本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

ドラッグ覚せい剤密売を生業とする人物・薬物犯罪の怖い話

何がほしいの?バッテンなら1個あるけど
某日深夜ー時。六本木の某クラブで、50名ほどの男女が大音量の音楽に身をゆだねていた。ある者は一心不乱に頭を振り、ある者はDJブースから発射されるミドリ色のレーザー光線に手をかざし奇声をあげ、またある者はスピーーカーに抱き付き。

みなバキバキの《トフンス状態》だ。モノの本によると、《トランス状態》とは、視聴覚器官を通して脳内神経が刺激され、ドーパミンが多量に放出されることらしい。

早い話が、音や光で興奮し気持ちいい状態のことだ。

が、実際には、ド―バミンだけで、そうそうバカになれるものでもない。ここで必要なのは、よりハイにさせてくれる別の何か。

言わずもがな、ドラッグだ。もはや、それはクラブ遊びに欠かせぬアイテムといってもいい。

改めて店内を見回してみる。客は一見みなフツーの若者だ。典型的なドラッグルートである、ヤクザと接点がありそうな人種にはとても見えない。いったい彼らは、どこからネタを手に入れているのか。
この日、俺を呼び出した男は、横でリズムをとりながら笑った。竹内(仮名)、29才。クラブカルチャーでのドラッグ密売を生業とする人物だ。

「試しに声かけてみたらいいすよ、例えばアイツとか?」

竹内が、フロアの後ろで座り

「基本的に《知り合い》関係で、回ってますね。クラブで知り合ったセンパイとか、友達とかDJとか。でも、別に知り合いがいなくても、持ってそうなヤツに声かけて、そいつに見初められりゃ、回してもらえる状況はありますよ」


トランスジャンキーが見つけた生きる術
込んでいるドレッドの男を指さした。先ほどからー点を見つめ動かない、20代前半の茶髪。フツーじゃないことは明らかだ。ドラッグをヤルるとやたらノドが乾くと聞くが、男の手には、きっちりペットボトルが握られている。キメているのは間違いないところだろう…。

「ういーす。何か持ってないすか?」

「いやいや、おニイちゃん。それは、シーだよ。シーだって。えへへへ

簡単に「あるよ」と、言わないだろうことはわかっていた。けれども

「シーだよ、シー」とは、あまりに露骨。よく見りゃ、目元も充血してるぞ。くだらない会話をニ言交わし、果たして、男は切り出してきた。

「で、何がほしいの?バッテン(エクスタシーの俗称)ならー個あるけど」

「・・…」

クラブにおけるドラッグ売買のハードルが非常に低いことはわかった。ならば、その流通の一端を担う竹内は、いったいどこでネタを用意し、どのようにネタを撤いているのか。

そこには、単に日本だけにとどまらず、世界的なクラブカルチャーの裏側で動く、ドラッグ密売屋の暗躍、そして知られざる苦悩があった。
竹内が最初にドラッグと関わりを持ったのは、今かり13年前。高校に入学して間もない頃、神奈川某市の地元駅にたむろするイラン人から、チョコ(大麻樹脂)を買ったことだった。

「その当時、彼らが偽造テレ力を売ってたんですよ。仲間内で買おうって話になってね。で、行くと、チョコもあるよって。こっちは、好奇心旺盛な年頃じゃないすか」

いくら簡単に買える状況であったと言えとも、ブツは大麻。しかもまだ高校に通う立場である。跡曙や恐怖はなかったのか。

「考えられないと思いますけど、イラン人プッシャーたちのたむろする目と鼻の先に交番があったんですよ。なのに、警察はまったく動かない。そんな環境だから別に大して悪い事じゃないんだって」
ー回、2回と買ってるうちに神経は麻癖し二方でイラン人たちと顔見知りになった。そして気付けは、彼らのマンションで、トラックの仕分けを手伝うように。扱っていたのは、チョコ、ガンジャ、LSD、工クスタシー、覚醒剤の5種類。それぞれを電子秤でクラムに分け、ピニール袋に包むのが任された仕事だった。

「手伝いすると、バイト料として、そのネタを少しくれるんですね。もうすぐにシャブまでハマりましたよ」

転落の始まりだった。週に「度が2日、3日となり、すぐにシャブ中に墜ちた。高校は2年の秋に中退した。

「とにかく毎日キメたい。バイトはしてましたけど、そんなんじゃ金がおっつかない。で、上野なんかに出かけて行って、イラン人から、ドラッグをパクるようになったんです」

手口はいろいろだ。

「音楽といっしょにドラッグを使うってことを知らなかったところに、トランスでしょ。もう言いようのない悦惚感っていうか、あれは衝撃でしたよ」

衝撃はもう1つあった。トランスシーンで回っているドラッグの価格の安さだ。今までの入手先は、イラン人がメイン。

その他に、クラブで知り合った連中からのブツが少々。どちらのルートも、チョコでグラム4-5千円が相場だが、トランス連中の間では約3千円で、質も抜群のモノが回っていた。

「何でそんなに安いんだって聞いたら『この前いたDJ。あいつがインドから持って来たんだよ』って。早い話が密輸ですよ。スゴイ連中がいる世界だなって思いましたね」

毎週のようにトランスのクラブに通い、時に《レイブ》なる野外イベントにも足を運ぶ。そんな生活を1年も続けていれば、どのパーティに参加しても顔見知りがいるまでになった。

「で、彼らと話をしてると、いつも出てくるのが、インドのゴアの話なんですよね」

トランスと言っても、その種類はさまざまだ。ジャーマントランス、ダッチトランス、UKトランス…。中でも、もっとも有名なゴアは、現在も世界中から人が集まるトランスジャンキーの遊び場。竹内が憧れの地を初めて訪れたのは、21才の冬のことだった。
手ぶらで日本に帰るわけにはいかない

「滞在中は、毎週どこかのレイブに行ってました。とにかくドラッグは安いし、いろんな国からトランスジャンキーが集まって来てるし。もう最高の開放感でした」

結局、3カ月間をゴアで過ごした竹内は、帰国にあたりドラッグの持ち帰りを計画する。

「ヤバイってことは百も承知でしたよ。けど、あっちだと安いから、持って帰って日本でも吸いたい。そう思うのがジャンキーなんですよ。手ブラで帰って文無しになるのも嫌だったですしね」

インドには、世界中のジャンキーが注目する町が2つある。一つは、もちろんゴア。もううは、ネパール国境にある一大大麻生産地、マナリだ。大量のチャラス(インドでの大麻樹脂の呼び名)を購入するため、竹内がマナリを訪れたのは、レイブシーズンが終了した4月のある日だった。アプローチの方法は、パーティで知り合った不良外人から聞いていた。

「まずは村に出向いて、歩いてる人間にチャラスを生産してる農家を尋ねる。ま、これはすんなり教えてくれるんだけど、いざその家に交渉に行ってからが要注意で、ヤツら、最初に悪いネタを出してくるんですよ。とにかくテイスティングで量を吸わされ、グデングデンにしてダマしてやろうって魂胆です」

いくら希望をいっても、『コレの方がいい』と悪い品を勧められたり、2種類が混ざった粗悪品が出てくるのもザラ。一筋縄ではいかない連中を相手に、竹内は粘り強く交渉を続けた。

そして1週間かけて、ようやく6万円で500グラムの質の良いチャラスを購入する。日本での末端価格は、200万円だ。

「本番はここからです。ブツをどうやって日本に持ち帰るか」

そう言って竹内は、おもむろにテーブルのオシボリ袋を3センチ程度にちぎった。

「ためしにコレ飲んでみてくださいよ」

まさか?・言われるがままに試しえずいた。もっとも安全な密輸と言われる『飲み』。それは壮絶を極めるようだ。
500グラムを6時間かけて飲む竹内の初密輸はこうだ。
インドから日本への直行便は、税関の目が厳しいと言われている。むろん、当局が、ゴアやマナリ帰りの人間をニラんでいるためだ。そこで、中継地点としてよく使われるのがタイ。インドよりは税関の目が甘いと、密輸人たちの間で噂になっていた。

インドからタイへのトラック持ち込みで有名なのは、チャワンプナッシーなるインドのジャムに詰める方法だ。竹内もまた、直径10センチ、高さ20センチほとの筒状のピンに、チャラスを隠し運んだ。イントかりタイへの入国の際、バッグを開けられることは滅多にない。

ただし、タイ国内での移動は必ずタクシーを使う。日本並に職質かあるかりだ。また、宿泊はクーラー付の環境の良い部屋にチェックイン。蒸し暑い土地で、密輸のためのネタの仕分けをしなければならない。汗でチャラスが汚れては、元も子もない。

「500グラムのチャラスの固まりを、秤で3グラムずつに分け、サランラップで包んでいく。50個くらいできますかね。で、それを帰国まで保管します。渡航は目立つんで、僕は2週間ほどは滞在しました」

帰国にはJALを利用した。バングラディッシュ航空などの安い航空会社は、税関も不審者を警戒していることか多く、当時これらの便か到着する水曜と金曜の成田は、運び屋に嫌われていたという。

フライト前日は、風呂に3回入った。臭いの染みついた力ラダで空港には近つきたくないというのか犯罪者の心理だ、と彼は言う。

「とにかく少しでも安心したいんです。洗濯も4、5回やって、靴の裏も削った。とにかく外見で疑われるようなことだけは避けたかったんです。ただ、当日は地獄でしたけどね」

竹内が顔をゆがめ苦笑いするのは、いうまでもなく『飲み』のこと。手順を紹介しよう。
まず胃薬を入れ、胃に粘膜を張る。次に、拒絶したカラダに排出されては困るため、下痢止めを服用。後は飲み物で誤魔化しながら、黙々とサランラ岸ノに包まれたブツを飲んでいく。

「得意な人間と苦手な人間がいるんですけど、僕はダメ。500グラムに6時間くらいかかりますよ。アタマから爪先まで、全身が悲鳴を上けますね。逆に、僕が見た運び屋の中で最短は40分。人間じゃないですよ」

すべては12分の税関のための勝負。果たして、成田のゲートが開いた時、竹内のフツは、すでにケツから出かかっていた。
警察が発信器を付け泳がしているかも
国内のパーティに知り合いを多く作っていたことで、持ち帰ったネタは簡単にさばけた。100グラムは自分の分。残りの400グラムはグラム3千円で流し120万。3カ月の滞在費とチャラスの購入代の30万を引けば、90万のアガリである。どうだろう。リスクを考えれば、決してオイシイとは思えないが。

「確かに。でも、『飲み』は、よっぽどのことかない限り安全だし、何より若かった。いいネタにキメたいってのが本音ですね」

この後の3年間で、竹内は『飲み』を5回試し、それきり同じ方法を採らなくなった。密輸を手伝ってくれる外人仲間と、腕のいいパッキング職人を見つけたのだ。「『パッキング』ってのは、モノに隠して運ぶ方法ですね

有名どころでは、《2重構造のスーツケース》かな。外側の力バーが二重構造になっていて、そこにドラッグを何キ口も詰めてるんです。その積み込みをやる人間が、パッキンク職人です」

バッキングされた商品は、職人のアイデアしだいで無限に存在する。力バンはもちろん、雑貨から電化製品まで。他にも、税関検査が甘い義手や義足、車椅子等々。彼らにかかれば、おおよそ身の回りにあるものすべてが、トラッグの入れ物だ。ちなみに、腕がイイのはスイス人や、イタリア人。

職人気質の国民性は、ドラッグの世界でも変わらないうようだ。「バッキング職人に払われる相場は50-60万ですね。値段はかかるけど『飲み』に比べたら断然ラク。で、最初は自分で『パッキング運び』をやったんです。何度も『飲み』をやった後でしたからね。わりとヘンな度胸が付いてたっていうか、何か捕まらない気がしたんですよね」

そう思った矢先、竹内のトランス仲間が『パッキング運び』でバクられてしまう。名目お土産のネパールの木のカレンダーを、成田に持ち込んだところ、税関でドボンと相成ったのだ。
「これで再認識しましたね。やっば、密輸は危ないんだって。だから、急に恐くなって、自分で運びをやるのはヤメましたよ。で、今度はゴアに遊びに来るイスラエル人の若いのにやらせることにしたんです」

イスラェルでは、18才になると男子は3年、女子は2年の兵役がある。役を終えた若者には、およそ100万ほどの支給がなされ、多くの者は、その金で旅行する。ゴアに遊びに来る者も少なくない。

「つい最近まで、あんなキビシイ国勢の軍隊にいた奴等でしょ。恐いモンなし、オレが一番って輩が多いんですよ。それこそ心臓にコケがビッシリ生えてて、税関でも堂々としたもんだろって。思ったとおりでしたね」

仕込みのスーツケースを渡し、日本まで運べば100万円やると話を持ちかける。目星を付けた相手で首を横に振る者はいなかった。もっとも、帰国に際しては用心のため、見張りをつけた。持ち逃げされたら一大事。

気付かれないよう仲間が同じ飛行機に乗り、成田から、竹内が指定した新宿まで尾行し続ける。新宿に到着した後の動きについても事前に伝達済みだ。タクシーで指定の場所に向かわせ、待機する仲間が荷物をピックアップ。ここで初めてイスラエル人に金が渡される。作業はまだある。

運ばれてきた荷物の検査である。税関でブツがバレており、警察が発信器を付け泳がしている可能性がないともいえない。そこで、荷物は解く前に、強烈な電磁波を発生させる発信器破壊マシーンにかける。あれば即座にブッ壊れる。


架空の名前でホテルに郵送する方法も
ドラッグ密輸でシノぎ始めて5年。いつしか竹内の周りには、強力な密輸ネットワークが築き上けられていた。

現地の世話役、信頼できる国内の協力者。現在では、簡単な暗号をファックスで世話人に送れば、現地の世話役が買い付けし、運び人が密輸してくれるシステムかできあがっているらしい。

送品には、郵便を使うこともあると竹内は言う。送付先の住所を指定すれば、モノは届くと。が、しかし、受け取りはどこでするのか。もし税関でブツがバレれば、真っ先に受け取り先が疑われる。

「そう、受け取りが大切なんですよ。例えば仙頭さんが受け取ってくれるっていうなら、100万円あげますよ。そのうち家にヘンな荷物届きます。で、もうー週間したら、見知らぬ外人が荷物引き取りにいきますから」

竹内か今、抱えている受け取り人は2人。古向い報酬の代わりに、パクられても雇い主を絶対明かさない。そんな人間も、また外人に金を払い探させたらしい。

「その他、よく使われる受け取り先がホテルですね。架空の名前で勝手に送り付けるんです。宿泊名簿にいなくても、とりあえずホテルは受け取りますよね。すると、2、3日してから、雇った外人が取りにいくんです。『スミマセン、マチガエテ、ホテル、オクッチャタ』てね」

大方、竹内の密売手口はわかった。が、少し疑間なのは、これほど多くの人間を使っていでは、アガリが少ないのではないか。それとも、よほど大量のドラッグを持ち込んでいるのか。

「痛いとこを突きますね。でも、実際の話、大量に密売したって、それほど旨味ないんですよね」例えば、5キ口のチャラスを運ぶと、日本での末端市場価格は2千万となる。しかし、それこそ大量のネタを、10グラム単位の個人に手売りしていくのは現実的に不可能だ。

取引相手は、パーティのオーガナイザーや、レイブ好きのギョーカイ連中など大口客。取引は、卸値価格のグラム2千円となり、ー千万ほどが粗利という。結局、竹内の元に残るのは100万ほどらしい。

密売に手を染めてからの数年で、何人もの仲間や知り合いがパクられました。次は自分か?っていつも思う。

だから、できるだけ人をかまし、ドラッグから《遠い立場》にいたいんですよ。そうしないと、正直、夜も眠れませんし。