うかうかしてると殺されちまう
バケモンとは、小中学生の仮面をかぶった《殺人者》のことである。
兵庫県の少年が、顔見知りの小学男児を絞殺。校門に生首を放置するという凶行で、日本列島を震憾させた。世に言う、酒鬼薔薇事件である。
「子供の心が貧しくなってきているから、こんな事件が起こるのでは。これからは、彼らの心の闇に目を向けなけれぱ」
第2の(酒鬼》誕生を恐れ、世問はアせった。が、闇はとうにも止まらなかったようだ。
【12才男子が英語の女性教師をナイフで刺殺】
【男が風呂場ノゾキを注意され、隣家を強襲。3人を殺害、3人が重傷】
【12才男子が、4才の男児を誘拐。立体駐場から突き落とし殺害】
そして、また、うんざりする事件が起きる。カッターで友違の首をエグるという、どえらくド品な犯行。長崎小6女児殺害事件
友の首からぴゆーびゆー出る血を見て、少女はほくそ笑んだのか。ったく、どうなっちまってんだ今のガキどもは。
オレの中学の頃は、殺人な懸んて話題にもなんなかったぜ。
アニメやゲーム、インターネツト。識者によれば、子供のバケモン化は、このへんにあるらしい。だからどうしたんだ。重要なのは、バケモンともが確実に増殖し、うかうかしてると、いつかオレたちもヤツらに殺されちまうってことだろ。生死にかかわる一大事じゃねもはや、一刻の猶予も許されないくバケモン(もしくはバケモン予備軍)がどれだけ増え、どんな殺意を持ってるのか。
ただちに街で調べる必要があろう
ターゲットは学生に絞る。犯行当時の酒鬼の年齢層だ。
某区立学校に到着したのは某昼過ぎのこと。下校時まではまだ少しある。とここで、タバコなど吸ってる輩がいるのでは。周囲を散策するも、それらしき姿は見受けられない。
しゃーない、近所の公園で待つとしよう。
3時ちょうどに終業のチャイムが鳴った。校門からぞろぞろと出てくる生徒。さっそく、4、5人の男子集団にコンタクトを試みた。
すみません、殺意持ってませんかー。
「別に、殺したいヤッとかいないんで」
集団のボス猿らしき男子から、つっけんどんな返答。そうカタくならず、教えてよ。キミたちイカれてるでしょ?
「僕らマジメなんで。だいたい、殺すなんて、かわいそうじゃないですか」
世間体の話を聞きたいわけとゃない。オレはバケモンの素顔が見たいのだ。しかし、その後も極めて道徳的な問答が続く
そうか、あくまで腹は割らんつもりか。
次にアプローチした男女グループも反応は変わらない。なぜ狂気をあらわにしない。出し借しみせず、むき出しにしてみろよ
「あのー」
ヤキモキするオレの背後で、突如声がした。教師らしき2人の男が。なんだオマエらは。
「どのようなご用件ですか?」
「雑誌社の者です。ちょっと、パケモンいえいえ、少年犯罪について調べておりまして」
ー人は理科担当とおぽしき、白衣のハゲ。もうー人はトシちゃん(教師びんぴん)のような熱血教師。2人とも殺気立っている。
「そういう内容なら、教頭を通してもらわないとね」
「…生徒さんの素顔がみたいもので」
「困るんですよ。校門の前で、ヘンな質問されちゃあ。子供が怯えるじゃないですか」「ですから、私はですね…」
しばし論の後、トシちゃんが語気を強めて言い放った。
「あんたさあ、もう帰ってくれないか。でないと、通報するよ」
いったい何なんだ。未来を危倶するジャーナリストに対して、あまりに失礼ではないか。まして、イカれた子供をかばうような言い草。もしや、こいつもイカれてるのでは。こんなヤッがいるから、子供がダメに。教師がパカだから、子供もバカに。まったくもって理にかなった方程式だ。そう考えると、願わくばトシちゃんの思考も調べたかったが、さすがに断念した。もし運悪くパクられでもしたら、身も蓋もない。ひとまず退散だ。