最近では、ネットで集団痴漢を呼びかける輩も出現するなどエスカレートする一方だ。女子高生に痴漢をはたらいた後、駅のトイレに連れ込んで強姦に及んだ男が警視庁に逮捕される事件が起こった。
同じ年の娘を持つ、マイホームパパの鬼畜ぶりを追う。
金曜日の朝8時すぎ。新宿駅に向かう小田急線上り電車は、通勤ラッシュで身動きもできないスシづめ状態だった
ー人の中年男か、高校1年の佐藤ユ力さん（仮名、15才）の背後にピタリとくっつきやがて片手で彼女の尻をまさぐり出した。（えっ、チカン：)
男の手が下腹部に及んだことでユ力さんは確信したが、どうにも声が出ない。大勢の前で自分が恥ずかしい目にあってると告げるのは勇気がいるし、間違いだったらどうしようとの思いもある。選択肢は「耐える」しかなかった。ほどなくして電車は終点の新宿駅に滑り込んだ。
（……これでやっと解放される）
ホームに吐き出されながら、彼女はホッとしたに違いない。が、それは悪夢の始まりにすぎなかった。
乗り換えのため歩き始めると、先ほどの中年男が近づいてきたのだ。トスッ。いきなり腹部を殴られ、彼女の頭の中は真っ白になった。
「ちょっと来いー」
凄みのある声で片腕をつかまれ、そのまま改札を抜け、駅構内や地下通路を200メートルも歩かされた。こわはって下を向く女子高生と、その腕を持ち引きずるように進む中年男。この光景を気に留める人は誰もいなかった。
男は西口の地下駐車場に向かう階段を降りると、トイレに入った。近隣店舗のスタッフ以外はほとんど使わないような穴場で、入り口の近くに鉄の扉があり、新宿駅にこのような場所があること自体あまり知られていない。男はあらじめ行き先を決めていたようだ
「騒ぐなよ。騒いだらどうなるわかってるなっ」「……」
狭い個室の中で、ユ力さんは
ん底に突き落とされた。
男は短時間で欲望を吐き出し、何事もなかったようにトイレを後にした。途中で助けを求めることができたのではないかー。そんな疑問を感じる者もいるだろう。が、もともと大人しく真面目な性格で、恐怖に打ちひしがれていた15才にとって、その問いは酷だ。
ユカさんから被害届を受けた警視庁の捜査ー課と新宿署の刑事たちが駅構内の防犯カメラ映像を分析してみると、すぐに彼女と男か歩く様子を確認できた。
次は張り込みだ。日常的に同じルートを利用している可能性が高いとみられることから、朝の時間帯に小田急線や新宿駅を回り、その男を探し出す作業が始まった。
「アイツだー間違いない」
やがて男は、プ口の目に射抜かれ見つかった。しかし、すぐに刑事たちは動かない。人定作業など外堀を埋めるのが先だ。数日間の尾行によって詳細が明らかになってきた。会社員の田所（仮名、49才）。東京都町田市で、妻と高校生の娘と3人で暮らしている。
「田所のヤツ、自分の娘と同じくらいの人を毒牙にかけやがったのかー」
「絶対に許せませんね。奥さんや娘だってかわいそうですよ。一家の長が強姦魔だなんて知ったらどうなるか・・」
「力ミさんとうまくいってねえのかな。まあ、だとしてもフーゾクでも何でも他にはけ口はあるだろうに」
捜査関係者などによると、田所は85年に日本大学法学部を卒業。福岡にある民放テレビ局の子会社のコンピューター関連会社に勤務し、課長まで出世したが、横領間題が発覚して退職している。
町田市内に転居し、中国系の会社に再就職。だが「一身上の都合」で退職し、都内のコンピュータ関連会社の営業マンになった。目まぐるしい動きだが、何があったのかは不明だ。住まいも小田急線町田駅から徒歩十数分の賃貸マンションに変わった。家賃は12万円で3LDK。ダックスフントを飼い、周囲には幸せそうな家にしか見えなかったという。
「旦那さんは中肉中背で優しそうな感じですよ。いわゆるマイホームパパっぽい雰囲気です。そんないかがわしい事件を起こすような人にはとても見えませんでしたけど。何かの間違いじゃないんですよね？」（近所の住民）
ちなみに田所が犯行に及んだのは、このマンションに転居した翌日のことだった。どんなストレスを抱え込んでいたのだろうか。
痴漢をしているうちに性欲を抑えきれなく
場面を捜査現場に戻そう。刑事たちが田所の行動確認を続けると、意に反して驚くべきほど図太い神経であることがわかってきた。
「おい、ちょっと見てみろよ。野郎、また獲物を物色してやがるぜ」
「味をしめたんですかね。視線は常にオンナを追ってる感じですよね」
「明らかに女子高生の多い車両に乗り込もうとしてやがる。よくもまあ平然と…。仕事の様子も普段と変わらねえしうたくどこまで図々しいんだよ」
「どうしますっこのまま泳がせて痴漢のゲンタイ（現行犯逮捕）っていう手もありますけど」
「うーん、そう都合よくいけばいいんだが、また被害者が出ちまうのも問題だ。上と交渉して一刻も早く身柄を引っ張らなけりゃダメだな」
「そうですね、さっさとフダ（逮捕状）を請求しましょう。奴がこっちの動きに気づいて高飛びでもしたら厄介ですしね」
