本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

復讐のレイプを請け負う裏稼業の男

男は、そのとんでもない人物の話をしきりにした。

口からでまかせの言い訳だろうと思いながら、じゃあ今度はその人に会わせてくださいよと、確かそんなことを言った覚えがある。
すっかり忘れていたが、男はキッチリ取材をしてくれていたらしい。

「明日の深夜2時、ナンバで待ってるわ」
深夜2時?ふざけんなと思いながらも、好奇心にかられたオレは新幹線チケットを手配した。これが真夏の夜の恐怖体験になるとも知らずに….

翌日、ホテルにチェックイン。
「北野さん、ずいぶん時間に正確やないの。じゃあ、紹介するわ。
こちらが今日の主役、レイプマンさん」
「どうも、佐々木です(仮名)。遠いところをご苦労様です」


レイプマン。なんだ、酷い男ってのは強姦魔か。そりゃ非道なヤシには違いないだろうが、裏仕事師と言うより単なる犯罪者だよ。
身元を隠すためか、妙なイントネーションもワザとらしいしな。ちぇ、せっかく大阪まできたのに。
ガッカリした表情が顔に出たようだ。

「話だけ聞いても信じられないでしょう。百間は一見に如かずです。
北野さん、行きましよ」
気の弱そうなサラリーマン風情に見えた佐々木が、ゾクつとするような鋭い目つきをしながら立ち上がった。
行くってどこへ。百間は一見?
もしかして、これからレイプしようって言うんじゃないだろうな。
こいつ、オレを強姦の共犯にする気なのか。
「あの…」
問いただそうにも、全身からみなぎる迫力に負け、言葉が出ない。ヒモ男も、心なしか緊張した面もちで後に続く。

店の脇に停めてあったセダンに乗り込み、深夜の街を走る。着いたのは場所もわからない静かな住宅街だった。小さな街灯以外、辺りに明かりはない。無言のまま歩き出した。
「あなたはあくまでも通行人です。たまたま取材でこの街にやってきて、ブラつと歩き回ってた。我々も散歩してるだけでね」
佐々木は、そう言いながら1棟のマンションの前で立ち止まった。外階段を上がり、2階のいちばん端のドアをそっと引く。
「。・・・・・」
佐々木が、トビラの奥を見てみろと言うように、アゴで小さく合図する。
ドアの正面に回り、人の気配がする部屋の中を覗き込む。と、真っ先に飛び込んで来たのは赤い小さな光だ。赤外線か?ナイトシ
ョットでビデオの撮影でもしてるのか。何を撮ってるのだろう。そう思いながらカメラが向いた先に目を凝らすと…ベッドがあった。
そして暗闇に慣れたオレの目に映ったのは、恐らく部屋の主と思われる女性の上半身を押さえつけている男と、女の上で動いてる黒い別のシルエット。
「えつ…」
振り返ると、佐々木はかすかにうなずき無言でドアを閉めた。ノブを握る手にはいつの間に付けたのか薄い医療用のゴム手袋がしてあった。

「この店なら防犯カメラもありませんから」
人気のない裏道を走り、郊外のファミレスに腰を下ろす。いま見た光景が頭をよぎり落ちつかない。
なのに目の前の佐々木は、何でもない顔つきでコーヒーをすすってる。手にはもう手袋などない。まさか、オレを担ごうとしてヒモ男が仕組んだ芝居だったりして。
神妙そうにミルクティなんか飲んでるけど、ドッキリでした-ってプラカード用意してるんじや。
…そんなわけないか。どうしよう。このまま放つといていいものか。といっても、取材を頼んでおきながら自首を薦めるのも変な話だ。コーヒーを飲んだら帰っちまうか。それにしてもこの佐々木って男、何者なんだろう。
「あの部屋の女はね、キョウコっていう26才のOLなんですよ。一見、地味ですが、化粧映えするっていうのか、スナックでバイトしてるときは男好きする顔になるわけです」
だからレイプしたっていうのか。まさかコイッ、目に付いた女を片っ端から強姦しようとしてるんじゃないだろうな。
「アハハ、話の順番が違ったようですね。今日のアレは私の仕事なんですよ。依頼主はいまごろ南の島でバカンスを楽しんでるんじゃないですか」
果たして佐々木の裏稼業は復讐代行屋だった。裏モノでも『嫌がらせ屋』や『別れさせ屋」など、憎い相手に仕返しをする仕事人を何度か取り上げてきたが、佐々木はレイプや暴行など物理的方法での専門に受けているのだという。
「順を追ってお話ししましょう。まず、仕事の依頼なんですが、ほとんどクチコミです。インターネットのアングラ掲示板をご存じでしよ、有料の。

私、いくつかのサイトの会員になってまして、ウワサを聞いた方がそこにかき込む。今日の依頼人は誰かレイプマンを知りませんか?って感じでしたね。メールアドレスが添付してありましたんで、返事を出してみたんですよ。なぜレイプマンを探してるのか、って」
すぐに返事が来たそうだ。大阪で広告会社を経営しているというその男性は、独身。3年前にスナックでバイトをするキョウコさんに出会い恋に落ちた。羽振りの良かった彼は、1年ほど付き合う間に食事だプレゼントだと1千万近い金を注ぎ込む。が、「一
緒になろう」とプロポーズした矢先、会社が左前に。すると彼女は、あっさり彼を捨てたという。
「それで復讐したいと」
「いえ、違うんです。いったんは仕方ないとあきらめた。なのに去年になって彼女が二股かけてたことが判明したですよ。それで押さえていた分、憎しみが一気に噴き出したんですよ」
「なるほど」
いつの間にか、オレは佐々木の話に引き込まれていた。
信用に価する依頼人かどうか
恋に破れた広告マンは、必死で会社を立て直す。ようやく一息つけたのは去年のこと。疎遠になっていた取引先に挨拶に出向き、彼女のウワサを耳にした。世間話の後、昔の担当者が何げなくこぼしたのである。
そういえばあなたとも何度か一緒に行ったミナミの店に、キョウコって女がいたでしよ。知ってます。あいつ、うちの若いのに岡惚れして大変だったんですよ。他の男に貢がせた金を注ぎ込んだのに別の女と婚約するなんて結婚詐欺だなんだって、会社にまで押しかけてきちゃってlL
「最初は、彼の独り相撲だと疑ってたんですよ。ホステスに入れあげ、自分の女だと勘違いする連中は山ほどいますからね。でも、話に整合性があったんですよ」
掲示板に書き込まれたメッセージにすべて返事を出すわけではない。コンタクトを取るかどうかは佐々木次第。詳細を聞いても、場合によっては自分の素性も明かさない。佐々木の方で依頼人を選ぶのである。
「まず同情できるかどうかがポイントですね。人道的にどうのこうのじゃなく、復讐相手にまったく非がないと警察に訴え出て事件になる可能性が高くなるんですよ。今日のケースも、裁判沙汰になれば女がスナックでバイトして、男に貢がせてることが表に出ちゃいますからね。彼女は泣き寝入りするしかないんですよ」
なるほど。レイプされたことさえ公にしたくないのに、身に覚えがあれば被害届など出す気にならないだろう。
「仕事を引き受けてもいいと思ったら、相手と直接会って交渉する。確かに会うのはリスキーですよ、依頼人に私の証拠を残すわけですからね。けど、いちばん恐いのは何だかわかります?あのね、寝返りなんですよ。だから実際に会って本当に信用できる人間か自分の目で判断する。まあ、念書を取って釘を刺すって目的もありますけどね」
確かにビビった依頼人がすべてをぶちまければ、女性に無理矢理、被害届を出させてでも動き出すだろう。名前や連絡先、報酬の振込口座、メールアドレスも架空名義というが、どこで足が付くかわからない。
加えて、マスコミの人間や、警察関係者が依頼人を装って接触してくる可能性もなくはない。素人考えでも、そのリスクは限りなく高そうだ。
「そう、だから今日の仕事も受けたのは1年ぐらい前じゃなかったかな。対象者の行動を洗い出すのはもちろんですが、依頼人の背後関係も探りますんでね」
佐々木がもっとも注目するのは、依頼人の経済事情だという。なんせ、復讐代行の報酬は最低額でも200万。ギリギリの生活をしている相手なら、金を払うのが惜しくなって警察に駆け込むかもしれない。
「報酬は相手次第ってとこですが、
実行役の3人と私で200はいただかないと割に合いませんからね。体を張ってです
から、そう高くないと思いますよ。今回の依頼人は慎重な方で、万一、自分が疑われたときの完壁なアリバイもほしいと言う。ですんでビザが必要な南の島に、女性同伴で行ってもらいました」
実行までに1年かかったのは、このアリバイエ作のためらしい。
これまで、プライベートで海外に出るのは夏休みだけだった彼が、中途半端な時期に旅行してはかえって怪しまれる。そこで、夏のシーズンを待ち実行に移したそうだ。