本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

老人の年金を狙った激悪な違法な年金担保融資ヤミ金にご注意

私はそれまで勤めていたタイヤ工場を辞め、とある金融会社に入社した。

誰でもできる仕事だし、もっと稼げるかと、中学の先輩に勧誘されたのがきっかけだった。

その会社「A口ーン」が、10日に1割で貸し付けるヤミ金融業者、 俗に言うトイチであるのは十分承知の上だ。離婚によって多額の慰謝料を奪い取られた当時の私には、なにより金が必要だった。

「Aローン」は、男が5人。電話ボックスのチラシやタ刊紙の三行広告で官伝し、 来る客は借り入れ件数10社を軽く超えている多重債務者ばかりだ。

仕事はいたって単純だった。初 めての客には、印鑑証明3通、家族全員が載った住民票、保険証、 免許証、手形や土地建物の登記簿謄本もあればそれもあわせて持ってこさせ、あとは担保に見合った金額を金利先付けで貸してやるだけ。

誰でもできると言った先輩の言葉は決してウソじゃなかったのだ。

ちなみに先付けとは、例えば利子が10日でー割、融資額50万円なら、先に利子分の5万円を引いた45万を貸し出すというやり方だ。

少しでも取りっばぐれをなくすため、ヤミ金業者ではよく使われる手である。

私は、自分の生活費と慰謝料のため、ただひたすら働き続けた。

昼は融資、朝タは債権回収に走り回る毎日。

心身ともにクタクタになったが、金はおもしろいように稼げた。

慰謝料を払い、風俗に通いまくっても、まだオツリが来たぐらいである。 

パ ッと稼いで、金貯めようや。どうせ長くは続かな いんだからさ

例の先輩が独立話を持ちかけてきたのは、入社してから1年くらい後のことだ。

大げさな話じゃない。単に、ちょっと紹介屋でもやって小銭を稼ごうというのだ。

ある程度貯金もできて、生活に 余裕のあったオレは、先輩の誘いを快諾。さらなるヤミ金へとつっ込んだ。

紹介屋の手口は、マスコミでさんざん紹介されているので、ご存じの方も多いだろう。「借り入れ 何件でも大歓迎。ブラックの方も どうぞ」などと調子のイイ文旬で客をおびきよせ、他のサラ金を紹 介して手数料をブン取る。

元手ゼ口、で稼げる、実にお手軽なヤミ商売だ。

実際口のうまさだけが取り柄の私たちにとっては、切羽詰まっ た債務者たちから金を引っ張るの はたやすいことだった。 
まず客から審査という名目で連絡先、借り入れ 件数と金額などを洗いざらい聞き出す。客は他のサラ金から限度額いっぱいまで借りているケースがほとんどだから

「どこか断られましたか」と聞けば、必ず「ハイ」 と答が返ってくる。

そこで、その客の条件、たとえ ば勤続年数や勤め先の実績などに ケチをつけ

「これ以上はムリです」

と煽る。

「ウチが裏で操作してあげれば何とかなりますよ。そのかわり手間賃で2割かかりますけど」 

こんなウソっばちが通用するわけないと思うのは普通。

が、 世の中には借金で苦しむ人間がよほど多いのか、客はオモシロイように食いついてきた。 サラ金のランクづけはトイチ時代から力ンペキに掌えており、実際に借りられる店を紹介してあげるので、クレームがつくこともない。

しかも、みな律儀なモンで、きっちり手間賃を振り込んできた。 客はー日で10人はいただるつか。 1人あたり平均4、5万の儲けと しても、1日の稼ぎは40、50万。 2人で山分けするには十分すぎる額である。

「トイチでもやるか。今の倍は儲かるぜ」 紹介屋を始めて1年先輩がたまった資金でまた金貸しをやろうといい出した。もちろん、異存は ない。ちょうど私も同じことを考 えていたのだ。 

さっそく私と先輩は、 後輩2人を加えた4人で、とあ るマンションの1室にサラ金をオ ープンした。広告媒体は電話ボックスのチラシやタ刊紙

利息は客の懐具合を見て、トイチからトサンあたりで手を打つ。実にテキトーなシステムだ。 それでも、経営は順風満帆だった。

取りっばぐれがなかったわけじゃないが、それを補うだけの客がやって来た。おかげで売り上げ は順調に伸びていく。 そんなある日のこと。70才渦ぎと思われるジイサンが店にやって きた。

「お金、貸してもらえないですか」

「失礼ですが経営者の方で7」

「いえ、仕事はなくて今は年金で 暮らしてるんです。だからね、年 金を担保にでもして貸してくれないかなあと」

稼ぎのない人問が、金を返せる わけがない。これは小学生でもわ かる理屈である。その客がどれだ け返せるかを見抜くために、金融業者は厳しい審査や身元チェック を行っているのだ。 このジイサンに金を借りる資格はナシ。

常識ある金融社員ならそう判定を下すところだろう。

が、 ジイサンを追い返そうとする部下を遮り、声をかけた。 

「悪いけど、ー週間ぐらい待ってもらえます?そしたら返答しますんで」

別に人助けしよーつと思ったわけじゃない。金儲けのヒントが浮かんだのだ。

年金は盲点だった。車から フーゾク嬢・主婦専門まで、世の中にはいろんな類のサラ金があれど、年金を担保に貸し付けしているところなんて聞いたことがない。 だからこそ、需要は多いはず。

いや、むしろ収入がないからこて 金を借りたくてウズウズしているんじゃないのか。考えれば考える ほど、ウマクいくよーな気がして くる。

私は悩んだ。ある程度、儲けは 見込めるに違いない。が、けなげな年寄りから金をふんだくるなん て、いくらなんでも、それじゃサ イテーだろ- ジイサンが帰り際につぶやいた

「孫になんか買ってやりたくてね」 と頭の中でグルグル回 った。 

「まあいいんじゃない。ボランテ ィアでやってみれば。オマェ、物腰柔らかいから年寄りの相手くら いできるだろ」

相談すると、先輩は こともなげに

なるほど、ボ ランティアか。都合のいい言葉で ある。決心を固めた私は、翌日から年寄り向けの「年金ローンプラ ン」を担当することになった。 年金の支払日は、偶数月の15日と決まっている。

種類によって額もさまざまで、国民年金がおよそ 20万なのに対し年金は40万 ほど。

また、遺族年金などが付加されれば、さらに額 はアップするらしい。

となれば、貸し出し、翌月に返してもらうのはどうだろうか。もちろん、担保として、 年金手帳と銀行の通帳、カードは預からせてもらう。

これでお互い のリスクはなくなるはず

ただ、国民年金の事務所によれば、手帳はたとえ紛失しても、約 1カ月で再発行でき、銀行の口座 だって移すことも可能らしい。

いざとなれば客側がバックレること もできるわけだ。 ま、逃げられたら、あきらめるしかない。普通の客ならどこまでも追いかけるところだか、相手はなんせジイサンバアサン。私もそこまで鬼にはなれない。

金利は月29、11取らせてもらうこ とにした。10日間に換算すれば約 7%。トイチに比べれば幾分マシ な金額だし、そこそこの儲けにも なる。 ー週間後、例のジイサンが「融 資OK」との答に飛んできた。 話を聞いてみると、月に40万円ほ ど年金が入ってくるという。

「もっ金がなくなっちゃって。今 日貸してほしいんだがね。来月の 15日には年金が入るか」

相手は当然、40万いっばいまで 借りたいと考えている。

「じいちゃんね、ウチも商売なんで金利は取らせてもらうよ。い い?でも、最初から40万はキツイでしょ。20万くらいにしとこうよ。で、来月の15日に4万つけて 返しにきてくれればそれでいいから」

「ああ、そうかもしれないね。ありがとう」

「だけどね、24万返すより、先に 金利引かせてもらった方がお互い ラクでしょ一っん、そつでしょうな」

「それと、ホントに悪いんだけど、 念のために年金手帳と口座の通帳、 カード、預からしてもらうけどいいよね」 最初から最後まで、こちらのペ ースだった。今までサラ金から金を借りたことがないのだろうか、 ジイサンは何度も私に礼を言うと、 借りた16万の金を大事そうに包ん で、店を出ていった。 

ジイサンの件があった間同時に広告も出しておいた。従来の 電話ボックス用のチラシや三行 告に「年金口ーンプラン、始めました」の文を追加してべタべタ 貼りまくったのである。

また、部下を使って下町を中心 とした各家庭の郵便受けに、注寄 り向けのチラシを投函させた。た いていの生寄りは昼間ウチにいて、 郵便ポストもマメに開け閉めして いる。だったら当然、チラシにも 目を通してくれるはずと踏んだの だ。

果たして、読みはズバリ的中。 ポスティングを終えた翌日から、 1日約50本もの間い合わせが殺到 したのである。 さすがにここまでとは予想しな かったが、年寄りの話がやたらと 長いのも予想外だった。

「遺族年 金でも大丈夫か」に始まり、「娘 が出戻りしちゃって」とか「町内 会の旅行に行きたい」、あげくに は肩院が遠くてのっ」と、単な る身の上話までされるもんだから、 通常の間い合わせ重証の2倍、3 倍と時問がかかってし書つ。よほ ど話し相手に不自由しているのだ ろうか。

よつやく融資の話がまとまって も、店に来てもらつのがまたひと 苦労だ。バアちゃん、××の駅まで来 れる」 おかると思っんですがね」 「えー、南口のストアわかる 
かな」 ョあねえ。あの辺はもう何年も 行ってないからね-匹 ほとんどがこんな調子だから、 駅までの送り迎えは絶対条件であ る。相手は携帯など持っているは ずもなく、見つけられないことも しばしば。30分待っても来ないと 思ったら、隣駅と間違えていたな んてことも少なくない。

手間がかかるのは、融資のとき だけじゃない。返済日には、ジイ サンバアサンといっしょに銀行の 往復だ。担保として預かっていた 年金手帳と通帳カードを持って 銀行へ行き、自分で下ろさせる。 返済日を忘れていることもあるの で、そっいーっときはこちらから電 話をかけて、呼び出さなければな らない。

もちろん、当の本人は暗い気分 だったに違いない。待ちに待った ースーの大半がその日のうちに返済 で消えてしまうのだ。 となれば「じゃあ、また貸して もらおうか」となるのは、ある意 味必然。こうしたかヤメられない 、客が増えていく事情は、トイチ と何ら変わりはない。 

私が発案した「年金ローンプラ ン」は、またたく間に売り上げを 伸ばしていった。付いた客は最初 の月で約60人。1人あたり5万ほ ど抜いているから、広告費などを さっ引いても250万は軽く超え たo

 

翌々月には、客は50人にまで膨 れ上がった。病院の待A量や銭湯、 ゲートボール場など、年寄り同士 のネットワークで、みな話を聞き つけて来たらしい・ いちばん金を引っ張ったのは、 2週間の貸し付けで15万。 65才になる弟の生命保険で貸してくれな いかと嘆願してきたジイサンだ。

なんでも、弟はあと1カ月の命で、 翌月には70万の保険金が下りるという

「年金も合わせれば、100万は 入る。だから、せめて80くらいは 貸してほしいんだよ」 保険の証明書と年金手帳を見せ てもらうと、なるほど、確かにウ ソじゃない。

「じゃあこうしましょう。ご希望 の80万円融資します。ただ、期限 は2週間で、金利は15万。先付けでいただきますけど 私の返答にジイサンの顔色が一 変した。ムリもない。実はこの金トイチよりヒドイ率なのだ。 マりゃ高過ぎるでしょう。人が 死のーっとしてるのに、その条件はなんだ」

「お言葉を返すようですけども、 あなたはその人の死ぬ金によって 金を借りよーフとしてますよね。お互い同じことじゃないですか。1 週間待ちますから、気が変わった ら釆てください」

案の定ジイサンは再び私の店 へとやって来た。2週間で約3割 というバカ高な金利を承知で金を 借りに来たのだ。 この塵冗をやっている間に、借 り手本人が死んでしまったことも ある。返済日を渦ぎても電話が来 ないので、どうしたものかと息子 夫婦の家へ電話を入れてみると、 ちょうど葬式の真っ最中。私は、 さっそく香典3万を包んで持って 焼査に出かけた。 香典で3万は奮発し過ぎなのか もしれない。

が、その1週間後に は年金の20万がソックリこっちの 懐に入ってくるのだ。 

「オマエら、年寄り相手に何やっ てるんだ。ああ」 「年金口ーンプラン」を始めて半 年ほど経ったある日、1人の男が 常連客のバアサンを連れて店に殴り込んできた。この男、どうやらバアサンの息子bしい。

「トンでもねえ金利を取りやがっ て、この野郎。ウチのバアチャン、 病院にも行けねえじゃねえか」 es気に一墨円を浴びせる男に、私は冷静に答えた。 確かにウチの禽利は高いで克 でも、あなたがオバアちゃんの面 倒をちゃんとみていれば、ここに来なかったんじゃないですか。私 は私なりにォバアちゃんのこと考 えてあげてるんで芭 すると、どうだ。オバアチャン は自分の息子ではなく、私の方を かばい出すじゃないか。 「この人の一手つとおりなんだよ。 オマエの仕事がうまくいかないか らアタシも心配して・・こ 今までの私ならマらみたとこ か」とふんぞり返るところである。 しかし、この複雑な感情はなんだ るっ。なぜ、この老人は金を貸し ただけの人間をそこまでかばうん だ。オバアチャン、あんたオレの こと、ホントに恨まなくていいの かよ…0 ★ 実を言っと、この「年金ローン プラン」で儲けた金は、本業のト イチに比べても、ごくわずかであ る。だからといって、額の大小で 悪どさは計れない。ある意味で、 私は世のどんなトイチよりも酷な 商売をしでかしてしまったのだ。 このes件以来、私は自分の仕事 にイヤ気がさしてしまい、金貸し 業界から身を引いた。銀行口座に は4千万。別れた女房子供を食わ せていくには十分な金をすでに貯 めていた。 社会的な弱者である老人たちか ら金をむしり取っていた私は、誰 が見てもサイテーのヤミ金業者だ ったのかもしれない。だが、党え ておいてほしい。弱者を狙っのは、 ベテンの常識である。世の中には、 かつての私のよーフなダニが常に獲物を狙っているのだ。