本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

オレオレ詐欺グループの仲間割れ命がけで引き出したお金を持ち逃げする出し子

インターネットで裏バイト専門のアングラサイトを眺めていたところ、一つの求人広告が目に飛び込んできた。
〈バイト募集。1日1〜3万円〉
内容は一切書かれてないが、怪しい仕事であることは間違いない。あとはリスクとギャラとの兼ね合いだ。
さっそく、メールで連絡を取り、指定された某デパートヘ・先方の携帯を鳴らすと、いかにもな3人組が現れた。
セカンドバックを抱えたオールパック、派手なジャージを着た茶髪、紫のホストスーッ。ヤクザ屋さん?
「お、キミか、んじゃ付いてきてくれ」
オールバックの先導で、付近のカフエに移動。コーヒーが運ばれてきたところで、仕
事の説明が始まった。
何でも、ヤシらはヤフーオークションの取り込み詐欺に手を染めており、オレを使っ
て、客が振り込んできた金を架空口座から引き出し、通帳記入させたいらしい。なるほど。いわゆる「出し子」ってヤシか。
引き出し場所は目の前にある銀行で、報酬は1回につき1万円。毎日、昼にこの喫茶店でおち合い、通帳と力ードを手渡されるらしい。
「サングラスと手袋をはめてれば、防犯カメラも問題ないから。他の連中も偽名で仕事
してるし、身分証明書も見せる必要ないからよ」
被害者が届けを出し、張られたら一巻の終わりだが、一回の引き落としで1万なら危険を冒す価値はある。
やってみつか。
「そうか。ただ、ヘンな考えは起こさない方がいいぞ。もし持ち逃げなんかしたら、命ねえからな」
…やけにオーバーだな。もしや以前に持ち逃げした人間でもいるのか。
ともかく、オレはその場で通帳とキャッシュカードを受け取り、キャッシュディスペンサーで100万円を引き出した。実働3分。ラクショーだ。

連中が気付くまでに5分はかかるはずその後、2回ほど仕事をこなすうち、よからぬ企みが浮かんだ。言うまでもない、金の持ち逃げである。
ヤシらは防犯カメラに映るのを恐れて、入り口にも近づこうとしない。裏口から逃げれば、持ち逃げに気付くまでのタイムラグは5分近くあるはずだ。
が、問題は逃げた後だ。とりあえず携帯はプリケーと他人名義のメアドを使っている
ものの、連中のこと、どこから居場所をかぎつけるとも限らない。
ジャージが1人切りになったとき、さりげなく探りを入れてみた。
「あの〜、いままで誰かに金を持ち逃げされたこととかないんですか?」。

面倒くさそうに顔を上げるジャージ。
「そういや一度だけそんなことがあったなあ。ま、見つけ出してボコボコにしてやったけどよ」
「ソイッは偽名とか使ってなかったんですかね」
「ほら、こういう仕事やってると、バックもいるから。探すルートがあんのよ」
偽名の人間を探すルートなんてあるわけねIじゃん。しかもバックってどこのどいつ
よ・コイッらもしかしてシロート?
疑惑が確信に変わったのは、リーゼントの携帯に電話がかかってきたときだ。
「え、この前のヤシ?そうなんだよ。せっかく、万ほど小遣いやったのに、偽造保険
証持ってトンズラしやがってよ」
トンズラ
「でよ〜、携帯もトバシで、名前も偽名でさ・今度見つけたら、絶対にボコボコにして
やるから…」
今度見つけたらってことは、見つけられないってことじやん!やっぱコイッらアマア
マだわ。

オレは持ち逃げの八ラを固めた。これだけヌルい連中なら探しだせつこないだろ
当日、約束の時間に例のカフエを訪れると、隅の席でリーゼントがタバコを吸っていた。オールバックとホストスーッの2人は別の仕事に出ているらしい。
「おう。んじゃコレ、今日も頼んだぞ」
「はい!」

通帳片手に喫茶店を出て、銀行に入ったところで、後ろを振り返る。リーゼントが付いてくる気配はない。
手持ちのキャッシュカードを引き下ろし機に突っ込むと、液晶画面に文字が浮かび上が
った。
『116万円』
思わずシバを飲み込む。申し分ない額だ。
オレは金を銀行の封筒に入れるや、裏口から猛ダッシュで逃げ去った。
☆その後、オレは同じ通帳から80万余りを引き出した。当然といえば当然だが、持ち逃
げ後も客からの振り込みが続いたのだ。
今ごろあの3人組は血眼になってオレを探してるに違いない。連中に見つけだす能力は
ないと思うが、万が一のことを考えたら…。盗んだ200万はすでに無い。