本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

新宿ラブホテルの浴槽で聞いた奇妙な声

一緒に年を越せる女のコを探して12月31日夜。新年まであとわずかとなった渋谷で、僕は路上ナンパに精を出していた。学生時代の友人数名と飲み、店を出たのが11時過ぎ。二次会には行く気にならなかったが、そのまま帰るのも物足りない。それならばと、一緒に年が越せる女性を探し、街をさまよい出したのだ。大晦日とあって、街は恐いほどの人出だった。

女性も歩いている。が、いかんせんー人のコが少ない。大半がカップルか友人連れだ。それでも、数時間のうちに20人には声をかけただろうか。どこかでお茶しない?

時間あるなら付き合わない?僕は半ば意地になっていた。いつのまにか年が明け、空が白み始めた。時計はすでに6時を回っている。そろそろバカなことはヤメて帰ろうか。ハチ公方向へ歩き始めたそのとき、僕の目にー人の女性か目に入った。髪の長い子で背が高い。ルックスはアメリ力の女優に似ている。好みとはかなりズレているが、躊躇はなかった。

「時間があったら、付き合わない?」

彼女は一瞬の間の後(ナンバが成功するときの独特の間)

「友だち来ないからいいや」と、笑みを浮かべながら僕の差し出す手を握った。
渋谷のホテルはどこも満室で、僕たちは新宿に向かった。先ほど出会ったばかりの2人が、ただセックスのためだけにわざわざそこまでする。その行為が、より僕を興奮させた。歌舞伎町のホテル街を歩き回り、ようやく空室のランプが灯るー軒を見つけた。ずいぶん地味な建物だが、この際どうでもいい。一つしか残っていなかった「空室」へ入り、まずトイレへ。中は奥に浴槽、洗い場、洗面台、便器の順に並んでいた。

用を足しながら辺りを見回す。目の前の洗面台の鏡の前にお約束"消毒済"と書いた紙でくるんだガラスコップが2つ。何の変哲もないユニットバスだ。僕と入れ替わりで、彼女かトイレに入った。そのときである。

キキキキーーーーー

妙な音が鳴り響いた。

キキキキーーーーー

音はどんどん大きくなる。たまらずフロントへ電話した。

「あ、それじゃすぐ別の部屋を用意します。」

苦情を言うとフロントのおばちゃんは、どんな音が出ているのかとも聞かず、部屋を替えると言う。僕はその対応を特に気にも留めなかった。とにかく、一刻も早く逃れたかったのだ。

「部屋すぐに替えてくれるって。けど、なんでこんな音が」

そう言って、彼女を見ると、顔が真っ青だ。両手に口をあて、大きく目を見開いている。

「気持ちの悪い音じゃない?女の悲鳴に聞こえる。気が狂ったように泣き叫ぶ女の声」

バ力な。これはどう考えても何かに共鳴して鳴っているという感じだ。配管が共鳴している音だ。単なる故障なのだ。女の悲鳴だなんて、ヤメてくれよ。僕はもう一度フロントに電話をかけた。

「まだでしょうか。音がうるさくて仕方ないんですが」

すると、さっきは聞かれなかった質間か返ってきた。

「どんな音なんでしょうか」

「配管が故障してるんじゃないんですか。とにかくもの凄い音なんですよ」

「そうですか。あと、5分少々お待ちください」

浴槽の緑の上に何かが乗っている気分転換のため付けたテレビで正月番組を見ていると、異変が起き始めた。テレビを付けても変らず鳴っていた音が、少しずつ小さくなっていたのだ。ゆっくりとゆっくりと小さくなっていき、そして、事切れるように音が止んだ。思わず僕は彼女と顔を見合わせた。

「とまったね」

「うん」

急激に彼女が欲しくなった。トラブルに遭ったせいで、なおさら抑えきれないほどに、感情が押し寄せてくる。フロントに部屋は替えなくていいと伝え、このまま押し倒してしまおうか。そう思いながらも、音のしていたトイレのことは気にかかる。何だったんだろうなあ

僕らはもう一度、ユニットバスの中を見てみようと扉に近ついた。ラブホテルには何回も泊ったことがあるが、こんなことは初めてだ。あとで、友だちに話す笑い話にでもなるだろう。そんなことを考えながら、軽く苦笑しながら2人で扉を開け中を覗いた。背筋が凍りついたーユニットバスの正面、一番奥の浴槽の縁の上に何かが乗っている。

ー髪の毛だー

人間の、おそらくは女の髪の毛。ちょうど手の平の大きさ程度のかなりの量で、しかもぐっしょりと水に濡れている。その黒い髪の毛が、正面の浴槽の縁にべったり貼り付くように乗っていたのだ。
僕らは、2人ともー回ずつトイレを使うためにそこに入っただけ。シャワーなど使っていない。さっきまで、ここにはこんなものはなかった。間違いない。

「出よう」僕はそれだけ言い、怯える彼女の手を引っ張り部屋へ出た。待合室にいた、1組の力ップルが、びっくりしたようにこちらを見ていたのを今でも思い出す。

★あの音、あの髪の毛は何だったのか。それは今もわからない。が、今にして思えば、最初にフロントに電話を入れたとき、状況も聞かずに「すぐ部屋を替えます」とすぐに答えたということは、おそらく前にも同じようなことがあったのではないか。新宿ホテル街の歴史は長い。その中で、事件が起きていたしても何ら不思議じゃない。