本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

でっち上げの覚せい剤の所持で逮捕された密売人

長い間やってきたプッシャーからキレイさっぱり足を洗い、3年の月日が流れた。
辞めた理由は…ヤクが売れなくなったワケじゃない。
ましてや心を入れ替えたワケでもない。
実はオレ、警察宮とそのSに、持ってもいないシャブの所持容疑をデッチ上げられ引退を余儀なくされたのだ。

要はハメられたのである。
今思い出しても腹わたが煮えくり返るあの事件。

コトの顛末を全てお話しよう。


シヤブでヨレた男をSに使うわけがない
ちょっと知られた族を引退して、仲間が当たり前のようにヤクザになっていくなか、ひ
とり盃を拒み、シャブの売人、いわゆるプッシャーになった。

組で男の修行をするより手っ取り早く稼ぎたいと選んだ道だ。
地元の組関係に、きっちり話と金を上げておけば客には事欠かない。

6年もすると、オレは地元じゃ名の売れた、いっぱしのプッシャーになっていた。
そんな順調な日々にケチがついたのは、やはりあの男と出会ってしまったからだろう。
3年前。ケツを持ってくれている組の新年会で、親分からひとりの若い衆を紹介された.それが園田(仮名)だった。

大澄賢也似のルックスながら、青白く頬のこけた顔と生気のない瞳。ビーンときた。
「コイッもあっちが好きでさ・少しでいいから、たまに渡してやってくれよ」
「水臭いな、組長んとこの人ならいつでも歓迎ですよ」
「おい、園田…。ちつとタバコ買ってこいや」
「はい…」
園田の姿が見えなくなったことを確認して、組長が神妙な顔で手を合わせる。
「悪いな。少し面倒見てやってくれよ。実はアイッ、仲間うちじゃ誰からも相手にされなくなつちまってさ」
「そりゃまたなんで…」

「あいつがSだ、なんてウワサがたっちまってさ」
「えっ」

Sとはスパイ。つまり警察の協力者だ。
「ハハハ、ビビんなって。シャブでヨレた男をSに使うバカなんていれえよ」
「はあ…」
早い話がやっかい払いである

虚言癖のシャブ中なんてオレだって御免だが、 ここらで親分に恩を売っておくのも悪くない。 

まもなく、園田はオレが事務所代わりに使っているマンションへちょくちょく顔を出すようになった。

金の受け取りなど簡単な使いをするたび、ーパケ(約 0・3クラム)恵んでやる。 そのたび、ヤッは心底うれしそうな顔で注射器を取り 出したものだ

「いつもすいません、ここで打っちまってもいいですか?」

「早くやっちまえよー」

「へへへ、あー効いてきたあ」

ヤクザ者ならではの威厳があったのは最初だけ。シャブ欲しさから、ヤツがオレに垢びを売り始めると一気に立場は逆転した。
そんなある日のこと。朝、事務所のチャイムがけたたましく鳴るので、覗き穴から外を見てみると、
ドキッ
一瞬で血の気が引いた。

サ、サツじゃね
ガ、ガサか?
「ハハハ、おはようございまーす、 驚きましたあ?」

ドアの向こうに こまわり君さながら、警官の制服、制帽を身にまとい敬礼する園田が立っていた。

「へへへへ、ちょっと署の方へ行ってまいりましてえ」

「おい、朝っぱらから打ってやがんだろ…」
「ぶはははゃぱいこと言っちゃったなぁ。今のはみんなには内緒にしてくださいよぉ」
重度のシャブ中か、単なるアホか。いや、たぶんどっちもだ。んじゃ、オマエは自らSだって言うのか。
ふざけんなよ、テメー
ムカつきながらも、ヤツの格好が妙にリアルなのが気にかかる

コイツ、もしかして…。
その疑惑は半年後、現実となる。ある朝、園田が妙なことを言い出したのだ。
「東山さん、自分のツレにも好きなやつがいるんで、土産に1パケもらってもいいかな」
「なんでオレがオマエのツレの面倒も見なきゃいけね’んだ?こっちは商売なんだぞ」
「そこをなんとか。これっきりですから」
量からすりゃたいしたもんじゃないが、いちいち相手にしてたらキリがない。オレはピシャッと断った。
数日後、不可解な出来事が起きる。わずかだがシャブの量が減っている、と客からクレームがきたのだ。
ピンときた。最近では園田に取り引きを任せることもあったが、あの野郎…。
さっそく、ヤツを問い詰めた。
「オマエしかいね-だろ。恩を仇で返して恥すかしくれえのか」
「しよ、証拠はあんのかよ’」
「オマエは親分の顔に泥塗ったってことだぞ!」
唇を噛んで汗ぐっしょりの園田。腐ってもヤクザ。
親の名を出されては何も言えないのだろう。
「うっ…すいませんでした。どうか組長には…」
「じゃあ言え。前に言ってたツレに流したのか?それともテメエで食つちまったのか?」
「それは・・・…」
「わかった、わかった。ま、とりあえず少しリラックスして話そうぜ、その方がいいだろ?」

「え、ええ、そりゃもう・・」

5分後、ヤツの目がトロンとなったところで尋問再開。

「なあ、オレたちは友達じ ゃねーか。何でも教えてくれないと付き合いもこれっきりだぞ」

「うふふふ。ヤクっすかあ」

「ほれ、言わないんなら、 二度と顔見せんな」

「力ンベンしてくらさいよー」

「わかった、わかった。で、 誰なんだ?」

「あのヤクはあ…」

「うんうん」

「ベヘヘ・・デコスケ に・・渡しちまいましたあ」

苦しまぎれにしたってもう少しマシな言い訳はないのか。

最初はいつものョタ話だと思っていた。が、正気に戻った園田が涙ながらに言うにつけウソをついているとも思えない。

聞けば、ヤツがシャブを渡したのは大橋(仮名)と いう地元署の巡査長。

ガキ の頃、窃盗でバクられて以来頭があがらず、何かと世話になってきた人物らしり

オ レに見せた、制帽、制服この男の持ち物だという。 何でも、ー週間前。その 大橋が園田を呼びつけて、 こう詰めよったらしい。

「おい、オメェ、最近また打ってんだってな」

「は?」

「とぼけんじゃねえ。しょっぴかれたくなかったら、 パケを持ってきな。わかったな」

こうなると蛇に呪まれた蛙である。園田は大橋に命じられるまま、オレ の商品から1グラムちょろまかしたと言う。

「ってことはテメェ、まさかオレのことを売ったのかー」

「違いますー誓ってヤクの出所は言ってませんーアッチもそういうつもりじゃないんすよ」

「じゃ、デコスケの目的は何だ?」 
「そ、それはですね」

園田は言った。 まずパケを紙袋に入れて道端に落とし、少し離れたところから見張る。 通行人が紙袋を拾い、好奇心かり懐に入れたらシメたもので、尾行して職質をかける。あ とは、どうもその 袋が怪しい、とかイチャモンをつけ て調べれば、覚せ い剤所持容疑の一丁あかり

「そんなのデッチ上げ逮捕じゃねーかよー」

「ええ。ま、拾っ ただけですから、 ほとんどはしょっぴかれても事情聴取で釈放ですけどね」

「けど、なんどでそんなことしてんだよ、ソイツは」

「そりゃ決まってるでしょ。 出世のためですよ」

事件をでっち上げて得点稼ぎか。せこいヤツよのう。

「でも、もうニ度とあんなヤツの言いなりにはなりません。もう一度だけチャンスをくださいー東山さんに見捨てられたら、 オレ…」

君子危うきに近寄らす

こんな悪徳警官と関わってる男と付き合ってたら口クなことにはならない。

オレは園田を切る決意を固めた。 

園田から焦った声で電話がかかってきたのは、その翌日の深夜だった。

時計はすでに2時をまわっていた。

「東山さん、今、どこにいるんですか?」

「なんだよ、こんな夜中にー」

「すいません。でも、急に食いたくなっちゃったんすよ」

「明日事務所でやるよ…」

「今すぐ欲しいんすよ。金だったらありますから」

どういう風の吹き回しだ。 ヤツがオレから自腹で買うなんて。

「オートで勝ったんですよ。 こないだの詫びもあるんでちゃんと買わせてください」 「ふーん」

ー時間後、ヤツが指定し たファミレスの駐車場に到着。ただしシャブは持っていなかった。どこか嫌な予感がしたのだ。
まもなく、いつもに増して青白い顔をした園田が現れ、助手席に座る。

「こんな夜中にすいません。で、持ってきてくれました?」

「それがさ、今手元にないんだよ。 一緒に取りに行こうぜ」

そう言って園田が爪を噛み始めた とき、パト力ーが駐車場に入ってきた。

ゲッ、こんな時間にパトロール?落ち着け、こっちは何もやましいことはない。 

パト力ーから2人の警官が現れた。そして、迷うこ となくオレの車に向ってきて叩く。な、 なんだ?

「こんばんわ〜、何してらっしやるんすか?」
「別に…。友だちとしゃべってるだけですから」
「へえ。でもそっちの人、何か具合悪そうだけど」

見れば、園田が額かり汗を噴き出しブルブル震えて いる。

おいおい~ビビり過ぎだって。

「ひ、東山さん、持ってきてくれましたか?」
工?今なんて言ったオマエ?
「シャブですよ!シャブ持ってきてくれましたか」

警官の眼光が鋭く光る。 

ま、まさか・
「シャブ持ってきてくれって言ったじゃないすかあー」 

大声で叫び車から飛び出していく園田。

「アナタ…まさか覚せい剤特ってるんですか?」

ロを開いたのは警官の方だった。

「ハァ7バ力なこと言わないでくださいよ」

「ちよっと車の中を見せてもらっていいですか?」 
「どうぞ、どうぞ」

警官がダッシュ ボードに手を突っ込む。ふー、持ってこなくて助かった。虫の知らせっ てあるんだな。

ところが、

「こんなものが出てきたんだけど、 説明してくれる?」

目の前に白い粉が入ったビニール袋があった。

体中の血が上昇していくのがわかった。園田のヤロウ、もしブチ込まれてもアイツだけ 
はブチ殺してやる…ん?待てよ

ってこ とは、無表情でオレをジツと見つめるこいつこそ黒幕の大橋じゃ…。

背中が急に冷たくなっていった。覚せい剤所持の疑いで連行されたものの、翌日の夕方には早くも自由の身となった。取り調べでは知らぬ存ぜぬの一点張り。ションベン検査もパスしたのだから、
警察も釈放せざるえない。
署を後にすると、門の外に男が1人立っていた。オレをパクった、いや、ハメた巡査長・大橋である。
「オレも今、上がるんだけど一緒に帰りませんか?」
「……」

戸惑うオレにヤ ツは屈託のない笑顔で手首をひねる。

「東山くんはこれ好きですか?」

「パチンコすか?」

「オゴリますから、付き合いません?よく出る店でね」

有無を言わせず、タクシーを止め郊外のパチンコ屋へ。

店員たちが大橋の姿に気づくと、敬礼のような挨拶をしてきた。

「あっ、お世話になってます。こちらの席でどうぞ」

店長が案内する席で大橋

千円札3枚を渡される。 コイッ、何のつもりだ。 チーン、ジャラジ ヤラ 隣の台に座る大橋が耳元でささやいた。

「うってたんだろ?」

「ハイ」 

「今回は握ってやったようなもんだぞ一感謝しろ」

やっとわかったc ヤツはオレを園田のような犬にしたいのだ。

「あの後、署で尿検査したら陽性が出てな。あんなヤツは使いものにならん」

「・・」

「次に何かあれば 協力してもらうぞ。オマエなんか適当 な罪状つければ、 いくらでも引っ張れんだ」

オレの顔を見てニヤリと笑った

大橋が突然の異動で東北へ飛ばされてしまうのは、それから3カ月後のことだ。

園田が巡査長のデッチ上げを告発、署内でうやむやにするための特別処遇らしい。

まさしく飼い犬に手を噛まれるとはこのことである。ヤツがオレのことだけはチクらないでくれたのは、 裏切ってしまったことへの、せめてもの償いだろう。

しかし、大橋の扱った事件が全て再捜査となったことで、オレに疑惑の目が向けられてしまった。四六時中、デコスケにウロウ口されれば、もはやコレまでだ。

あれから3年

風のウワサでシャバに出た園田は懲りずに5をやっていると いう。もしかしたらまだ、 大橋と組んで 誰かをハメているのかもしれない