本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

酒に酔って暴行・強烈な後悔が襲ってきた初の留置所生活

オレは悪くない。正当防衛だー
去年の暮れのある日曜日。前夜からオレのアパートに泊まった悪友と、昼過ぎ近くにパスタ屋へ出かけた。それほど強くもないくせに昼酒はうまいとワインをやり、2時間ほどで2本が空になった。店を出たのが午後3時すでに泥酔状態だ。ちなみにオレは酒乱である

素面ではニコニコ穏和な性格が、一定量を超えるアルコールが体内に入ると凶暴な男に変化してしまう。そのときもそうだった。後ろでしつこくクラクションを鳴らす車にブッツン。振り向きざまサイドミラーを足蹴にした。

「なにやってんだコラー」

運転席にいた威勢のいいアンチャンが飛び出し、オレの胸ぐらをつかむ。上等じゃねーか、この野郎。強気モードのオレは怯まず右ストレートを繰り出した。それも2発だ。モノ凄い目つきで脱みながらアンチャンが携帯で110番へ通報と、ほどなく自転車の警官が駆け付け、そのまま近くの交番へ連れて行かれた。

「幸い車もこの人も傷ついてないし、酒の上のことと謝って示談した方がいいよ」

話しあいもクソもない。オレが悪いのは誰の目にも明らかなのだ。人の良さそうな警官が説得する。が、オレは酔っていた。

「肩ぐらをつかまれたから殴っただけで、立派な正当防衛だ」と理屈をこねた挙げ句、「こいつは示談金目当ての当たり屋だ」と相手をおこらせる。アンチャンが

「示談なんかしない」と言い出したところでパト力ーに乗せられ、警察署の取調室に場所を移した。

入ったのは、確か午後5時ごろだったと思う。

「あのね、ここで謝んないと暴行罪ってことで逮捕されちゃうんだよ。もし示談するのが嫌でも、素直に罪を認めれば書類送検で済むんだ。裁判所から出頭命令が来るだろうけど、罰金を払えばそれで終わりだからね」

年輩の刑事かまるで小さな子供に話すように説明してくれる。だがオレはまだ酔っていた。刑事の言葉を理解しようという気など、さらさらなかった。実はこの辺のことはあまり覚えてない。

「処置ナシ逮捕」

鋭い刑事の声に、現実に引き戻された。腕時計を見れば午後9時。警察署に入ってすでに4時間がたっている。思えばこれが最後のチャンスだった。しかしオレは

「捕まえるなら捕まえてみろ」と暴言をはき、そのまま暴行罪で逮捕されてしまう

「容疑者となってまずやらされたのは、両手10本の指紋と掌紋の採取だ。黒いインクをベットリ付け、指を回転させ第一関節から上の指紋を紙に写す。その後は3点写真の撮影。正面と左右から横顔を撮られた。

「じゃあ、行こうか」係官がオレの両手を前に回し手錠をかける。ガチャ。ここで初めて〈やっちまった〉といつ後悔が心をよぎった。留置所のフロアでは、私物の留置が行われた。ボケットのサイフと百円ライター、それに腕時計ぐらいしかないが、係官はビデオ会員証や銀行カードの1枚ー枚までを紙に出し、オレが了承のサインをする。着ていた服も脱ぎ、またサインだ。
知らなかったが、留置所にいる間は下着や靴下まで貸与品に着替えなくちゃならないらしい。お気に入りのナイキも脱ぎ15とマジックで書かれたサンダルに履き替えた。以後、留置所内でオレはこの番号で呼ばれるの藍手続きが済むと薄い布団セットを渡され、放射状に並んだ房の「5号」に放り込まれた。中に何人かいるようだが、すでに時刻は午後11時過ぎ。とりあえず布団を敷いて横になる。それからどのぐらいの時間がたったのか。目を覚ますとすっかり酒は抜けている。

(うわ、ヤベエよ)ニ日酔いの頭をフル回転させ昨夜のことを思い出してみた。どう考えたってオレが悪い。交番で素直に示談しときゃよかったな

(そういや、刑事に会社への連絡を頼んだとき面倒なので暴行で捕まったっていってくださいと大口を叩いたっけ。やっば、体調が悪いっでことにすりゃよかったな。まさかクビになったりして)強烈な後悔が襲ってきた。
食事はそれほどマズクなかった
「起床ーこうだうだ悩んでいたところに、突然、明かりが点き看守の声が飛んだ。朝6時飛び起きた同房の連中のマネをしながら布団を畳み、所定の位置に積む。それが終わるとすぐに点呼だ看守が鉄格子越しに1人ずつ番号で呼んでいく。

「はい」「よし、5号室異常なし」

房ごとに部屋の外にある洗面所で洗顔と歯磨きをし、続いて部屋の掃除にとりかかる5号室にはオレの他、日本人と、どこの国のヤツかわからない外国人が2人いた

「毎朝、掃除機かける係とトイレ掃除を交代でやるんだ。今日は見学してなよ」

m番と呼ばれていた日本人が気さくに声をかけてくるか、ゆっくり話してるヒマはない。
それにしても、いつまでここにいなきゃいけないのかな。確か、警察の取り調べは48時間だったっけ。床に座ったままボンヤリ考えてると10番が話しかけてきた。

「あんた、ナニしたの」「そっちは?」

聞けばこの男はカード詐欺の常習で、何人かと組んで1千万近い金を詐取したとか。すでに裁判も始まり1カ月以上留置所で暮らしているそうだ。

「それに比べりゃあんたは罪が軽いからすぐ出られるよ。暴行じゃせいぜい2泊3日か3泊4日の罰金刑じゃないの。けど、10日間の拘留延長が付くかもしれないから弁護士を頼んで示談した方がいいかもね」

え、そうなの。急に不安になり、以前、借金を任意整理してもらった弁護士さんを呼んでもらうよう看守に伝える。12時。コッペパン2つにジャムとマーガリンの昼メシだ。自腹で牛乳1パックを買った。それが済めば午後も特に予定なし。試しに2人の外国人に話しかけてみるがチンブンカンプンだ。10番が、カード詐欺で捕まった中国人と、金庫破りのぺルー人だと教えて<れた。

2人男とも不法滞在者で、容疑が固まり次第強制送還されるらしい。その後もm番と世間話をするものの、名前や勤務先を口にするのはさすがに恐い。そこで当たり障りのない話題を選んでいたら、すぐに会話が続かなくなってしまった。検事に反省してる態度を見せれば大丈夫

「15番」お、弁護士が来てくれたようだ慌ててオリの外に出る。ドラマなどで見るように、真ん中が透明なブラスチックの仕切られていた。中に入るとすでに弁護士は仕切りの向こう側で座っている。

「ボクのこと掌えてますか」「お久しぶりですね」

苦笑しつつも優しい声だ。オレは安心して一気に事情をぶちまけた。とにかくいちばんの心配は拘留期間が延長されるかどうかだ。10日間も欠勤すれば最悪、クビも否めない。

「検事に反省してる態度を見せれば大丈夫でしょう。けど中野さん、罰金払えます?」この弁護士に出会ったのは5年前、働きもせず240万の借金を抱え困っていたときだ。サラ金に掛け合い半額に整理してもらったのだから、当然の心配だろう。

「いっさいサラ金の世話にはなってませんから」「そうですか」

弁護士は、アドバイスだけなので費用はいらないと帰っていった。弁護士と面会終われば、タメシまで、またひたすら時間を潰すだけ。寝よっと思っても、不安でとても眠れやしない。目をつぶって時間をやり過ごし、柱の時計を見ればまだほんの5分。まったを丸が遠くなりそ一つだ。そんなオレを気の毒に思ったのか、m番が読み古した週刊誌を貸してくれた。が、それで保つのは10分がせいぜい。こういうときに仕事の企画でも考えればいいんだろうが、とてもそんな気持ちにはなれない・横になってただ時間が過ぎるのを待つだけだ。
やっとのことで1時、タメシの時間だ。ほかほか弁当のような容器に白飯と野菜妙め、2フイのおかず、それに朝と同じみそ汁が付く。何でも、留置してる金を出せば好きな弁当を頼むこともできるらしいが、こんなとこでご馳走を食ってもウマクない。官弁を食い繁えると、19時の消灯までひたすらフルーな気分で過ごした。護送車の窓から外を見ると涙が…翌日は、いよいよ検察に行く日だ。看守から指示され朝メシ後、早めに蓮勲をして、預けてあった私服に着替える。自殺防止のためと紙でできた靴紐を渡されたのは驚きだった。

「15番」呼ばれて房の外に出ると、手錠と腰縄を付けられた。今日はこの警察署から5人が検察に行くとかで、1本のロープに全員がくくりつけられた形で連行される。まるで凶悪犯じゃんー暴行罪だろうが殺人罪だろうが処遇は一緒。となればいちばん、罪の重い人間を基準にするしかないのだろう。そのままの格好でしばらく待たされ、やっときた移送車に乗車。ー台の移送車がエリア内の警察署を回って検察に運ぶようで、中に入るとすでに5人ほどがベンチに座っていた。

オレたちも5人まとまったまま、逃走防止用の鉄のバーに腰縄が通される。もう、すっかり犯罪者の世界だ。マジックミラーになった窓から外を見るふりをして思わずこぼれそっになる涙を抑える。検察に着くと、いったん大部屋に入り、新たにグループ分けをされた上、留置所のような狭い待合室に通され員向かい合わせのベンチに数人ずつ座り、しゃべることも許されずひたすら順番が来るのを待つ。腰縄は解かれたものの両手錠は付けたまま。トイレもその格好のままで、唯一、昼にパンを食っときだけ片方の手錠を外してくれた。それにしても犯罪者の仕事は待つことと実感した。昼メシを食べる以外、することもなくただ座って待つ。

「××署の中野」と呼ばれたのは、2時過ぎのことだった。相手がケガしてたら会社はクビだった係官に連れられエレべータで上階へ。着いたのは警察署の取調室と同じような小部屋だ。真ん中に検事の机が置かれ、その横に書記官が座り、オレは机に向かう形で少し離れた場所に腰を下ろした。

「中野さんですね。どういういきさつだったんですか」

検事の質間に、神妙な態度で答える。

「胸ぐらつかまれカッとなったとはいえ、やはり手を出したのは間違いでした。ニ度とこのようなことがないよう一生懸命努力します」

検事はうなずくと、調書に書く文章をロ頭で読み上げていく

「午後4時ごろ-・・という事態に腹を立て××を数発殴り…以上、間違いありませんか」

「はい。どうもすみません」と検事は初めて笑顔を見せ「酔っばらってやっちゃったもんはしょうがないですね」といった。

「でも、殴った相手がケガでもしてたら傷害で罪が重かったんですよ。ミラーが壊れてても器物破損罪がつくしね。そっなれば拘留が長引いたかもしれませんよ」

検事によれば、会社員の場合はクビにならないよう、なるべく拘留延長は付けない配慮をしてるそうだが、それにしても危ねー危ねー。パンチ力もキック力も弱くて命拾いしたぜ。もっとも、このまま放免というわけではなく、翌日、裁判所に出向いてから釈放されるらしい。まあと1泊ならチョ口イもんだ。全員の調べが終わるのを待ち、移送車で留置所に戻ってきたのが7時過ぎ。すでにタメシの時間は終わっており、1人接見室で食った。メニューは昨日とほぼ一緒だ。

戻ると10番が近寄ってきた。嬉しさ丸出しで報告すると「いいなあ」と10番。そうか、こいつはこれからも刑務所暮らしが待ってるんだものな。就寝前、看守に確認すると、明日の午後には釈放されるだろうとのこと。(ということは、月火と休んで水曜は半休か。それならクビはつながったな)

留置所3泊目の夜初めて熟睡できた。

罰金10万円に処す

最終日も起床から朝メシまではいつもと変わらず、預けていた荷物を持ったまま昨日と同じ手順で移送車に乗縄行き先は裁判所だ。略式とはいえ、罪の軽重を決めるのは裁判官の役員昨日、検事が作成した起訴状を元に裁判官が判決を下すのだ9車を降りるとそのまま係官2人に促され、裁判官の前へ。腰縄と手錠が解かれ、被出人席に進む緊張の一瞬だ。

「被告を罰金10万に処す」よかったあ。弁護士は「5万ー10万の間と言ってたから、まあいい方だろう。「ありがとうございました」と頭を下げ、部屋を出た。

罰金は後で振り込むのかと思ったら係官によればすぐに納めるものらしい。でもサイフの中には1万弱しかない。どうしよ2と窓口の担当者が言った。銀行にはあります?

「はい」「ではキャッシュカードをお持ちですか」
「ええ」「下ろしてきてください」「は」

なげなしの10万を引ぎ出す。戻って窓口に納め末ぜ、それで釈放だ。

オレがいた4日間は風呂時間がなし。裁判所から家に返りシャワーを浴びだとき、やつと体の奥から自由になれた悦びが湧いてきた。心配した会社の方も、お善めはなく一安心だ。いま思えば、最初に金を出して示談しときゃよかったと思う。3泊4日も留置所に収監され前科が付いた。もう酒だけは飲まないモいゃ、飲み過ぎに注意しよ。