本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

バイクを盗まれ追い込むつもりがケツ持ちのヤクザが出てきた

「ココセコム」このサービスは自分の車やバイクが盗まれたとき、あらかじめ発信機を取りつけておけば、その電波を探知盗難車の現在位置が確認できるというもの。新しモノ好きのオレはその機能説明を聞いただけで俄然興味をソソられた。だって、まるでスパイ映画みたいじゃないか。)

さっそくセコムの営業所へ間い合わせてみると、盗難車の位置は何丁目何番地と細かい検索が可能な上地響軍竃話で周辺地図も確認できるらしい。値段はー万円前後。契約するのに迷いはなかった。実は、すでにこの時点でオレの頭の中に金儲けのアイデアがひらめいていた。

ココセコムを付けた車をわざと盗ませ、それを追跡、犯人を捕まえることで多額の示談金をせしめる

まだ机上の論理に過ぎないが、何も他人様の車を盗むといってるんじゃない。盗まれた被害者として損害金を請求すれば筋は通りやすいし、バクられる危険性も少なそうだ。試す価値は十分ではないか。ただ、オレのウィークポイントは頭で思いついても、それを実行に移す力に欠けているといっ点だ。つまりは小心者。幸か不幸か、犯罪に手を出すほどの大胆さは持ちあわせていない。

「へー、おまえがそんなこと考えたなんてどーっしたんだよ」

手を組むならコイツしかいないと、友人で、現在怪しげな金融会社に勤務する田村(仮名)に計画を打ち明けたの。果たして、ヤツは予想どおり、あきれたような顔でオレを見た。

「完壁だと思うんだけど、どうかきいてるぶんにはイケそうだけどな…。ただ、車ってのはリスキーすぎるだ。もし見つけられなかったらどうすんのバイクでいこう」

「一緒にやってくれるのか」

「ハハハ。そのつもりで電話かけてきたんだろうが。バイクは後輩が2台持ってるから、普段乗ってない方を借りればいいだ」

「でも、バイクなんか簡単に盗んでくれるか?」

「そんなもん、通学路に置いとけば一発だ。学生に盗ませたところで、取れる示談金など数千円がせいぜい。いくら何でも割に合わないだろ」

「バカだなあ。もっと頭を回せよ。親から取るんだ」

「警察に通報されないかな」

るわけねーじゃん。警察にいわれて困るのは息子がバイクを盗んだ親の方だ。なるほど。自分の息子が警察に捕まり学校を退学になるなら、金で解決しようと考えるのが親というものか。

「いつもバイクで通勤してたのにどうしてくれるんだー」

なんて文句言ってやりゃいいんだよ。私立のボンクラ自学の親なら50万ぐらいは軽く出すだ。巻き上げた金は渡す謝礼を除いて折半。田村の提案にオレは素直に首を縦に振った。話の主導権はすっかり田村に移っていた。
バイクはいとも簡単に見つかった
ココセコムを使って本当にバイクの居場所がわかるのか。まずは実験してみようと、数日後の日曜、近所の公園にオレと田村、後輩のヨシユキが集まつた。どこでもいいからバイクで逃げてくれ。オレと榊原でキッカリー時間後に探しに出るから。

「わかりました」

田村の指示で、発信機を取り付けた愛車ゼファーが走り出して1時間、地図をダウンロードすると、マップ上に星印が点滅した。場所は、県境に最近できたショッピングモール近辺らしい。さっそく田村の運転する車で目的地を目指す。この調子じゃラクショーっぽいが。

「え、マジかよ」

30分後、ショッピングモールの巨大駐車場に到着したオレたちは、思わず声を上げた。目の前に軽く2、300もの車がびっしり並んでいる。ョシユキもまた意地の悪いところを選んだもんだ。しかし、先ほどダウンロードした地図は半径50メートルまで拡大が可能。かなりポイントが絞れるはずだ。

「ん。地図だとちょうど真ん中辺りだな。行ってみようぜ」

果たして、ゼファーは車と車の間に停まっていた。見つけるまでに要した時問、約5分。この精度ならまず信用していいだろう。実験成功に気をよくしたオレたち3人は、その夜さっそく行動に出た。

近所でも特に偏差値が低いと有名な私立F校へ向かい、校庭に面した道路にゼファーを放置。当然キーは差したままだ。

「ここなら目立つだ。携帯の地図でゼファーの位置を確認すれば准備OK。あとは盗んでくれるのを待つだけだ。翌朝、確認役のヨシユキから電話がかかってきた。なんだよ、もう盗まれたのか。

「いえ、あの…そうじゃなくてパーツだけ盗まれました」

「はあ」

聞けば、ヤツのゼファーは人気の改造パーツを付けていたらしい。だから、本体には見向きもされなかったってのか。それとも、まさかカギが差しっぱなしとは気がつかなかったか。いずれしろバイク自体が盗まれないことには話にならない。
バイクが盗まれたのは、4日後のことだった。
携帯の画面に表不されたポイントは学校からさほど離れていなかった。何度かダウンロードしてみたが、星印の動く気配はない。特定の駐車揚なりに置かれているようだ。

ひとまずポイント場所を確認しに向かうと、そこはごく普通の一軒家だった。垣根に囲まれた庭を覗く。玄関の前にー台のバイク。間違いない、ゼファーだ。特別、壊されてるような様子はない。ただいま時間は夜の10時。乗り込むのは明日でいいだろ

翌朝、田村の車で張り込むことー時間、玄関のドアが開いたかと思うと、中からジャージ姿の高校生らしき男がー人出てきて、ゼファーをいじりはじめた。コイツか、犯人は。どうする?オレが隣の田村に声をかけよーっとした瞬間、ヤツは車外へ飛び出した。

「コラおまえ、そのバイク、オレんだぞー」

ガキの胸ぐらをつかんで大声でわめく田村、硬直するガキ。おいおい、ちょっと興奮しすぎじゃねーか。
と、そこヘ中年女性が「何事ですか」と顔を覗かせた。母親のようだ。

「おばさん。これ、オレのバイクなんだけど、どういうことなの。息子さんが盗んだんだよー」

わめき散らす田村に、母親が困惑した顔で「ここでは何ですから」と家の中へ促す。さあここからが本番だ。居間のテーブルを挟み、オレと田村、向かいに寝巻き姿の父親と母親、脇にバカ息子が正座という状況で、話し合いは始まった。

「お父さん、息子さんをそうやって怒るのもいいんですが、とりあえす後にしてくれませんか」

まずはオレが冷静に切り出し、続いて田村が追い込む。

「こっちはあのバイク盗まれたせいで、大事な仕事ーコ無くしてんだよー」

「・・・……」

「どう責任取ってくれるのかって、話なの。わかる?何なら今すぐ警察に行こうじゃないの」
「・・・……」田村が、警察を口にしたのは、ヤツなりの計算があったからに違いない。わかりやすい不良なら、

「どうぞ警察へ」となるやもしれぬ。が、このごく普通な親子の場合は世間体がいちばんのはず。田村の攻め方は正しい。

「お父さん、黙ってても話が進まないよ。どつするの」

追い込む田村に、ようやく父親が絞ったようにつぶやく。

「いくら・ぐらい・」

「お父さん、もう一回言ってくれる?」

「いかほどで…許していただけます・・か」

「わかった。いいよ。お父さんがそう言ってくれるなら、50万でぜんぶ無かったことにする」

「…50万ですか」

「警察にも学校にも連絡しない。それは約束します」

「わかりました」

母親が銀行へ走り、示談金の50万が支払われるまで約40分。田村は、うなだれる息子に「マジメになれ」と声をかけ、その場を後にした。

あっけなく成功した悪事を繰り返すなという方が無理な話だ。オレたちは金を手にした翌日から次の作戦を練り始めた。

「F高でもう一度っでのはマズイだろな、さすがに」

「あ、それはヤメといた方がいいな。あのガキが学校で漏らすか?どこか適当なとこあるか」

「いや、あそこはどうだ。〇〇町の居酒屋」

「あー、コンビニの隣の店だろ。なんだよ、そこが」

田村が言うには、その居酒屋はバイトに高校生を使っており、客もガラの悪いのが多いと近所で有名な店らしい。なるほど。酔っ払った不良高校生なら盗む可能性は大だろ、「んじゃ、そこに決めようぜ。バイクはまたヨシユキ」

数日後の土曜夜田村と2人して居酒屋へ。店の片隅のテーブルに腰かけると、すぐに若い男が注文を取りに来た。髪を茶に染め、確かにマトモな高校生には見えない。厨房の中にも1人、似たようなヤンキー風が働いてる。ただ、客はいたって普通。サラリーマン風とカップルが2組ずつ。あとはオバチャン3人組がやかましく飲んでいるだけだ。「まあまあ、何日か置いとけば誰か盗んでくれる」

少し不安を感じつつも、キーを付けっぱなしで路上にバイクを放置し、田村と別れる。不良ども、首尾よく盗めよー願いはー週間後の翌週日曜に叶った。

時間がかかって心配したが、確かに別の場所へ移動している。さーて、そろそろ行きますか。一度経験したことで余裕ができたようだ。オレはこれから悪事を働くとも思えぬほどの平常心で、田村と目的地に向かった。

ゼファーはボロアパートの駐車場に停められていた。正直、がっくりである。こんな借家に住んでる人間が金を持ってるとは到底思えない。それになりより、共同住宅では誰が犯人か特定できないではないか。露骨に不機嫌になっていくオレに田村。

しかし、犯人が意外にも簡単に割れた。見張りを始めて30分もたたないうち、アパートの階段を茶髪のヤンキー風が降りてきて、バイクにエンジンをかけ始めた。って、どこかで見たと思ったら、オマエ、あの居酒屋の店員じゃねーかー

「おい、コラー」

田村がダッシュで近づき、ヤンキーをバイクから引きずり降ろす。

「なんだよ、テメーー」

「なんだよじゃねえー・これパクったのお前だろがー」

「・一-・-・・」

確認のため、部屋まで案内させドアを開けさせたが、確かに誰もいない。

「じゃ、とりあえず電話教えろ。それと警察呼ぶか」「いや、それは・・…」

いいよ。もうー回くるからき家も特定できたし連絡先も聞いた。とりあえず今日のところはバイクを取り戻すだけに止め、翌日にでも出直そう。
追い込むつもりがケツ持ちのヤクザが
自宅に帰って2時間後、携帯が鳴った。着信を見れば茶髪の番号だ。お詫びの電話でもかけてきたんだろうか。

「おまえ、ガキのところに行ってカネ引っ張るっとしたろー」。

いきなり、野太い声が聞こえてきた、「あの・どちら様・・」

「くわしい話聞かせてくれ。いいからちょっと出てこいや」「……」

口調からしてヤクザか、それに近い人間だろう。でも、なぜこんな男が出てくるんだ。あのヤンキーとはどんな関係なんだ。思わず体が震えるが、考えてみれば、オレも田村もヤンキーに金を出せとは一言も口にしていない。恐らくこの男も、ハッタリを噛ませばオレが手を引くとでも思ったのだろう。とりあえず、現時点でこちらに落ち度はない。バイクを取り返す意味でも、ここは会っておいた方が正解ではないか。男に待ち合わせ場所を聞いた後、すぐに田村に連絡を入れた。

さすがにー人で行くのは恐いが、こんなときに限って電話にでない。ヤクザと揉める気はない。今回は保留で終わらせた。