本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

女性看護師の毒物混入大量殺人事件

1975年夏、米ミシガン州アナーバー退役軍人病院でショッキングな事件が発生した。

7月1日から8月15日のわずか1ヶ月半の間に、56 件もの原因不明の呼吸停止が相次ぎ、うち10人が死亡したのだ。

この異常事態にFBIが捜査に乗り出し、司法解剖でいずれの遺体からもクラーレを原料とする筋しかん剤パブロンが検出される。殺人であることは明らかで、遺体に注射痕がないことから点滴のブドウ糖水溶液に混入されたものと推定された。


何者かが毒殺を図ったとして捜査を進めたFBIはやがて、同病院に勤務するフィリピン人看護師のフィリピナ・ナルシソ(当時30歳)とレオノラ・ペレス(同31歳)を容疑者として逮捕する。

呼吸が突然止まる直前、常に2人のうちどちらかが患者の傍にいたことが目撃されていたからだ。

しかし、動機が見つからなかった。2人は共に勤勉な看護師で、患者を殺さなければならない理由など考えられない。

さらに彼女らの姿を見たものの、筋しかん剤を注射する瞬間を目撃したものはいなかった。こうした状況から、検察側が起訴したのは殺人1件と共謀罪と毒殺の3件だった。
 

裁判は13週に及び、やがて、アジア移民に対する人種差別問題へと発展する。当時アメリカはアジアからの移民を積極的に受け入れており、ナルシソとペレスもアメリカに来たばかり。

移民の多さが人種間による軋あつ轢れきを生んでおり、当時のフィリピン医師会の会長で、フィリピン大統領フェルディナンド・マルコスの弟パシフィコ・マルコスは2人の起訴を冤罪として激しく非難した。
 

判決は殺人については無罪、毒物混入と殺人謀議については有罪という曖昧なもので、控訴審では証拠不十分として全ての項目で無罪となる。

「疑わしきは罰せず」の刑事裁判の原則が支持された形だが、それでも2人が真犯人だったとする声は今も少なくない。

動機は「代理ミュンヒハウゼン症候群」。意図的に病気や怪我を起こすよう仕組んだう
えで、健気に看病する姿を演じて周囲の同情や注目を集めることに快感を覚える精神疾患だ。

この病気は1991年、イギリス・リンカンシャー州の病院の小児科病棟に勤務していた女性看護師ビヴァリー・アリットが13人の子供に大量のインシュリンを投与し、4人を死に追いやった事件で有名となったが、1975年当時は、まだその存在自体が認知されていなかった。もしナルシソとペレスが犯行を働いていたら、理由は他に考えられないだろう。