本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

自殺志願者の背中を後押しし生命保険で稼ごうとする輩

過去、何度か死のうとしたことがある。ー度目は中学2年の時、原因はバレー部内での陰湿なイジメだ。首吊りを考えたが、友人に諭されておもいとどまった。2度目は高校に入学してすぐ。このときは、理由もなくただ生きるのがイヤになった。が、やっばり怖くて何もできず、彼女ができたことを境にいつのまにかそんなことも忘れてしまっていた。3度目は…。いや、もうやめておこう。逐一数えていたらキリがない。なにせ私はこの15年間、長いタームでの繰畿を繰り返し、急に死にたくなってはおもいとどまる生活を送ってきたのだから。

ここ数年は自殺が頭をよぎることなどなく、とりあえず平穏な日々を送っているが、またいつなんどき畿が頭をもたげてくるかは自分でもわからない。こんな私の、青臭くどうしようもない人生を自らのホームページに綴り始めたのが、今かりちょうど2年前のこと。過去を振り返ってばかりの内省的なページには、少ないながらも毎日のようにアクセスがあった。
自称14才の見知らぬ少年からー通の長いメールか届いたのは、ホームページ開設から2カ月ほど経ったときのことだった。「もうイヤんなったんです」と題されたその文面には、彼の中学生活が事細かに記されていた。読むと、どうやらこの少年、度重なるイジメに耐え切れず自殺を考えているらしい。はっきりとは書いていないが、悩みの相談に乗ってもらいたがっていることは理解できる。自殺の危機を幾度となく乗り越えた先輩に、何かしらアドバイスしてほしいのだろう。

しかしながら、私には月並みな激励文を返信するしか対処のしようがなかった。生きていればきっといいこともある、そんな浮ついた言葉になんの力もないことは自らの経験上イヤというほどわかっていたが、かといって説得力ある言葉など持ち合わせていなかったのだ。少年かりの返信は来なかった。が、時を同じくして、日本中の様々な自殺志願者からよく似た内容のメールが舞い込むようになる。

容姿に悩む中学生、受験でノイローゼ気味の高校生、借金苦のOL…。その数は20を超えた。みな、すぐにでも命を絶ちたいと願いながら最後の一線を越えられないでいる、いや、越えなくて済む方法を模索しているようだった。最初は私も、なんとか思いととまらせようとメールでの説得を繰り返した。ときには電話で事情を聞いてやり、ときには「それなら死んでみれば」とあえて冷たく突き放すこともあった。

しかし何度かメールを交換するうちに私は、彼らか見せる"甘え"とも取れる態度にイラ立つようになる。自殺反対の説得に対しては何かと屈理屈をこねて反論してくるくせに、いざこちらが賛成の立場に回ってやると、勇気が出ない、残った家族が可哀そう、弱虫と思われるのはイヤだなどと、うじうじ戸惑い始めるのだ。(結局、暇潰しに使われてんのかよ)
こうして、蓄積したイライラはある企みとなって爆発した。
それまでのメール交換で、私はーつの事実にたどりついていた。それは、首吊りや飛ひ込みは嫌でも、事故死に見せかける方法ならばみんな抵抗なく受け入れようとすることだ。明らかな自殺と違い親族に妙なわだかまりを残すことなくすっきりあの世へ行けると考えるのだろう。ある女子中学生など、過去に何度も自ら手首を傷つけておきながら、いつもあと一歩のところで両親の顔が目に浮かび、おもいとどまっているのだという。彼女日く「自殺すると、今よりも親に怒られそうで怖い」。ナンセンスにも思えるが、いくら自殺志願者といえど、やはり死んだ後のことを考えないわけにはいかないのだ。

自殺反対の立場を捨て去り私は、すべての相談者に対し自殺はいけないよと諭すフリをしながら、暗に事故死を薦めるメールを送るようにした。しかも具体的な方法を添えて。舎同速道路で怪しまれずに中央分離帯へ激突する方法、急カーブでセンターラインを超えて大型トラックへ突っ込むテクニック、死角の多い県(左折車か猛スピードで横切る交差責)方法やテクニックと言っても、酒や睡眠薬を飲むだの、アクセルをめいっぱい踏むだのと、ありきたりなものばかり。

地名は、過去の事故現場を丸写しし「昔から危険な場所だった。だからこんな事故が起きた」と無理矢理説得力を持たせた。むろん、自殺ほう助にならぬよう、あくまでこんな方法があるんですよと教授するのみにとどめ、実際にするかしないかの判断は自分で決めろと結ぶ。それまでは観念論のやり取このスタンスをとるようになって以来、前に進むようになった。

ほとんどの者が、吹っ切れたように感謝の言葉を述べ、しばらく後にメールの返信をストップするのだ。メールが止まる。そう、つまりはそういうことだと考えていいだろう。

借金、コンプレックス。ページ内に「こんな私でよければ、相談にも乗ります」と記してからは、新規相談も山のようにやってくるようになった。そして今、私は次のような他人を死地に送り込むだけではない、せっかくなら実利をも手にしようと欲を出し始めたのだ。

「事故死を試みる前に、私を受取人とした掛け捨ての生命保険に入っていただけないでしょうか。自らの死に方をも他人に委ねようという連中だ、きっと意のままに動いてくれることだろう。

※この記事はフィクションであり知的好奇心を満たすためにお読みください。