本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

鉄道員にもっともイヤなトラブルは人身事故飛び込み自殺の瞬間

鉄道員にとってもっともイヤなトラブル。それは他でもなく人身事故、つまり飛び込み自殺である。

圧倒的に多いのは、12月後半。

おそらく、金がなくて年が越せない人が増えるせいだろう

駅員時代にはマグ口(我々は遺体をこう呼ぶ)に5度ほど遭遇したことがある。

初体験は駅員になって半年経ったころだ。 暮れも押し迫ったその日の午後、 急行が通渦ずる小さな駅のホームにいた私は、タレントの見栄晴に似た30前後の男が妙にフラフラしているのを見かけた。

なんかヘンなヤツだな

そういいつつも、いつものように「電車が通過いたします」 とアナウンス。

事件はその瞬間、起こった。ホームを猛スピードで通り過ぎる急行に向かって、見栄晴があたかも ラグビーのトライを決めるがごとく突進したのだ。 パアーンと耳をつんざくような サイレンとともに電車は急停止したが時すでに遅し。

電車に跳ね返 された見栄晴はあお向けでホームに横たわっていた。

「おいー大丈夫かあ」

彼の元へ駆け寄った私は、その 姿に思わず自を閉じてしまった。 あお向けとはいうものの、肘や足首はあらぬ方向に折れ曲がり、まるで操り人形のように関節がグチ ャグチャになっている。そしてグシャっと潰れた頭蓋骨からは大量の血が…。

「息してるみたいだなあ」

恐ろしく冷静な口調で先輩がつ ぶやくっ

駅員の宿泊用シーツを被せ、救急車を呼ぶと、駆け付けた消防者は現場を見るなり冷たくいい放った。

運べませんね

しょうがないので、自分らで片づけようとしたそのとき。上司が、足を滑らせて死人の頭蓋骨の陥没部分に右手を突っ込んでしまった。 ヲ

ワッ、同僚のー人が叫ぶ。と、そこに は信じられない光景が。上司の転倒のぜいで、一度は脈が止まった遺体が再び息を吹き返して口をピクピクし始めたのだ。 結局は数分後にあっけなく死亡した見栄晴だったが、実は死体以上にショッキングなことがあった。 死体を片つけているときに先輩ボソッと放った言である。

「チキショー、オレ上がりだったのに飛び込みやがってよ。女と会えねえじゃんか」

まるで自分の方が被害者にでもなったような一言だが、人身事故なんて駅員にとって単なる面倒なトラブルに過ぎないと悟るまでには、さほど時間はかからな かった。

実際みな勝手なもんで、生身の人間が血まみれで死んでいるのを見て

「かわいそ一」

なんてやつはまずいない。見慣れているから何も起こらないのだ。自分ですら2度、3度と 経験するうちにそう思うようになったのだから慣れとは恐るじい。

ただ、それでも基本的には会社の中で事故の話はタブーとされて いた。

一度誰かが事故に遭遇し、それを他に話すと、その後続けて起きるとの迷信が何年も前 から語り継がれていたからである。 

すっかり慣れになってい自殺も、運転して遭遇したときはさすがに落ち込んでしまった。

ー度目は12月の寒い日だった。 急行を運転中、とある駅を通過しようとしたときのこと。

フッと物体が近づいたと思ったら キュッと異物感が生じた。

やうてしまったかと思った瞬問 無線の耳を突く。

思ねず汗が噴き出し

駅員時代とは違う恐怖感が襲う

「動かせ」 無線からはそう指示が出たが、ニ度ひき(スゴイ言葉だ)は 原則として禁止。ためらっている と、再び飛んだ。

「動かさなきゃマグ口が取れねえんだよ」

どうやら皮製の衣類が車輪に挟まっているらしい。結局、からま った遺体はなかなか取れず、車両の保守整備にジャッキを持ち 出しで服を取り除くという最後の 手段で収容された。亡くなったの は、80才過ぎのおばあさんだ

運転手にとって不当に面倒なの はそこから先まず、運輸省に提出する事故の作成、同時に警察の事情聴取受けなければならない。 夜運転業務を終えた私は、そ の足で所轄の署へと出向いた。

「夜はちゃんと眠れていましたか」

「酒を飲みすぎていたとかは」

「いつさいありません」

「軍両に異常はありませんでした ーか。ブレーキとか」

「いえ、すべて正常でした」

口ボットのようにすべての質間に答えていく。端から見ればごく 形式的なものに思えるかもしれな いが、少しでも怪しい答え方をし ようものなら、たちまち業務上過失致死の疑いがかかっでしまう。

それで逮捕された運転手はいないが、面倒なことを避けるために人身事故があった場ほぼ全員の運転手が駅の事務所で上司と取り調べのシミュレーショ ンをやらされた上で事情聴取に臨んでいた。 

運転手になって2度

人身事 故は、森繁久弥のような白髪のおじいさんだつた・最初のおばあさんと同じくホームからの飛び込みである。

そして3度目。私は目下のとこ ろここまでだが、これがまたイヤ な記憶として脳畏に刻まれている。 あれは確か、運転手になっで4 年ほど経ったこるか。急行で某駅 を通過しようとしてホームにさし かかったとき、サラリーマン風の 男の姿が目に入った

ある程度の年数運転手をやって いると、妙な勘というか、悪い予感が働くものだ

まさに一瞬の出来事だった

男が電車に飛び込むそのとき、目が 合ってしまったのである。いや、 男にしてみれば私の目というより、 運転席を見ていたに過ぎないのか もしれない。

ただ飛び込む人間と目が合うのは、どの運転手も経験しているようだ。自殺とはいえ、 この世で最後に対面した人間が本人とはまったく関係のない自分かと思うと、どうにもやるせなくなってしまう。それ以釆しばらくはよく寝付けずその光景が夢に まで出てきたほどだ。 まあ、こんな例はあまり人に言いたくないにしても、人身事故にまつわる怪談めいた話なら掃いて捨てるほどある。

フロントガラスに飛び込まれ、ガラスが粉々に割れて肉片や血がシャツに付いたまま操縦し続けた運転手。顔や頭はカスリ傷ひとつ付いてないのに腹をヤラれたせいで上半身と下半身のまっぷたつに割れてしまった自殺

踏切の脇から飛び込んだものの、 まりに衝撃が少なかったため、 誰にも気つかれず放置されていた死体は、さながら犬の死骸のようになっていたらしい。

駅などから遠い踏切などで人身 事故が起きた場は普通、遺体が電車の下にからまっていない場、 車掌を置いてそのまま発車するこ とになっている。遺体をそのままにしておくと、犬がくわえていったりするからだ。 最悪なのは夜山奥のトンネル などで自殺に遭遇してしまったときっ担当の車掌は暗い洞窟で遺体 と2人っきりで救助を待たなけれ ばならないのだ。どんなに悲惨な マグ口を目の当たりにしようと私はこれだけは経験したくないと思っている