本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

殺してしまいたいほど親子ほど歳の離れた若い女の子に本気で恋をしてしまった中年男性

出会い系サイトで知り合った女子大生とOLを殺害する事件が発生した。

世に言う『京都メル友連続殺人」だ。これ以後、メル友殺人、出会い系殺人は増加の一途を辿り、この年、3件だった重要犯罪は137件を数えた。
背景には携帯メールの普及による人間関係の劇的変化が上げられる

文字だけのやりとりは独特の親密感を生み、世代や職業、性別さえ超え、これまで接点のなかった者同士を簡単に結びつけてしまった。
携帯メールは、もはや仕事でもプライベートでも我々の生活には欠かせないアイテムである。

が、一方で、素性や性格、性別さえ偽ることが可能なメールは、美人局や恐喝など、悪用しようと思えば格好の手段ともなりうる。
しかし本当に怖いのは、男女間のトラブルだ。

メールでは優しかったのに、会ったら冷たい。お金持ちと言ったのに、そうでもない。純粋そうなコだと思ったら、アバズレだった……。
一度も会わないうちから相手に勝手な幻想を抱き、それが誤解だったと気づいたときには手遅れ。相手を殺したいと思うまでの憎悪に発展するケースも少なくない。

大阪に住む女子短大生・松野(仮名)が、一回り以上年上の殺人犯・清水(仮名)と出会ってしまったのも1通のメールがきっかけだった。

プラスチック製品加工会社に勤めていた清水は、同僚から初めて携帯メールの存在を教
えられた。
同僚は返事を送ってきた女性と身体の関係まで持てたと自慢げだ

清水は心底、うらやましくなった。
清水は、それまで携帯電話を持ったことがなかった。かって痴情のもつれで女性を殺し刑務所を出て以来、職を転々としていた清水に連絡を取り合うような相手はいない。
〈はじめまして。メル友になってください〉
さっそく携帯を買った清水は、同僚に教えられた3人の女性にメールを送る。
本当の年齢を言うのは気がひけ、ウソを書いた。返信メールが来るたび興奮したが、そのうち2人とは自然消滅。
清水の携帯には、就職活動の悩みを訴える短大生からのメールだけが届き続けた。それが美砂である。
〈どこも採用減で、私のような短大生は本当に厳しいです。今日も電機メーカーの説明会に行きましたが、タンソッはほとんど枠がないそうです。どうしよ-〉

〈ホントは私、看護士になりたかったんですよ-。でも勉強ができなくて(笑)・看誰士は無理にしても、どこか病院の事務や経理の仕事ができたらな、と希望しています。病院ばかりにシュウカッできないのがつらいですが…。シミズさんはどう思います?〉
殺人の前科を持つ自分に、屈託なくメールを送ってくる美砂。短大生のイメージに、かつて経験したことのない激しい性欲を隠しながら、清水は紳士的なメールを送り続けた。

メールのやりとりはその後も毎日のように続いた。

8月末になり、清水が〈会いませんか〉と誘ってきたときも美砂は驚かなかった。いずれはそうなるだろうと思っていたからだ。
9月、2人は初めて顔を合わせる。
駅近くで待ち合わせ、清水が職場の同僚から借りてきた車でドライブに出かけた。
「本当に短大生なんだ」
清水は感激した。美砂はメールで何ひとつ嘘を言ってなかったばかりか、自分が47才であることを打ち明けても怒らず気さくに話しかけてくれる。天使に思えた。
一方美砂は、初めて会ったシミズさんがズングリムックリした体型だったことも、47才だったも、さほど驚かなかった。いままでの優しいメールの数々が彼女の警戒心を解いていたからだ。
恋人と別れ寂しかった美砂にとって、清水は就職活動の苦労を語り、甘えられる存在になっていたのである。
「ホテル、行ってみよか?」
清水の言葉に美砂は迷うことなく「いいよ」と答えた。
その後、2人は週に一度会い、そのたびにホテルに行くようになった。
最初こそ清水は、金を要求されるんじゃないかと警戒もしたが、美砂は相変わらず真剣に相談事や愚痴をメールで送ってくる。
いずれは歳の近い男ができて、自分から離れていくのだろう。そう冷静に考える一方、メールをやりとりし、会うたびごとに愛しさが募っていく。
出会って2カ月後、清水は以前住んだことのあるマンションを借りる。

平日は職場に住み込みで働いていたが、週末だけでも美砂と一緒に過ごそうと考えたのだ。彼女も喜び、手料理を作ってくれる。清水は結婚生活を送っているような錯覚を覚えた。
1月になると、清水は仕事を辞め、マンションに移り住む・美砂が東住吉の清水の部屋近くにある病院の事務職に就職が内定したからだ。合い鍵を渡し、自分の自転車を美砂に使わせ、清水の生活は美砂を中心に回るようになっていた。
美砂も清水が好きだった。が、親子ほど歳の違う彼との将来は考えられない。

「美砂のことを大事にしてくれる男がきっと現れるから、そのときは応援するよ」と言う彼の言葉をそのまま信じていた。将来はないのだから別れた方がいい美砂はそう思いながらも、ずるずると部屋に通い続けた。彼の気持ちが自分の清水への気持ちより大きいことを感じ、甘えていたのかも知れない。そして、まもなく清水が「結婚しよう」と口にしたとき、彼女は初めて気づく。清水さんは私の相手じゃない、と。


仕事も捨て金も注ぎ込んだのに
久しぶりに届いた美砂からのメールに、清水は全身が凍りついた。

好きな人ができました。清水さんにはゴメンやけど、これまでのようなお付き合いは、もうできへんわ

春ごろから美砂は部屋に来ることがめっきり少なくなっていた。「仕事が忙しい」と美砂は言う。少しでも美砂と会いたいがため、仕事を辞めた清水にとって、1人の時間はとてつもなく長く感じられた。しかも、たまに会ってもセックスを拒否される。秋には〈清水さんの気持ちが、私にとっては重すぎる〉とのメールも届いた。好きな人ができたと堂々と言ってくる神経には、怒りすら感じた。俺はお前のために仕事も捨て、金もつぎ込んだのに。酔うほど怒りが膨らみ、清水は思わずメールを打ちつけていた。

〈人の心を傷つけておいて、自分だけ幸せになろうなんて道に外れてるわ。ずっと忘れへんからな〉
清水のメールに、美砂は恐怖を覚える
だから〈合鍵を返しに来てや〉とメールが来たときも、少しでも怒りを静めようと郵送するのを止め、わざわざ出向いたのだ。
「最後に抱かせてくれ」
それでキレイに別れられるのならと美砂は応じたが、清水はそこで裸の写真を撮影した。
驚いたようにカメラにつかみかかってくる美砂。清水の頭に怒りと絶望が交差する。そんなに俺が嫌いになったんか。あんなによくしてやったのに、なんでやれん・
理性を失った清水はその後もメールを送りつけ、電話をかけ続けた。返信がなければ、出勤時に駅へ出向く

美砂にとっては恐怖の日々だった。再度、駅で待ち伏せしていた清水は、「こない
だはすまんかつた」と土下座し、「治療代を受け取ってくれ」とホームまで追いかけてきた。
あんなに穏やかで優しかったのに、信じられないほど暴力的な男に変わってしまった清水。追い詰められた美砂は、新しい恋人に一部始終を告白する。
「警察に相談した方がいい」
警察は清水の携帯に電話し、厳しく警告する・彼は「わかりました」と答えたという。
が、美砂が安堵していたころ、清水は激しく憎悪の念をかきたてていた。
人をストーカー扱いしやがって、許せん……。けど、美砂がいなくなったら、生きていても意味がない。死んで一緒になろう。
清水は駐車場で出勤する美砂を待ち伏せていた。
雨の中を駅から病院に向かい美砂が歩いてくる。清水は包丁を手に、彼女を追いかけると夢中で腹や胸に突き立てた。
「こら、お前、何してんねん!」
通行人の怒鳴り声で我に返ると、100メートルほど先で犬を連れた老人が自分を呪んでいた。目を落とせば手元は血で真っ赤だ。その下に、白いブラウスを赤黒く染めた美砂が倒れている。
痛かったろな。これだけ刺せば死ぬやろ。美砂はわしのもんや。
馬乗りになっていた清水は立ち上がり、持っていた包丁をおもむろに自分の腹へ。
1回、2回と突き立て、4回刺すと自転車にまたがりアパートに走らせた。

部屋で意識を失っていた清水が殺人未遂の現行犯で逮捕されたのは5日後、のことである。かろうじて一命を取り留めた美砂が、現場に駆け付けた警官に清水の名前と住所を告げたのだ。
現在、彼女は、「清水」の名を聞くだけで激しいパニック状態に陥る後遺症を患っている。