本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

出会い系規制のきっかけ・レイプを装った女子中学生殺人事件

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兵庫県神戸市兵庫区の六甲山中にある烏原貯水池は、公園施設が整備された市民の憩いの場だ。ことに周囲の木々が色づく秋は、一年で最も美しい季節である。

一九九五年二月二日のタ方、近くに住む農業の男性(六二)が愛犬を連れ散歩に出かけた。いつものコースを辿り、人通りが少なくなった山中に入ったところで首輪をはずす。と、突然、遊んでいた犬が道路脇の石垣を駆けのぼったかと思うと途中で立ち止まり、降りてこない。

「おーい、どうしたんだー」
声をかけても激しく吠えるばかり。男性がいぶかしがりながら石垣を上がると、目の前の側溝に血まみれの人問が転がっていた。髪をポニーテールにしていることから女性のようだ。「た、大変だァーー」

男性は石垣を駆け下り、山道を走って人を探した。と、そこへちょうど一台のタクシーが通りかかる。

「おーい、止まれえ。あそこで人が死んでるんだ。警察を呼んでくれ」

「え、何だって?」

運転手の110番通報を受けた県警本部は直ちに管轄の兵庫署に入電。すぐさま署員が急行した。

被害者は、左こめかみ付近から出血し、仰向けの状態で右手を胸に当て死んでいた。半袖の白いブラウスは第ニボタンまで外れ、ブラジャーを着衣しているものの下半身は丸裸。おまけに側溝の底や縁には五メートル以上にもわたり多量の血痕がこひりつき、あたかもレイプ殺人を連想させる。

兵庫署の捜査員は周囲にテープを張り巡らして現場を保全するとともに、県警の捜査一課に応援を要請。同日付けで兵庫署内に八〇名体制の捜査本部が設置されることになった。

さっそく鑑識による捜索や、周囲へのきき込みが始まる。が、いかんせん奥深い山の中のこと。目撃者どころか遺留品も出てこない。しかし、何かが変だ。現場は石垣と雑木林しかない山奥である。周辺はゴツゴツした御影石で被われ、どう考えてもレイプには不向きな場所だ。ブラウスも血痕以外の汚れがないため、別の場所で殺され運ばれた可能性も否定できない。

そして、それを裏付けるかのように、遺体が横たわる地点から別方向に向かって歩幅間隔の血痕が点在していた複数犯の可能性もある。ただ、そう考えると付近に残された争ったような形跡や、被害者の両足に付着した土、多数の擦り傷が説明つかない。

「こりゃ、司法解剖してみないとわからんな」

捜査員は、翌日を待った。
横浜に住む少女がなぜ神戸で殺されたか

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二月一二日、神戸大学医学部の司法解剖で、死因は「絞殺による窒息死」、死亡推定時刻は二四時間前後、強姦の形跡は認められないと断定された。さらに顔が変形するほど殴られ、左こめかみ付近が陥没骨折していることも確認。傷の生活反応から、暴力を
受けた後に絞殺されたものとわかった。

捜査本部は、血痕の状況から死体発見の前日、現場で殺害された可能性が高いとみて不審な人間や車両情報を求め検問を実施する。と同時に、現場が土地勘のある人間しか入らないような山中であること、レイプがカムフラージュで、被害者が真正面から鈍器のようなもので殴られていることから、犯人は地元の人で、なおかつ顔見知りの可能性が高いと推定し、被害者の身元割り出しを急いだ。

『身長一五九センチ、体重四九キロ、血液型は0型。下の奥歯の左右1本ずつに金を詰めた治療痕があり、歯の成長程度から一二~一八才の若い女性であると思われる』マスコミに被害者の特徴を公表すると事件後約70件の問い合わせが寄せられる。

一方、警察も関西方面で捜索願が出ている少女たちを中心に該当者を探した。被害者の身元は死体発見の四日後になって初めて判明する。現場とは遠く離れた、神奈川県横浜市に住む中学1年生・沢木有香さん(仮名、一二才)。遺体の指紋と歯の治療痕が決め手となった。

家族によると、有香さんはニカ月前「学校に行ってくる」と制服に通学カバンを持ち家を出た。が、担任の先生の連絡で学校をズル休みしたことが発覚。タ方、電話してきた有香さんを叱るとケンカになり、それ以後、戻ってこないという。

夏ごろより男友だちからの電話が増え心配していたところでの娘の家出。両親は、地元の神奈川県警に捜索願を提出していた。

「娘は小遺い程度のお金しか持っていなかったはずなんです。いったい、どうやつて神戸まで来たのか…」

母親は、愛娘の変わり果てた姿に泣き崩れた後、捜査員に疑問を投げかけた。

「神戸に知人はいませんか」

「いないはずです。親類もいないし、家族で旅行したこともありません」

所持金も持たない横浜の中一少女が、なぜ縁もゆかりもない神戸で死んでいたのか。遺体で発見された彼女が着ていた白いブラウスは家出時と同じ夏用の制服で、何度か洗濯した形跡が残っていた。恐らく彼女には家族も知らない交友関係があり、そこに身を寄せるなどして過ごした後、殺されたのではなかろうか。

「被害者が生前、どこでどうやって生活していたのか解明する必要がある」

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捜査本部は横浜に捜査員を派遺、有香さんの知人らに聞き込みを行った。と、数人から有香さんが行方不明になる直前、横浜市保上ケ谷区に住む二一才の男性と付き合って
いたとの情報が寄せられる。何でも彼女が八月に九州へ旅行した際、知り合った相手らしい。

警察は、さっそくその男性にコンタクトを取るべく保ケ谷の自宅を訪れる。が、当人の姿はない。何でも有香さんの遺体が発見された前後から姿が見えなくなったらしい。捜査本部はにわかに色めき立った。一しかし、ほどなく彼が単に旅行に出ていただけで、事件とは関係ないことが判明する。
行き詰まりを見せ始き、家族が新たな手がかりを見いだした。
「そういえば丸山という男から電話がかかってきたことがあります」
「丸山、ですか」

「落ち着いた声で、有香の同級生とは思えませんでした」

「心当たりはありますか」

「いえ。でも、家出の直前にあのコと何か話し込んでいて、それからぷっつりかかってこなくなったんです」

「いつ頃からかかってくるようになったんですか」

「ちょうど有香が九州旅行から帰ってきた頃からです」

さっそく有香さん宅の電話の通信記録を調べたところ、九月上旬に「090」で始まる電話が着信していることが判明した。

「九州へは、どなたと?」

「転校した友だちのところへ遊びに行くと言って、一人で…。八月二〇日から五日間出かけたんです」

「その友だちというのは?」

「わかりません。特に聞きませんでしたので…」

共働きの両親は、かなりの放任主義だったようだ。学校に問い合わせたところ、ここ数年、九州へ転校した生徒は一人もいない。
「私たちはSMAPのコンサートを見に行ったと聞きましたけど…」

学校の友人たちは言う。

「彼女は香取慎吾のファンで、やっぱり本物はカッコよかったって、興奮しながら話してましたよ」

しかしこれも、警察の調べでウソであることが判明する。その時期、SMAPは大阪城ホールでコンサートを開いており、九州には渡っていないのだ。では、彼女は何をしに九州まで行ったのか。旅先で知り合ったという保土ケ谷の男性なら何か知ってるかもしれない。捜査員が尋ねると、男性からは意外な答が返ってきた。

「有香さんとは九州で出会ったわけじゃないんです。実は、ツーショットダイヤルで話したのがきっかけで」

「……」

捜査をすればするほど女子中学生の素顔はわからなくなった。一方、「090」で始ま
る電話番号は照会の結果、大分県臼杵市在住の加人者宅からかけられていることが判明した。丸山という苗字ではなかったが、この人物が何らかの事情を知っている可能性は高い。捜査員が大分に飛んだ。

少女は男の家から自宅に電話をかけでいた該当の家には、実年夫婦と二六才の息子・宮田義之(仮名)が住んでいた。宮田は定職もなく暴力団事務所に出入する札付きのワルで、婦女暴行と強姦未遂の前利持ち。おまけに数え切れないほどの道交法違反で免許取り消し処分を受け、大分県警にもマークされていた。

宮田の周辺で有香さんらしき少女を見たという証言でも出れば、参考人として事情聴取も可能だ。捜査員は勇んで近所への聞き込みを行う。が、果たして、住人からは何も有力な情報は得られなかった。
進展しない現地捜査とは裏腹に、捜査本部には、新たな情報が持たらされていた。実は有香さんは家出後、ときどき自宅に電話をかけてきており、家族の記憶と通信記録を照らし合わせたところ、その電話が宮田の自宅から発信されていたことが判明したのである。宮田が事件に関与していることはほぽ間違いない。さらに、宮田の実家周辺で聞き込みを続ける捜査員の報告で、宮田と神戸との関連も明らかになってきた。

「いまの両親は再婚で、義之は母親の連れ子なんですよ。で夫と母親が住んでたのが神戸だったんです」

「何だって」

「ヤツは一〇才まで現場の近くで暮らし、大分に引越したのは両親の離婚後、祖父母に預けられたからなんですよ」

「じやあ、土地勘があったということか」

「子供の頃、毎日のようにあの山で遊んでいたそうです」

状況は宮田が真っ黒であることを示している。

「よし、行け」

満を持して捜査員が宮田の自宅へ事情聴取に訪れる。が、当の宮田は

「オレは知らない」の一点張りでラチがあかない。状況証拠だけでは、仮に宮田が有香さんと接触していたところで、ソク殺人及び死体遺棄の容疑につながるわけではない。捜査員は大人しく引き下がるしかなかった。だが、宮田を徹底的にマークする方針を固めた捜査本部は改めて親族を事情聴取し、そこで有力な証言を得る。

宮田が「行くところのない女子高生だ」「可愛そうだからいっとき(しばらく)置いてやってくれ」と家族に説明、自宅に少女を住まわせていたというのだ。有香さんの食事は母親が作り、洗濯などもしていたらしい。

「ヤツから目を離すな」宮田と捜査本部の根比べが始まった。
しつような聞き込みと、どこへ行くにも四六時中へばりつく捜査員。先に根を上げたのは宮田の方だった。「神戸の事件は自分がやった。ちょっと来てほしい…」

深夜、取り調べを受けるうち親しくなった大分中央署の暴力団担当刑事に、宮田から電話が入った。
「犯人と思われる男から、泣きながら電話がありました」

この一報は、すぐさま神戸の捜査本部に伝えられ、大分にいた捜査員と電話を受けた刑事が宮田を臼杵署に同行。取り調べに対し素直に自供したため、二月五日未明、宮田義之を殺人容疑で逮捕した。

供述によると、宮田と有香さんは、八月初めごろツーショットダイヤルを通じて知り合った。彼女の九州旅行は宮田に会うためで、五日間を一緒に過ごしたという。その後、両親との口ゲンカで家出した有香さんを横浜まで迎えに行き、車で大分の自宅に連れ帰り同棲。約ニ力月生活を共にしたものの、親に早く帰した方がいいと言われたことから歯車が狂い出す。二月九日タ方、「オレの生まれ故郷を見せてやる」と誘い、大分港からフェリーで神戸へ。翌朝五時に到着すると、今度は電車を乗り継ぎ現場近くの鴨越駅へ向かった。

「帰るように説得したんですが、言うことを聞かないのでカッとなり、近くにあった石を顔面にぶつけました」

さらに手で首を絞めて殺害。レイプ殺人を装うためスカートと下着を脱がし、側溝の中に転がして鴨越駅から逃げたという。頭からすっぽりジヤンパーを被った宮田は、兵庫県警の捜査員に脇を固められ、JR臼杵駅から《特急にちりん》に乗せられ神戸に護送された。

『明るい性格だと思います。私に話しかけてみて下さい』

中学入学直後、有香さんがクラスメートに向けて書いた自己紹介文は、宮田の逮捕を待って教室の壁から取り外された。ちなみに、テレクラ及びツーショットダイヤルを規制する動きが全国に広まったのは、この事件がきっかけである。

妻と共犯で19才の女性も殺害

ところで、有香さんの遺体が発見される四日前の九五年二月七日、大分県臼杵市田尻の山中で山芋掘りの男性が、死後一~五年経過している女性の白骨死体を発見した。表向きは「身元不明」とされていたが、大分県警は九三年八月から行方不明になっている大分県佐伯市に住む元会社員・井上祐子さん(仮名一九才)との見方を固め、極秘に捜査。事件の重要参考人としてマークしていたのが、何を隠そう、彼女と交際していた宮田だった。

九六年一月下旬、すでに有香さんの件で起訴され、神戸拘置所に拘留されていた宮田の一元を大分県警の捜査員が訪れた。

「井上祐子さんについて聞きたいことがあるんだが…」

彼女は地元の高校を卒業後、自動車部品組み立て会社に就職したが、九三年八月二〇日に依願退職。まもなく自分の軽自動車に乗ったまま行方がわからなくなっていた。死体が発見されたのは、その二年ニカ月後のことだ。

「彼女と最後に会ったのはいつなんだ」「ええと、いつかな…」

あいまいな供述を繰り返す宮田に、捜査員が数々の証拠をぶつける。もはや宮田は逃げられなかった。自供によれば、ささいなことで口論となり、井上さんを自宅裏のコンクリート垣から突き落とす。そして這い上がってきたところに殴る蹴るの暴行を加え殺害。車のトランクに死体を乗せ、臼杵市田尻の崖下に投げ捨てたのだという。

「最初の妻が共犯です」

宮田は二六才にして、二度の離婚歴がある。九四年三月に高校を卒業したばかりのA子(一九)と結婚し、まもなく二人目の妻となる現役高校生だったB子(一八)とも交際をスタート。有香さんと知り合ったのは、この二人と別れた直後だった。大分県警捜査一課と臼杵、佐伯署の合同捜査本部は宮田の身柄を大分東署に移し本格的な取り調べを開始。そして、九五年一月二四日、宮田を井上祐子さんに対する殺人及び死体遺棄容疑で再逮捕した。(宮田の最初の妻・A子も死体遺棄容疑で逮捕されている)

宮田に懲役一五年(求刑二〇年)の判決がくだったのは、その一年八カ月後、九六年九月二日のことだった。
宮田は身長一八〇センチ、体重一〇〇キロを超える巨漢で、有香さんがファンだった香取慎吾とは似ても似つかない風貌だ。なのになぜ、若い女性が簡単に彼になついたのか。その答は公共料金の検引で彼の家を訪れていた人物の証言が物語っているのかもしれない。

「窓が半開きになってたんで中を覗くと、宮田と一人の女の子が注射をしていました」