本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

昼間からシャブを食ってはダラダラ覚醒剤密売グループのマンションに住む

当時、鳶職人をしていたオレは、独身で彼女もおらず、月に三度のへルス通いを何よりの楽しみとす
る、ごくごく平凡な男だった。
ミキコは、よく行く店に新人として入ってきた女である。男好きのするルックスで、気立ても上々。
聞けば、まだ18才の若さだという。
30代も半ば近くになり恥すかしい限りだが、何度か指名を繰り返すうち、オレは、この小娘にゾッコンとなった。
「頼む。付き合ってくれ。オマエのことが好きなんだ」
「またまたぁ。冗談きっいよぉ」
一度は軽くあしらわれたものの、簡単にあきらめぬのがオレのいいところ。その後も足繁く店に通い、
しつこく彼女に言い寄よった。
ミキコの口から腰が抜けるようなセリフが飛び出たのは、説得の甲斐あり、ようやくこちらになびきかけてきた、ある日のことだ。
「付き合ってもいいんだけどね。私も修ちゃんのこと好きだしぃ。ただ、ちょっと問題があるの」
「問題?」
「○○ってあるじゃん?私、そこの西って人の女なんだ…」
「イイッ」
首筋がピキッと凍った。
○○と言えば、この辺りでは知らぬ者のいない武闘派の暴力団である。何でも、西はそこで若くして幹部となった男で、半ば強引にミキコと付き合っているらしい。
「もうアイッと切れたいんだよね。修ちゃん、助けてくれる?」
「一え?…」
思わず絶句した。ミキコはあきらめたくない。が、西に知られ半殺し、いや全殺しされるのもまつぴらだ。
三日三晩考えた挙げ句、オレは一つの結論に到達した。
「一緒に逃げるか」
「一え?」
駆け落ちというほど大層なものではない。1年ほど別の土地に行って、ほとぼりを冷まし、その後はまた考えればいい。どうよ?
「う-ん、そうだね。2人で行くなら楽しいかもね」
1週間後、助手席にミキコを乗せ、オレは車を走らせた。とりあえずは西へ西へ。辿り着いた先は関西のX県だった。
「いいところじゃね-か」
「1Kだけどウチらには十分だよねえ-」
部屋は簡単に決まった。X県に着いた翌日樫情報誌で、好条件のマンスリーマンションを見つけたのである。それがプラザだった。
5階建ての立派な建物のわりに、1日1千500円。そのくせ閑静な住宅街のど真ん中という利便さである。文句の付けようのない物件だった.
「まあ、お入りなさい」
入居当日、管理人室へ行くと、異様な姿のオヤジが出迎えてくれた
真っ平らな角刈りにホホには大きな傷。どっからどう見てもヤクザ丸出しだが、口振りはソフトである。
オヤジは言った。ここに住む日本人は風俗店に働く女3人以外オレたちだけで、他はアフリカ、ブラジル、イラン、中国など、ほとんどが外国人。とはいえ、みな穏和で気のいい連中ばかりだから安心して暮らせるはずや
もちろん、素直に喜んだ。
さて住処の次は職探しである。
2人分の生活を支えるにはやはり高給である鳶職がいい。
幸い、近所でちょうど職人を募集しており、これまたすぐに決まった。明日からでも現場に出てほしいという。よっしゃ、これでなんとかやっていける。
こうして、新天地での生活が幕を開けた。日中は汗水流してせっせと働き、日暮れには晩メシを作って待つミキコの下へ。で、2人きりの団らん。仲良くハメハメ。
心底、オレは幸せだった。
 
しかし最初の兆候は、ある晩に現れた。
ガサガサガサガサ
ベランダでタバコを吸っていると、どこからともなく妙な物音が聞こえた。ふと眼下のゴミ捨て場を見下ろせば、暗がりの中にぼんやり男の後姿が。何だアイッ?
オレは部屋中を調べまくった。もしやあの野郎、この部屋に何かよからぬ細工を施していったのではないか。
悪い予感は当たった。なんとベッド近くにあるコンセントの内側に盗聴器が隠されていたのだ。
うぎやあああ、あのド変態め、もう我慢できん。ぶつ殺してやる
「てめぇ、いい加減にしろ!」
管理人室のドアを蹴飛ばすと、オヤジ、テレビの前で呑気にお茶をすすってやがる。
「ここ最近、ウチに何度も入ってただろ!ええ」
「まあまあ。そんな怒鳴らんでもええがな・それより、ちょっとこれ見てみ」
怒り狂うオレなど一切気にならぬかのごとく、オヤジは古い新聞のスクラップを取り出した。
「これ、ワシの若いころや。男前やろぉ?」
若かりしころのオヤジが、黒いスーツ姿を着て映ってる。けっ、ナニを気取ってやが……あれ?
オヤジの後に見えるこの家紋って、もしかして・・。 
「ワシ昔な、××会の幹部やってんで」 
「……」 
問わず語りにオヤジは語り出した。
自分は このとき、抗争相手の幹部を射殺し、大活躍を収めた
そして刑を務め上げた後、組織からもらったウン億の功労金でプラザを建物ごと買い取ったのだ、と。
記事には、見覚えのある角刈り頭とともに、事件のあらましが小さく掲載されていた。
マジかよ、オヤジ、人殺しなのかよ。 オヤジの目がギンと据わった。
「わかったか、ニイチャン。ワシはお前のようなボンクラか盾突けるようなお方とちゃうねん」 「……」
「ワシは好き勝手やるで。ゴミも漁るし、盗聴もする、参ったか、 ドアホ」 
数分後、オレは無言で管理人室を後にした。
 
2カ月、3カ月。足早に時が過ぎていく中で、オレたちはプラザに居座り続けた。なせこんな不気味なマンションからさっさと出ていかないのか。 
事実、変態オヤジはその後もウチから出るゴミを堂々と漁り続けていたし、何度か部屋に侵入した形跡も見受けられた。
ミキコなど、早くここを出よ~と毎晩泣きじゃくるほどだ。
だが、オレには出て行けぬ理由があった。実はそのころ、出来心からシャブに手を出し、注射器を手放せぬ体になっていたのだ。
以前、同僚の職人に勧められ、一度だけ試したのが運の尽き。もともと酒が飲めないぶん、よけいにその快楽にのめり込んだ。
そして、幸か不幸かプラザには、オレにシャブを与えてくれる輩が何人もいた。アフリ力人しかり、ブラジル人しかり、 イラン人しかり
特に、マンション2階と3階に住む6人のイラン人は近くを縄張りとする密売グループのメンバーで、上物のブツをいつ も市場の3割引で譲ってくれた。近所のよしみというヤツだ。 
建物の中で安全に売買でき、おまけに値段も格安。
こんな素晴らしい環境に慣れ、どうして他へ引っ越せようか。
やがて、オレは底無し沼に堕ちていく。
仕事を仮病で休み、昼間からシャブを食ってはダラダラと過こす毎日。
当然、家賃や食費に も事欠くようになった。 もちろん、ミキコだって黙っち ゃいない。 
「修ちゃん、何で?もういい加減にしなよ」
「うるせーなあ。それよりカネないか?ネタ仕入れなきゃ」
「もうないよ。ぜんぜん働いてないじゃーん」 
「じゃあお前が働けよ。最初っから風俗に行ってれば、タンマリ稼げてただろー」
ただ、シャブが欲しいがために、暴言を吐きまくった。ミキコが泣きながら部屋を出ていったのは、 それかり間もなくのことだ