本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

カジノ店のディーラーが殺害される原因はイカサマだお金がらみのリンチ拷問の恐怖

某カジノ店のディーラーが同僚に殺害されるという事件が起こった。
原因はイカサマだ。報道によれば、被害者のディーラーが複数の客と組み、約4千万を荒稼ぎしていたことが店側に発覚。その制裁として、加害者から殴る蹴るの暴行を受けたのだという。

まだ20才の若さだった。
殺されるほどのリスクを省みず、横に行った(店のカネを横領した)そのディーラーの気持ち、オレには揃いほどよくわかる。
毎晩毎晩、無数の札束が飛び交う職場で働いていれば、誰でもよからぬことを考える。ましてや、店員の不正が当然のようにまかり通っているカジノ業界の人間ならなおさらだ。
断言するのは他でもない。ディーラーとして約5年、全国の違法カジノ店で多額のカネをパクリ、その都度、えぐい追い込みをかけられてきたオレ自身の経験に基づいているのだから。
懲役を食らったとき、オレは過き物が取れたかのように、誓ったものだ。あんなデタラメな生活には、もう二度と戻りたくないと。

「久しぶりじゃのう。ラクで稼げるバイトがあるんやけど、やってみんか?』
声の主は、中学の同級生タカシだった。かつて同じ族に所属し、一緒にヤンチャをして回った仲だが、ヤブから棒になんじやい、バイトって。
「カジノやカジノ」
「はあ?カジノ?」
唐突な誘いに驚くオレに、タカシは言った。実はいま、自分の働いているカジノが人手不足で困っている。オマエさえよければすぐ社長に紹介したいんだけど、どうだ?
にわかに心が動いた。当時、勤めていた地元の清掃会社の給料は、手取りでたったの18万。
仕事は退屈極まりなく、しがみつく理由は一つもない。
「やってもええよ。けど、カジノで働いたら罪に問われるんやろ?それにルールもさっぱり知らんしなぁ」
「大丈夫大丈夫。わからんことはオレが全部教えたるけえ」
かくして、翌日、タカシに付き添われ社長の面接を受けたオレは、その場で採用となり、翌週から通い出すこととなる。
新米ディーラーの仕事は、まずカジノの基本をみっちり叩き込まれることから始まる。毎日、オープン数時間前に出勤し、バカラ、ルーレット、ブラックジャックのルールを細かく勉強。チップ拾い、配当の付け方、カードさばきなど、ゲーム中に必要な動作はタカシや先輩ディーラーから教わった。店がオープンした後は、客の出迎えにシキテン(見張り役)。これがクローズの朝5時まで続く。
当初、違法カジノということばにデンジャラスな雰囲気を感じていたものの、拍子抜けるほど地味な毎日だった。が、それも入店から2週間までの話。基礎訓練が終わり、ようやくディーラーとして客の前に立ち始めたころには、すっかりカジノという職場にハマっていた。
金持ち風のオヤジはもちろん、どこにでもいそうなニーチャンやオッサンたちが札束を惜しげもなくチップに交換している。タネ銭が数時間で500万に跳ね上がると、次の瞬間、その金がゼロになってしまう。それがすべて、オレの引くカード一枚、投げる玉一つで引き起こるのだ。こんな刺激的な仕事、他にどこにあるっていうんだ。

1年後。どうにか1人前のディーラーになったオレは、タカシとともに最初のカジノ店を辞め、より条件のいいハコに籍を移した。固定給伽万プラス歩合。
しかし、暮らし向きはむしろ悪くなる一方だった。
カジノで働くこととはすなわち、一攫千金をもっとも身近に知ることともなる。ご多聞にもれず、その誘惑に取り懸かれていたオレも毎日のように客として、他のカジノに入り浸った。
1日で50万近くへ.むことも珍しくなく、給料の前借りはしょっちゅう。感覚は完全にマヒし、気づけば、サラ金から200万以上をシマんでいた。
人間、貧すれば鈍すとはよく言ったもの。やがてどうにも首の回らなくなったオレは、同じような状況に陥っていたタカシと、店のカネに手を付け始める。
顔見知りの客を数人抱き込み、チップを横流ししたのだ。
手口は単純明快である。仲間のサクラがバカラのテーブルに座り、チップを買う際、ディーラーのオレが5万円分ほど多めに渡すだけ。後は素早くそれをポケットに隠させ、帰り際に、上がりの半分をオレがいただくという寸法だ。
むろん、バレたら店のケツ持ちヤクザに埋められる危険もあるが、勝負中、客はみな罫線(出目票)を書くのに必死。よほど怪しい仕草をしない限り、監視カメラで手元を撮られることもない。
それでも、最初は抑え気味に抜いていたが、一向に疑われる気配がないとわかると、サクラを変え、日に10万と懐に入れるようになった。さらには、サクラが勝てばチップを多めにつけ、逆に負ければ、わざと回収し忘れてやる。もちろん、折半の約束で、だ。
1年で総額約3千万のあぶく銭をパクった。V8クラウン、ロレックス、女、酒…。もうヤリたい放題の毎日だった。
しかし、悪事は露呈する。梅雨が明けて数日たったある日の午後、オーナーから直々に事務所へ呼び出された。
「松尾くん、なんでここに連れてこられたかわかつとるじゃろ?」
オーナーの顔は真っ赤だった。
パンツが、ジワッと湿る。
「白状せい。いったい、いままでいくら抜いたんじゃ、コラ」
「:。:。:::。。:。:。:。。:。。:」
黙秘を続けるオレに社長は言う。先日、客の中から不正を指摘する声があり、ビデオを再生したところ、『犯行」がバッチリ映っていた。すでにタカシ以下関係者全員、別の場所で監禁されている。

どないじゃコラ、コレでもシラを切るんか!
「す、すんませんでした!」
観念し、地べたに頭をこすりつけたその瞬間、顔面に革靴のつま先がめり込み、鼻血が滝のように流れ落ちた。問髪入れず、側に立っていた店長が、拳や蹴りを何十発も振り下ろす。最後の1発が脇腹に入ったとき、オレの意識は途切れた。

2時間後、口座の有り金をすべてオーナーに支払い、ようやく解放された。その額オレが300万、タカシが400万。詳しくはわからないが、サクラの連中も各自ソートー額を取り上げられたらしい。
もっとも、これで一件落着にしてくれるほど相手は甘くない。
帰り際に、オーナーが言うのだ。
5日以内に、オレとタカシでさらに3千万用意しろと。カジノ業界では盗ったカネは倍返しが徒。できなければ必ず殺すとも。2日後、オレたちは名古屋に飛ぶ。実は横領発覚直後、偶然、元ディーラーの知人の紹介で、名古屋市内に新しくできるカジノに、オープンスタッフとして入り込めることになっていた。
ほど遠いこの地で、ほとぼりを冷まそうというワケだ。
3千万など、ハナから返す気はない。
現地に到着後、ヤクザ上がりのオーナーに詳しい説明を受けた。ハコは、スナックを改装した小規模なもので、従業員も一展われ店長が1人、ウェイトレス-人、そしてディーラーであるオレとタカシの計4人だけ。給料は固定で40万だという。
ところが、どうもおかしい。
給料日を過ぎても、この本吉、カネを払わないのだ。
客入りはまあまあで、確実に利益が出ている。
なのになんでじゃ!?
「ワリィワリィ。いま野球の方が穴開いとるでよぉ」
本吉はカジノオーナーの傍ら、野球賭博のノミ屋もやっているのだが、赤字続きで、そちらにカジノの儲けを補填しているという。
半月、無給のまま我慢し、さらに半月待った。でも、くれない。ならばと、オレとタカシは腹を決めた。こんな店、とことん食っちゃるけ。

3日後の晩、サクラとして呼び寄せた地元の友人2人をバカラのテーブルに着かせ、ゲームスタート。どいつもこいつも、こみ上げる笑いを押し殺すのに必死な顔だ。
ムリもない。オーナーの本吉はほとんど店に顔を出すことがなく、店長もカネ勘定ができるだけのカジノ素人。客もトンマばかりで、トドメに監視カメラが1台もないとくる。

まるで、どうぞパクってくださいと言ってるようなもんじゃないか。怪しまれぬよう、疑われぬよう、じっくり食って2ヵ月。店が500万近くの赤字を出したころ、ついに本吉が顔色を変えた。
「毎日毎日、アホみたいに負け続けやがって。オマエらプロだろ。キッチリ仕事せい、ボケ!」
ボケは本吉の方だった。経営難の原因を名古屋の客層が悪いからだと信じて疑わない。
そしてさらにマヌケなことに、数カ月後、本吉は、名古屋の店をたたみ、新たにオープンした岐阜のカジノで元のスタッフをそのまま使うと言い出した。どこまでノーテンキなんじや、アンダ
当然、オレたちは食いまくった。で、ここもまた500万近い赤字を吐き出し、わずか1ヵ月もたたずにパンクと相成る。
本吉の金主(ソープランド経営者)がさすがにギブアップしたらしい。
「オマエら、ホッント怪しいなぁ〜・なんかオレの店でよからぬことしとらんかつただろうなあ〜」
岐阜を去る日、本吉が苦虫を潰した顔で呪みつけてきた。確信はあるが、証拠がない。そんな表情である。
「ははは、やだな、勘弁してくださいよ・オレら一生懸命頑張ったじゃないですが」
このときは想像すらしていなかった。それから間もなく、本吉が「証拠」を携え、再びオレの前に現れることになろうとは。

面白いもので、カジノ業界で働く人間は、なぜか日本各地の店を転々とする者が少なくない。
ために、いったんこの世界に足を踏み入れると、かっての同僚から「○○県のカジノにいるんだけど、オマエも来ない?」という誘いが度々舞い込む。
オレもまた例外ではない。岐阜から地元に戻ってまもなく、
広島の店で同僚だった三沢から電話が入った。いま大阪のカジノで店長をやっており、ディーラーを探しているらしい。
タカシも一緒なら、という条件で即OKした。広島のカジノで起こした横領の件はまだ片づいておらず、先日も、オーナーがオレたちを血眼になって探し回っていると聞いていた。危なっかしくて、とても長居はできない。
三沢の店は、典型的なポンコッハウスだった。ポンコッとは、店ぐるみで客を殺しまくり、稼ぐだけ稼いでバックれる、いわば短期決戦型のカジノのことだ。
違法カジノで行われている多くのイヵサマは、特に難しいテクニックが必要なわけではない。
詳細は省くが、要は、カードの裏面から表の数字がわかるよう予め細工を仕掛けておいたり、ターゲットの客をハメるのにサクラを使ったり、あるいは目の錯覚を用いてカードの並びをゴマヵしたりと、理屈さえわかれば、誰でもできるものばかりだ。
三沢から軽くイカサマの手ほどきを受けたオレたちは、期待通り、売上げを伸ばした。日に500万、多いときで1千万。
客からムシリ取る金額に比例して、給料も2カ月目で帥万を突破。もう笑うしかない。
身も凍るような事件が起きたのは、大阪にやってきて3カ月後のある日のことだ。
タヵシと寮から店へ向かう途中、自販機でジュースを買っていると、背後から肩を叩かれた。
「松尾さんですか?」
振り向いたオレの目に、2人の見るかにャバそうな中年男の姿が飛び込んできた。
「は、はあ、そうですけど」
「ああ、よかった」
次の瞬間、タカシとともに車の後部座席に押し込まれた。ナニ?何なの?
「あの、すいません。僕らどこに連れて行かれるんですか」
尋ねるオレに、助手席の男は笑って言った。
「名古屋だ」

血の気の失せたオレたちを乗せ、一路東へとひた走る寛中で、リンチは始まリた。 イヤになるほど顔面を打ち伺けられ、3時間後、名古屋郊外 にある雑居ビルに着いたときには、すでに顔は血まみれ。ゴム まりのように膨れあがっていた。

「ようもようもやってくれたな」

放り込まれたビルの2階で待っていたのは、あの本吉だった。

名古屋で一緒に働いていたウエイトレスがチンコロしたらしい

そういヤ、彼女と何度かホテルにしけ込んだ際、ポロッと漏らしたことがある。くっそー、あの女ー

後ろ手に手錠をかけられ、執勘な制裁が始まった。激しい痛みが身体中を襲い、もはや、どこから出たのかもわからぬ血がコンクリートにしたたり落ちる本吉が出刃包丁とまな板を持ってきた

「二度とディーラーできんようにしてやろうか?」

そのことばに、オレとタカシは大声で泣き喚いた。人間、ィケイケだ何だとカッコつけていたところで、絶対的な恐怖を前にすればみなこんなもんだ。

それからビルの室に監禁された後、カネの話になった。ロ座に人っている金(2人で400万)では足りないと本吉は言う。いったい、あといくらあったら気が済むんじや。

「ー人1千万。と言いたいところだけど、ま、毎月50万でいいわ。そのかわり無期限な。オレがイイって言うまで毎回キッチリ払ってもらう。1回でも遅れたり、飛んだりしたら、そんときは覚悟しろよ」

その場では「約束します」と答えた。が、オレたちは二度と本古にカネを支払うことはなかった。族時代の先輩、友人、カジノ関係者。方々のツテを頼って面会した広島の某親分に泣きつき、本吉と話をつけてもらつたのである。タダではない。彼の自宅で住み込みで働くという条件付きで、だ。一度も憧れや興味を抱いたことのないヤクザの世界は、苦痛の連続だった。
毎朝6時半起床→親分の朝食の→運転手→掃除→タ食→就寝のパターンは徹底しており、自由は一切なし。時には、愛人の経営するカラオケ店の手伝いにまで駆り出された。正直、すぐにでも逃げたい。

が、今バックれたらそれこそどんな目に遭うかわかったもんじゃない。ここは我慢。機会を待つしかない。チャンスが巡りてきたのは、2年後。オレは27才になっていた。この前、ひょんなことで警察署の幹部と知り合いになっての、タカシが持ってきた話はこうだ。幹部を何度かクラプで接待し、そこで「ヤクザになるよう強要されているんです。何とかしてくれ」と直訴する。警察から直々に言われれば、さすがの親分も応じるのではないかー。果たして、効果はテキメンだった。接待に気をよくしたのか、泣きつくオレたちを不欄に思ったか、その幹部氏、親分に直接かけ合ってくれたのである。
「あの2人を自由にしたれ。エエ加減にせんと、アンタをパクらにやならんけのう」
即日、オレたちは追い出されるように親分の屋敷を後にする。
待ちに待った自由の身。さて、これからどうするか。タカシは、住み込み時代に知り合ったツレと金融屋を始めるらしいが…。
悩まずとも答は決まっている。
ディーラー以外に何があるんだ。