本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

暴利スナック・ぼったくりバーのバイトが見た危険なキャバクラの現実

思い返したくもないが、語らずにはいれらない…。

今は四六時中好きなクルマと接し、幸せな日々を送っている僕にも、そんな話がひとつだけある。

ちょうど3年前の冬、2カ月間だけ働いていたアノ店のことだ。
当時、僕は食うや食わずの日々を送っていた。自然、バイト情報
誌にも頻繁に目を通す。が、マトモな仕事は給料も安い。多少ヤバ
くても金のいいところで働きたいのが本音だ。

『喫茶店時給120O明るく楽しいお店です』
この求人広告が目にとまったのも、時給の高さゆえ。

事務所は、歌舞伎町の雑居ビルの中にあった。呼び鈴を鳴らすと、
「あのぅバイトの」
「まあ入って。キタネーけど」
アンちゃんは、いかにもヤル気のなさそうな口調でこう切り出してきた。
「ウチはね、ポーカーゲームやってんの。わかるだろ?

ま、稼げるのは間違いないから」
ほらね。やっぱりこういう店しかあの時給は成立しないのだ。
「だけどね-、今ポーカーの方はいっぱいだから、バーの方をやっ
てくれよ。飲み屋のウエイタ-な。キミ若いからダイジョブでしよ」

条件は悪くない。夕方5時から朝4時まで、時給1200円。

それに、ポーカー喫茶よりアブなくなさそうだ。
「オシッ、じゃあ明日店に来てくれ。店長が待ってるから」
僕の返事を待たず、採用は決まった。

「Tビル」という雑居ビルが見えてきた。
エレベータで×階まで上がると、
そこはまさに飲み屋街。廊下には
スナックのネオンがずらりと並び、
かすかにカラオケの歌聞こえてくる。


その中のひとつに、僕の職場と
なる「S」があった。ドアを開け
ると、店長と主任がソファでタバ
コを吸っている


「すいません。西といいますぅ、
今日からお世話になり…」

「ああ、わかってるって。最初に
仕込みやっちゃってくれ」
「ハ?仕込みって」
「聞いてないのぉ?ったく、教えてねえのか、あのタコスケが。ちょっとオレに付いてきな」
店長に連れられていった先は、Tビルの地下。

ここに、共同の倉庫があるという。なるほど、ここに買い付けした分を貯めておくん
だな…と思ったところが。
「いいか。このウイスキーを空ピ
ンにつめて客に出すんだ」
僕は自分の目を疑った。店長が
そう説明しながら、指さした先は大きなポリバケッだったのだ。
「ウチだけじゃなくて、他の店でも客が残した分は全部ここに貯め
てるんだよ。なんでも再利用しなきゃもつたいねえだろ?」
「…マジすか」
呆然とする僕に当たり前だろと
いう顔で指図する店長。どうなっ
ているんだよ、この店は。
驚いたのは、バケツのウイスキーだけじゃない。店には一応、VSOPやレミーマルタンなどの高級酒などもあるのだが、その中身もすべて「レッド』などの最低ランクの酒と入れ替えられている。

ミネラルウォーターだって水道水だし、ツマミのポテトチップスや柿ピーも食い残しで湿気っていて、食えたモンじゃない。唯一、本物はビールだけだ。

「おはよ-ございま-す」
そのうち女が出勤してきた。見たところ20才前後、ニキビ面で歯
の汚れたヤンキー風のネーチャン。
ロクに準備もしていないクセに
「あ-疲れた-」などと言いつつ、ソファにゴロつと倒れ込む。店長も主任もお構いナシ。こんなヤル気のない店に誰が飲みに来るっていうんだろうか。

薄々感づいてはいたものの、「S」がボッタクリ店であることは、メニューを見せられたときに決定的となった。
ウーロン茶4千円、ビール6千円、ウイスキーのボトルが3万円、
ポッキーをグラスに入れたツマミが3千円。0の数を何度も見直し
てみたが間違いない。そこらのチ
ェーン系居酒屋の、倍はするだろ
う、まどうことなきポッタクリバーである。
店長からは.応、メニューは最初にチラシと見せておけ」と言
われたが、そんなことをすれば客
は1杯も飲まず逃げ出してしまうではないか。
が、その心配は無用だった。この店には、専属の呼び込みがいて、
彼らが連れてくる客のほとんどが泥酔状態なのだ。
初めての客は、2人連れのサラリーマンだった。すでに千鳥足で
相当飲んでいるのがモロわかり。
値段を手で微妙に隠しながらメニ
ューを見せてみると、案の定ロク
に目も通さず「ボトルでいっちゃうよ-」などと気前のいいセリフを吐く。


僕の仕事は、酒のオーダーを取
って、テーブルに出すだけ。客が
飲んでいる最中はオネーチャンが
彼らの相手をしながら、カラオケをガンガン歌っていた。


「1曲歌ツタ、お客さんイクラ、知シテル?」
厨房で待機していると、コック
の中国人・ヤンさんがイジワルそ
うな顔で聞いてきた。
「いくらですか」
「500円ネ」
さっきからオネーチャンが必死
こいて歌っているのは、てっきり
オヤジたちと会話したくないから
だと思っていたが、どうやら違うらしい。
軽く20曲以上は歌っていたろうか。

結局、カラオケ代だけでも1万以上を稼いでしまったのだ。お
まけにこの女、飲みもしないジュ
ースやら乾きモノを勝手に頼みま
くっている。なんだか僕の方がヒヤヒヤしてきた。


「お客さま、しめて9万7千円になります」
店長が電卓を叩きながらそう言
った。とたんにオヤジどもの顔が
青ざめていく。
「なんでこんなに高いんだよ」
「チャージが2名様で1万、ビー
ルが1万8千円、ボトルが4万、
おつまみが5千円にアイスが5千
円、それと地方税で2万7千円つきますので、合計9万7千円です」
この数字がほとんどデタラメなのは、ボーイの僕ですらよくわかっている。
「いくらなんでも高過ぎ…」
果敢に反論を試みたオヤジが一瞬でシュンとなった。それもそのはず、レジの脇にゴッイ男どもが
総勢6,7人現れたのだ。
実は、お愛想直前には必ずレジの真下にあるボタンを押し、外で
待機している男に合図を送ること
になっていた。と同時に、客と飲
んでいた女はトイレに隠れる。す
べて打ち合わせどおりだ。
結局、オヤジたちは暴力こそふ
るわれなかったものの、ほぼ無一
文状態で店から追い出されたのだった。

初日のサラリーマンのように自分の不運を認め、素直に金を払い
帰って行く客もいれば、当然ながら料金に納得いかずに暴れ出す客
も少なくなかった。
しかし、会計でモメて無傷で逃
げられた客など1人もいない。ま
ず、そのタイミングで現れるゴッ
イ軍団の数。営業中は30分ごとに
客が何人入っているかをチェック
する電話がかかってきて、常に客の2倍は人員を確保していた。


しかもケンカが本業のような連
中なので、フッウの素人は絶対に
かなうわけがない。暴れたら最後、
それこそ鼻がひん曲がるまでボコ
ボコにされてしまう。


いや、ボコポコ程度ならまだい
い方。イスで思いっきり後頭部を
叩いたり、気絶しかけると水をか
けて起こしてまで殴ったり、もう
少しで一線を越えそうなこと
は何度もあった。
いちばん驚いたのは、暴れ出し
たときにヤクザが自分らの店の内
装をブッ壊したときだ。ナニをト
チ狂ったのかと思えば、修理費を
客に請求してダブルで儲けるため
の作戦らしい。
たとえ殴られた客がその足で警察に駆け込んでも、こっちが「酔
っ払った客が壊した。営業妨害だ」
と言い張れば、警察も深くは立ち
入ってこない。仮に、内装を壊し
てなくても事情は同じ。「店の女
のこがイヤガラセされた」などと、のらくらり交わす腹だ。
勘定は現金で払ってもらうに越したことはないが、額が10万を超えることも珍しくない。そのときはクレジットカードで借りさせるか、買い取り屋でモノを買わせるか、それでもムリなら朝まで待って銀行で下ろさせる。
万一、客が現金もキャッシュカードも持っていなかった場合はどうするか。

普通のサラリーマンならあり得ないことだが、たまに田
舎から上京した純朴な学生風の客
が入ってくることもある。これはマジで悲惨だ。
「オイ、テメエの実家どこだ。今から電話かけっからよ◎ウソつくと、ダダじゃおかねえぞ」
まるでヤミ金融である。親にし
てみればたまらないだろう。夜中
の3時とか4時に突然電話が鳴っ
たと思ったら、ガラの悪い口調で
「オタクの息子さん、食い逃げしようとしてるんですよ。払うモンは払ってくれなきゃ」

だもの。結局、ほとんどの親が翌日には金を振り込んでくるのだ。
よくこんな惨状を毎日見て平気
でいられると思うだろう。もちろ
ん、僕とてマトモな神経じゃ務ま
らないのは承知の上。逆に客を少
しでもかばえば自分がヤうれてしまう

彼らの怖さをいちばん知っていたのは他ならぬ、店員なのだから。