は小島って者だ。おまえ、毎日、女連れで来てるんだってな。何やってんだ」
こちらの素性は店に苦情を言った際に明かしており、ウソをついてもバレるのは明らか。男の態度が威圧的だったこともあり、私は正直にデートクラブのことを話しました。
「バックは誰だ?」
「いません」
「じゃあ俺が後ろ盾になってやる。別に金もいらんし、ヤクザになれとも言わん。その代りヒマなときはオレの運転手をやってくれ」
有無を言わさぬ物言いに、私はただ首をタテに振るしかありませんでした。それが亜砦蚕の始まりとは知らずに…。

「世話をしてやるんだから一度、女に会わせるよ」
翌日こう言って強引に彼女をモノにすると、売春していたことをネタに脅迫。自分の愛人にしてしまいました。
「あいつはお前を嫌ってるぞ。今までの仕事はやりたくないって言ってる。お前からはもう連絡するな」

たった1人の女の子がいなくなれば、デートクラブは廃業したも同じです。小島はヒマになった私を頻繁に呼び出しては、あちこち連れ回すようになりました。
「こちらが○○組の組長で、あちらが××組の若頭さんだ。もしも俺に何かあったら、ドスでも鉄砲でも持って駆け付けてくれる身内同然のつきあいだから、おまえもく顔を覚えとけよ」

私は小島を必要以上に恐れ、すっかり抵抗する気力をなくしてしまいました。
小島と知り合って2週間後、以前出した求人広告を見て1人の女の子が電話をかけてきました。すでに私は小島に絶対服従の態勢でしたから、ヤシが「俺が最初に味見してやる」と言ったときも、異を唱えることなく女を世話していました。


ひとつ。私に落ち度があったとすれば、それは小島に出会ってしま ったことだけなのです。そしてこれは、ヤツの周囲にいた人間、すべてに共通することでした。 小島は24才の内妻、洋子 (仮名)のマンションで寝泊まり しそこから車で10分ほど離れた にはソープ嬢の愛人を住まわ せていました。

が、妻や愛人とは名ばかり。彼女たちも小島の被害者だったのです。例えば、ヤツは洋子名義で銀行、 サラ金、クレジット会社などから金を借りまくり、その上、カード類はすべて自分で管理。洋子の給料はすべて小島に渡り、 自由なお金も自由な時間もないよ うでした。おまけに彼女の弟も、 私の知る限りだけで100万以上の金を取り上げられていました。 ソープ嬢にいたっては、7-8 年前に何かの恩を受けたとかで、 以後、金をせびられ放しでした。 
こうして手に入れた金を、小島は食事とバクチに注ぎ込みました。
ヤシは酒を飲まない代わりウマイものに目がなく、日に4度も5度も寿司や焼き肉、天ぷらなどを食べ歩き、挙げ句、自分で料理するんだと高価な食材を山ほど買い込んでは、そのまま腐らせてしまうのです。
バクチはパチンコと競艇が日課で、地元開催がなければノミ屋で
全国のレースを転戦。さらに週に一度はタブと呼ばれるサイコロ博打を打つのを楽しみにしていました。
同席者によれば、そうヘタではないものの集中力が続かず、結局、一晩で何十万という借金を抱え込むハメに陥るという話です。
しかし、小島はいくら負けても悠然としていました。そりゃそうです。負けた分は、私たちからむしり取ればいいだけのことなので
「こいつがお前の下で働くことになったぞ」
小島と出会って4カ月ほどしたころ、ヤシが1人の若い男を連れてきました。それが共犯者となる浅井です
元ホストの浅井は小柄ながら男前で、彼女のトモエ(仮名)と2人で暮らしていました。どこで目をつけたのか、小島は浅井に風俗店を名乗って近づきスカウトの仕事をしないかと持ちかけたのです。
浅井は、1人の女を小島に引き合わせました。
すると、この女が浅井に惚れているのを察知した小島は、浅井がトモエと同棲してることをバラして嫉妬心を煽り、彼女を意のままに操り始めました。
まず、女が店の寮を逃げ出したと浅井に詰め寄り、賠償金を要求。さらに、彼女は浅井に誘われ福岡に出てきたのに、浅井本人は別の女と住んでいた上、無理矢理風俗店で働かせようとした。ついてはその精神的苦痛に対する慰謝料300万を支払えと迫りまし
た。
もちろん、浅井にそんな大金がないことは先刻承知。小島は最初からトモエをデート嬢に仕立て上げようと企んでいたのです。
浅井はこの策略にまんまとハマってしまいました。
「金がないなら働いて返せ」
小島の言うがまま、浅井は私の下で働き、トモエはデート嬢として客を取らされることになったのです。もちろん、浅井の昔馴染みが他の女性同様、小島の慰み物となったのは言うまでもありません。

時間を置かず浅井とトモエのカップルが、私の住んでいた古いアパートの隣室に移ってきました。
浅井と私は、一緒に出勤して小島の雑用やデート嬢の送迎をこなし、同じように虐待されるわけですから、親近感が湧いてくるのは当然のことです。
「松下さん、よく辛抱できますね。僕、耐えられそうにありません」

「したくてやってるわけじゃないよ。免許証のコピーを取られてるから、逃げたら親に迷惑かかるし、仕方なくやってるんだ」
かかってくる小島の電話と仕事のわずかな合間をみつけ、2人でいろいろなことを話し合いました。互いの生い立ちに始まって相方の話、そして最後は小島への罵言羅誉。これが生き地獄の中でのささやかなストレス解消法でした。
「松下さん、実はトモエが小島に悪さされているみたいなんです。どうしたらいいでしょう」
秋も終わりに近づいたころ、浅井が思い詰めたように切り出しました。
「ハッキリ言わないけど、どうも胸やアソコを触られてるらしいんです」
自分の部下の彼女に手を出すとは思えない、いや、思いたくなかったというのが正直な気持ちでした。
「トモエちゃんがキッパリ断れば、いくらなんでもそれ以上はやらないよ」

私はそう答えながらも、小島がそんな甘い男じゃないとどこかで思っていました。
「俺に逆らえばどうなるかわかってんのか。洋子の親父は現役の暴力団幹部だし、関東系広域組の直系組長は俺の親類みたいなもんだ。逃げたら草の根分けてもおまえたちを探してやるからな」
コトあるごとに言われれば、それを信じるしかありません。
捕まった後、なぜ警察に相談しなかったんだとも言われました。
が、考えてもみてください。小島がいるとき私にかかってきた雷話は全部チェックされてしまうというのに、そんなことできるはずがありません。
「おい、誰からの電話だ。ちょっと貸してみろ」
携帯を取り上げられ、日に何度となく発着信記録をチェック。さらに帰宅後は、番号通知で自宅の電話から連絡させられます。

加え、真夜中に「近くに来たから寄ってみた」と、抜き打ちで監視に来ることも。そんな状態で、誰に相談できると言うのでしょう。
実際、半年の間、私は小島の周りの人間以外と接触したことはまったくありません。

「2人もいるのに、売り上げが上がらないのはどういうわけだ」
小島の要求は、日を追うごとにキッくなってきました。何が気にくわないのか、いきなり呼びつけられて暴力を受けることもたびたびです。殺されるんじゃないだろうかと、身の危険を感じたことも二度や三度じゃありません。
「死んでくれたら…」
私と浅井、どちらが先に口に出したのか覚えていません。が、一度浮かぶと頭から離れなくなりました。気つくとそれは「殺すなら」に変わっていました。
もし殺すなら、薬殺、絞殺、刺殺、撲殺?死体は、埋める、沈める?
もしもの世界が、2人で話しているうちに、どんどん具現化していきます。
「事故死がいちばんいいけど、失敗する」
小島が電話で現在地を聞いてきますから、薬を手に入れたり埋める場所を探すことはで
きません。
かといって、室内で殺せば、人目につかず運ぶのが大変ですし、小島が自分から人気のない所へ行くなど期待するだけムダ。となれば、夜間に車中で絞殺するしか手はありません。
死体は身元がわからないよう裸にし、山間のダムに重しを付けて捨てる。腐乱したときにガスで浮かばないよう、網でくるむのが最良だろう。
我々がそんな結論に達したのは、半ばを過ぎたころでした。
「お前ら、もう帰っていいぞ」
クリスマスイブ、私たちは夕方に解放されました。単に小島が女たちと遊ぶのに邪魔だっただけのことでしたが、こんなこと滅多にありません。浅井とスーパーに寄って買物をし、ミドリとトモエ、4人で鍋を囲みました。
本当においしかった。あのときの味は一生、忘れられません。別に大したものが入ってたわけじゃないんです。少しばかりの鶏に白菜、きのこ類、豆腐にしらたき。
燈のポン酢で食べる水炊きが、心に染みました。
少しビールを飲み、腹が膨れたとき、ふと思い立ちました。
〈ダムを見ておこ}
別に殺してやろうと決意したわけじゃありません。しかし、下見をするなら今日しか時間がないと思ったのです。
山中にダムはありました。何度か側を通ったことがあったため、漠然とアタマにあった場所です。
実際に足を運んでみると、街灯もないダムは、暗く静かにたたずみ、私たちを手招いているようでした。
束の間の安息日が過ぎると、年の瀬に向かって小島の要求は烈を極めました。
「お前たちに正月の用意をしてやらねばいけないだろう。しっかり働け」
勝手な言い草を持ち出し、女には生理休暇も認めず普段以上の売上げを科す小島。死にものぐるいでノルマを達成したところで・・・

1日、また1日と日が経っていき、私は焦りを感じてきました。
『このまま待ってたらいつになるかわからない。こちらからヤシを呼び出そう。小島は女に目がないから、援助希望がいるといえば必ず乗ってくる。さすがに女と会うのは内妻や愛人に隠すだろうから、そこを狙うんだ」
そう浅井に言ったのが1月9日のことです。
夕方、仕事が終わって小島のところへ売り上げを持っていく時間,になりました。浅井をひと足先に家に帰し、私はトモエと一緒に小島の待つマンションへ。
着く直前、浅井と連絡をとり、小島に電話することを確認しました。