香港出張のついでに有給休暇を取り、取引先の陳さんに現地ガイドを頼んだのは今年4月のこと。
「女とか酒はもういいからさ、香港ならではの場所ってないかな」
九龍城が壊され、治安がよくなったとはいえ香港が世界一胡散臭い街であることに変わりはない。どうせなら、何かインパクトのある観光を体験したい。
「例えばさ、日本じゃ手足を切られた女性が香港の見せ物小屋にいるってウワサになってるんだけど、聞いたことない?」
「うーん、知りませんね。あ、でも、私の友人なら情報あるかもしれません。ちょっと待っててください」
携帯であちこちに連絡し中国語でまくしたてること30分。電話を置いた陳さんがいった。
「わかりましたよ。それ、道山道士といつお坊さんが飼ってるそうです。その人、首女、と言ってました」
え、本当にいるの
「だけどそれ、とても可哀想な人です。あなた、見たいですか」
渋る陳さんをタクシーに押し込め、でこぼこ道をひた走る。道士は意外にも郊外のシャレたマンションに住んでいた。
「この301号室と言ってました。入ったら見料として日本円でー万円を支払ってください。私はここで待ってますから」
え、オレ1人でかよっ一緒に行こうよ陳さん。金は出すからさ。
「いえ、私、気の毒で見られません」
いくら口説いても動かない
彼を残し、ー人エレべータに乗る。不謹慎となじられようと、ここまで来て帰るわけにはいかない。コンコン。ドアをノッグすると、60近いランニングシャツー枚のしょぼくれたオッサンが現れた。これがえらい坊さんかっとりあえず万札を渡すと、オッサンが部屋の方に向かって怒鳴る。
んっ中でダンダン、ドンドン派手な物音がするぞ。シーンとなったところで、オッサンがドアを開ける。なにやら薄暗い部屋の中はかいだことのない動物じみた臭いでいっぱいだ。見れば隅に等身大の黒っぼい箱。この中に、首女、がいるしい。
道士は箱の前に立つとお経らしきモノをモコモコ唱え、おもむろに箱を覆う布を取り去った。と、そこにはおかっぱの少女の頭が。「ぎょええ」な、なんだ。オレは必死でデジカメのシャッターを押しながらも後ずさりしていた。生首かっ
いや、まばたきしてるよ。うわああ。「フフフ」突然、女の子が笑った。
首を乗せた台の下に鏡が置箱の横から手が出てるけどコレって。「ノーノー」よく見ようと近づこうとした途端、オッサンは大慌てで箱に布を被せ、玄関からオレを外へ放り出した。まったく香港って街はこれだから面白い。
これが首女。黒い箱の中に少女左立たせてある。要するに手品