本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

富士の樹海でって、ホントに迷うのか

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樹海って、ホントに迷うのか

ことの発端は、今年、酒の席でぼくがなにげなく漏らした一言だった。磁石が狂うだの自殺者が多いだの聞かされる富士樹海だが、実際のところそんなに物騒なとこかこの日本に存在するのかマユツバに思っていたのだ。

以前の樹海で自殺志願者を説得する企画も、ぼくにはいまいちピンと来なかった。そんなにバンバン人か死ぬわきゃねーだろうに。大学時代以来の友人Tがそれに応える。「樹海に迷って死ぬぐらいなら、しょせんそれまでの男だったということだ。運試しに行ってみるか」

同じく友人のAはあまり気乗りがしない様子。

「ヤバイよー、それはやめとこうよ」

しかし、週末の夜に男3人揃って酒を飲んでいるぼくたちのこと、翌週末に控えた3連休も予定があるはずはなく、ならば一緒に度胸を試しに行こうと簡単に話はまとまったのだった。口ープを越えて道なき道を3連休中日、今にも雨が降り出しそうな曇天の中、我々は「風穴」という観光スポットに向かった。

ここの土産物屋のオヤジが過去何度も自殺者を引き止めていると、以前テレビで紹介されていた。逆に言えば、ここから入っていけば迷いやすいという意味なのだろう。「お、ここだよ」
「ちょっと聞いてみるか」ぼくたちはオヤジに尋ねてみることにした。

「すいませーん、樹海ってどこが一番迷えますか?」こういう物好きには慣れっこなのか、オヤジは驚く様子も見せずおもむろに樹海地図を広げ、今年になって死体が見つかった場所を10カ所ほど教えてくれた。

「ほら、ここがそうだろ。ここもそうだ」

マークは樹海全体にまんべんなく広がっている。これじゃとこに入っても迷ってしまうではないか。勢い勇んでいたTとぼくも少しビビる。しかし、ここまで来て引き返したのでは示しがつかない(誰に?)。

とりあえず、土産物屋の脇の林道から樹海に入った。天気は悪く、人の姿もまばらだ。「でもこんなんじゃ迷わないよなあ」

しばらく歩いたところでTが一言う。いくら樹海とはいえここは林道。時計や磁石がどうなろうとも、来た道を引き返せば土産屋に戻るのだ。面白味に欠ける。そこで3人は林道脇の口ープを乗り越え、道なき道を歩くことにした。タイミング良く(?)雨が降ってきた。上を木に覆われているためほとんど気にならないが、薄暗く気味か悪い。

15分ほど歩くと、いよいよ方向感覚が薄れてきた。光景が変わらないので、まっすぐ進んでいるのかどうかすらわからない。

「ヤバくないか?」Aがつぶやく。その声につられ、携帯を取り出すと「圏外の表示」確かにヤバイな、これは。

テントからのぞく靴下を履いた足

不安な2人とは対照的に、Tは勝手にずんずん奥へ入っていく。Aが力バンから何か取りだした。見ると、力口リーメイトだ。何が起きようと絶対生き延びる決心らしい。準備のいいやつだ。林道を逸れてからかれこれ30分。前方を歩いていたTが突然声を張り上げた。

「テントがあるぞー」50メートルほど前方に、白く薄汚れたテントが建っている。こんなところでキャンプとは、ぼくたち以外にも樹海ツアーを楽しんでる人間がいるのか?が、近づくにつれ、そのテントが尋常でないことに3人は気つく。

周りに、洗面器や歯ブラシなどの生活用具が散乱しているのに、人の気配がない。

「すいませーん」「誰かいるんですか?」

Tがテントに向かって呼びかける。返事はない。と、テントの隙間から、人間の足らしきものが少し顔をのぞかせているのが見えた。足だと思ったのは、靴下を履いているからだ。
「これ、ぜってー死体入ってるよ」「開けてみようぜ」

テントのチャックをTが少しずつ開けていった。びびったAは後ずさり、ぼくもやや離れてうかがう。中に顔をつっこんだTはすかさず振り向いた。「マジだよ」

犬も歩けば死体に当たる
恐る中をのぞいてみると、辺り一面に髪の毛が散らばっており、人間の形をしたまま、服がぺちゃんこになっていた。顔の方には完全に白骨化したガイコツが。若干ながら肉が残っているが、臭いはまったくしない。まるでドラマのように、急に雷が鳴り、大粒の雨が叩きつけてきた。さすかの樹海もこれだけの雨は防げない。

「マジやべーよ。早く帰ろうぜ」Aか泣きそうな声を出す。

「そうだな、引き返そうぜ」
が、いざ戻ろうとすると、さっきまでなかったはずの青いテントが視界に。

「あんなのあったっけ?」「あったかな?」「いってみるか」「ヤべーよ、帰ろうぜ」結局、全員一致で引き返すことになったが、気の動転した3人はにはどこをどう戻ればいいのかさっぱりわからず、もうどうにでもなれとやみくもに歩いたところ、さっきの林道とはまったく別の舗装道路に出てしまった。

★土産屋のオヤジに報告すると、至極当然なような顔をしていう。

「この辺りじゃ、犬も歩けば死体に当たるってくらいだからね」

オヤジによれば、樹海の捜索は、毎年10月に行われるらしい。つまり9月かもっともホトケさんに遭遇しやすいわけだ。タイミングが良かったのか悪かったのか、いずれにせよもうあんな場所はコリゴリだ。