本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

女優志願の美女が胴体を真二つにされた恐怖のミステリー

終戦から2年後の1947年1月15日、米ロサンゼルス郊外の空き地で、腰からきれいに真二つに切断された女性の惨殺死体が見つかった。

まるで誰かに見せつけるかのように整然と配置されたその遺体には、なぜか一滴の血液も付着していなかった。

警察は、被害者が生きたまま腹を裂かれ、完全に血抜きされた上で捨てられたものと見て捜査を開始する。
ほどなく遺体の身元は、ハリウッド女優になることを夢見て軍人専門のクラブのホステスとして働いていたエリザベス・ショート(当時22歳)と判明する。

1943年9月、未成年飲酒の容疑で逮捕された際に採取された彼女の指紋と遺体のそれが合致したのだ。
人も羨むほどの美貌を持った被害者。胴体切断の猟奇殺人。事件はマスコミの格好の餌食となり、彼女が黒い服を好んで着ていたことから、地元紙『ロサンゼルス・エグナミー』は、1946年公開の映画「ブルー・ダリア」になぞらえ、エリザベスを「ブラック・ダリア」と命名、世間の関心を煽った。
 

死体発見から1週間後、エグナミー紙に、新聞の切り抜き文字で「ダリアの所持品」と書かれた不審な郵便物が届く。開封すると、エリザベスの出生証明書、社会保健証、彼女が複数の軍人と撮った写真数枚、名刺、アドレス帳が入っていた。犯人から送られたことは誰の目にも明らかだが、それら全てがガソリンに浸され、指紋は残っていなかった。
ロサンゼルス市警は約750人の捜査員を動員し、犯人逮捕にやっきになった。自称犯人として出頭した人物を含む、捜査対象者は500人にものぼったという。が、結果的に警察はその全員をシロと判断せざるをえなかった。なぜなら、彼らの誰1人として“エリザベスの秘密”を答えられなかったからだ。

実は、彼女は生まれつき性器の生育が不完全で、性交ができない体だった。警察はこの事実をひた隠しにし、秘密の暴露が得られた相手こそが真犯人だと睨んでいた。

エリザベスの美貌に惹かれ言い寄ったものの、セックスを拒否されて殺害。ロス市警はあくまで、彼女と親しかった男性による怨恨の線を追い続けていた。
その中でも、特に怪しいとされた人物は3人。事件の6日前、エリザベスと一緒にいるところを目撃されていた交際相手のセールスマンのロバート・マンリー。彼女が働いていたクラブのオーナーで、新聞社に届いた郵便物の中に自身のアドレス帳が入っていたマーク・ヘンセン。そして、現在も彼こそが真犯人との声が多い、ジャック・アンダーソン・ウィルソンだ。
ウィルソンは1934年から1938年にかけてオハイオ州クリーブランドで12人が惨殺された「キングズベリー・ランの屠殺者事件」の容疑者で(事件は未解決)、1945年にエリザベスの同僚だったホステスが2年前に殺された事件でも疑われた人物だ。エリザベスの遺体が発見された際も、犯人と疑われ、新聞社の取材に対し、自分の知り合いが彼女を殺したとして事件の詳細を記者に話していた。

あくまで伝聞ではあったが、犯行はウィルソンによるものに違いないと睨んだ新聞社は警察に連絡。事情を聞くため、本人が宿泊していたホテルに捜査員が向かった矢先、建物から出火し、その中からウィルソンの焼死体が発見される。偶然の事故か他殺かは明らかにされなかった。
 

ブラック・ダリア事件はアメリカ犯罪史上最大のミステリーとして、その後、多くの小説やノンフィクション、映画などの題材となり、今なお語り継がれている。現在、カリフォルニア州オークランドのマウンテン・ビュー共同墓地に埋葬されているエリザベスは、自分の生涯が突然終わるそのとき、誰を見たのか。答えは本人と真犯人にしかわからない。