本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

若い女性を集めて海外の金持ちに売り飛ばす現代の人さらい

ブランド好きな女子大生をバイトに雇って海外の金持ち・女奴隷がほしい富豪たちに売り飛ばす。巧妙な誘い文句で若い女性を集めて海外に売り飛ばす現代の人さらいはどのような手口で集めているのだろうか。

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子供のころ、よく親に言われた。
「暗くなると人さらいが来るから早く帰っておいで」
髪を振り乱し鬼の形相をした大男を思い描き、夕方になると走って帰った記憶がある・その、想像をするしかなかった人さらいが、いま、目の前にいる。
「いや、そう呼ばれても仕方ないんだろな」
黒田雅巳氏(仮名、45才)が、気弱そうに笑った。巧妙な誘い文句で若い女性を集めて海外に売り飛ばす現代の人さらいは、地味なスーツを身にまとったごく普通の中年男性だ。鋭い目つきをしているわけでもなければ、人目を引く体格の持ち主でもない。この取材が済み、喫茶店の前で別れてしまえば、どんな顔をしていたのか思い出すのも難しいだろう。
日本人の女性を売買するルートがあるとは、聞いたことがある・海外旅行先でハネを伸ばした女性を誘惑して家に連れ込む.確か、そんな手口だったか。
「他人が何やってるか知らないけど、オレはそんな複雑なコトやってるわけじゃないんだ。これと思った子を集めてフローカーに引き渡すだけ」
淡々とした口調で、現代の怪談が始まった。

求人誌に広告を打ち、ブランド好きな女子大生をバイトに雇って彼は買い付けに世界を飛び回る。
最初は香港とかシンガポールとかの近場で買い付けたんだけど、アジアじゃ偽造品が紛れ込んだりするんだ。どこで買ったかが重要で、そのブランドの本店に行かないと買い取る方も叩いてくるからさ。で、フランスとイタリアを中心に買い回って、儲けもそれなりに出るようになった。そしたらあるとき、愛人を紹介してくれないかって話がきたんだ。
オレが女子大生なんか使ってんのに目をつけたんじゃないの。
詳しく言えないけど、バブルのころに一緒にいい目をみた仲間でさ◎香港の金持ちが日本人の女の子を囲いたいって言ってるから世話してくれないかって。
不動産なんかやってるとよくある話なんだ。接待代わりに女を使って土地や家を買ってもらうなんてザラにあるし、向こうから「いい女いないか」って頼まれたりもする。で、ああいいよって、気軽に引き受けたの。無責任って思うかもしれないけどスタイルがよくて、髪の長い、ちょっと古風なタイプ。ほら、外人が思い描く大和撫子ってそんな感じじかな。それで現地の要望どおり3人をチョイスした。
「この仕事はイリーガルな要素もありますので絶対にご家族や友だちに言わないでください。あなたから情報が漏れて失敗した場合は弁償していただくことになります。友だちと温泉に行くとでも言っておけばいいんじゃないですか」と。
オレは自分が連れてった女の子たちが、どういう目に遭うのからないんだよね。別々のホテルで待ってる彼女たちをバスまで運んで、それが走り出したらオレの役目はお仕舞い。後は、現地のブローカーが世話してんだ。
1回だけ女の子たちとは別にその屋敷に行ってみたことはあるけどさ、そこにはオレだけじゃなく、4,5人のブローカーがさらってきた子が集められてた。金髪のロシア人の少女もいれば、エキゾチックな顔立ちのインド系もいたな。

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みんな不安そうな様子で、誰も一言もしゃべらないんだ。ってのもさ、香港の富豪ってのは日本の規模じゃ考えられないほど金持ってるだろ。で、敷地もバカでかい上、私設軍隊っていうの、自動小
銃なんか抱えたやつが至る所にいるわけ。あれじゃ逃げようにも足がすくんで動けやしない。
オレはへタな感傷なんか持ちたくもないからそれ以上のことは見なかったけど、何でもそこで女奴隷がほしい富豪たちお抱えのブローカーが、牛かなんかの市みたいに1人ずつ前に引き出して品定め
して競り落とすんだって。実際に女の子を買う富豪は簡単にはそんなとこに出てこない。信頼する仲介人を出して、好みを熟知してる彼が競り落とした子の中から好きなのを選ぶらしいよ。
うん、女の子の気持ちなんか考えたことないけど、まあ、オレのこと恨んでるんだろうな。見も知らぬ外国人に買われて、一生自分の家にも帰れないんだから。
オレに言わせれば悪いのは自分。金やブランド品がほしいって欲をつっばらかした自分を悔やむことだね。自業自得とまでは言わないけど、おいしい目をみようってオレんとこに来たのは自分の意志なんだからさ。本当だろうか。こんなことが現代で、しかも日本人相手に行われているのだろうか。
例え自分から旅行に行くと家を出たとしても、若い娘が行方不明になれば家族は大騒ぎする。同時期に3人も消えれば大事件だ。ましてや、香港の富豪の家でセリ市が行われているなんて、どうにも
信じられない。そんなこちらの不信感を察したのか、黒田氏がカバンの中から1枚の写真を取りだした。

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「あ、証拠になるかわかんないけど、これ持ってきたんだ」
見れば、香港を象徴するド派手な看板が重なりあった町並みの中で、20才前後と思われる女性が3人、笑顔で写っている。どこにもいそうというか、同年代の中では幾分、おとなしめの子たちである。顔立ちは美人だが、化粧も地味なら髪型もパーマっ気のないストレートヘアだ。黒田氏が、去年、香港に連れて行った女の子たちだという。
「この後すぐバスに乗っけちゃったけどね」
そう言われれば、さして親しくなさそうに3人の間にはそれぞれ微妙な間隔が捲いている。それがなんともリアルで、全身に鳥肌が立った。
松たかこに似た右端の子が、照れたような顔でピースサインをしているのが浦々しく胸に突き刺ささる。いったいこの3人は、いまどこで何をしているのだろう。オレだってこんな仕事が本業ってわけじゃない。やるのは1年に1回、3人ずつ。これを5年やってきたから、トータルしても15人ぽっち。そんな数の女がいなくなれば騒ぎになるって言うけど、そうはなってない。ってのはさ、やるときは1つの都道府県とかじやなく、もっと広いエリアで募集かけるから、そうそう何人も消えたなんて誰も気つかない。
で、さらった子の親が必死で探してもさ、オレは香港に行く前にマンションや電話は解約するし、まして本名なんか言ってない。

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事件に巻き込まれたって証拠もないから警察が積極的に動くはずないし、よくよくコネがあって調べが入ったとしても、香港に行ったってのがわかればいい方で、そこから先の足取りなんか辿りようもないんだ。それにいままでずっと飛行機を使ってきたんで、今年からはちょっと工夫しようかって計画もあってさ。ま、詳しくは言えないけど、長崎なら長崎のハウステンボスに現地停泊して、そっからバスで港へ連れてってプレジャーボートに乗せる。
それで沖に停泊してる富豪のチャーター船に連れ込んだらどうなる?日本の筈察にはお手上げでしよ。ま、これは例えばの話で、いまパッと思いついただけのこと
だけどね。
結局、オレが組んでる富豪ってのは、それだけのことができる人たちなんだよ。彼らは香港とかアジアだけじゃなく、世界の経済を動かしてるって言っても過言じゃない人たちだからさ。
最初は何でオレなんかに声をかけてきたのか不思議だったよ。ま、結局は現地の不動産フローカーにコネがあったのもあるけど、オレが一匹狼で何の団体にも属してないのが最大の理由。
香港マフィアやヤクザのルートを使えば人をさらうなんて簡単にできるんだろうけど、横のつながりがあるから表沙汰になる可能性が高い。オレ一人なら後ろ盾も何もないから、ヤバくなったら始末するのも簡単だしね。
最近わかってきたのは、彼らは日本人の女性を奴隷にすることで、昔の恨みを晴らしてるんじゃないかってことなんだ。富豪の大半は60過ぎのおじいさんたちで、日本語もベラベラらしいんだ。つまり、日本がアジアを支配してたときのことを覚えてるわけ。
家族や親戚、もしかしたら彼ら自身かもしれないけど、戦争の時に日本軍にヒドイ目に遭わせられた人が近親者に必ずいる。その怨念みたいな感情じゃストレートに表現できないから、こういう屈折した形で表してる気がするんだ。考えると深いよ。さっきは女の子たちのことなんか考えないっていったけど、あれはウソ。ひょんなときに、さらってった子たちの顔が思い浮かんだりするんだ。
「ああ、あのコは母1人子1人って言ってたな」とかね。どうしてるかな、ぐらいは考える。
けど、こればっかりは誰にもわからないよ。運良く蝶よ花よって大事に扱われてる可能性もあるけど、飽きて捨てられて、想像もつかないような目に遭ってるのかもしれないし。
だって、彼女たちがセリ市にかけられた時点で自分の運命を考えて大人しく言うことをきけばいいけど、もし逃げようとしたり、生意気な態度を取ったりしたらどうなると思う。たぶん、無事じゃいられないでしよ。
それもさ、ひと思いに殺されてれば幸せな方で、生き地獄ってのもあるからね。