本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

仰天の怖い話ショベルヵーでATMを根こそぎすくい上げ現金を抜き去る強盗事件

深夜。ショベルヵーでATMを根こそぎすくい上げ、内部から現金を抜き去る
大胆な強盗事件が続発している。

発生件数は増える一方で、大阪や名古屋など関西方面にまで地域が拡大しているという。
いずれの事件も犯人は捕まっていないが、オレは、ニュースを見るたび咳いてしまう。
「ここまで流行るとはなぁ……」
慨嘆の理由は他でもない。オレこそが、この手口を編み出した張本人だからだ。

強盗未遂で仲間が塀の中へ
初めて強盗を働いたのは7年前の春だった。
「なぁ岡崎。金、欲しいよな?」
小学校からの不良仲間である梶原(仮名)に誘われ、地元のゲーセンを襲撃。鉄パイプで窓ガラスをたたき割り、事務所の金庫を引っかき回して40万円を手に入れた。
以降、オレたちは4年間で数十件以上の強盗を繰り返した。窓から
押し入りへ店員をブン殴り、目撃者を張り倒す。いつも手口は同じだ。
19才になると、ATMがメインターゲットに変わった。なにせ札束の詰まった箱海道のド真ん中に置いてあるのだ。狙わない手はない。
当時のATMはチョロかつた。
バールを突っ込んでカバーを剥がせば、中身を取り出すのに3分とかからない。そのくせ警備システムは貧弱で、警備員が現れるまで15間も余裕があった。
半年で1千万は稼いだろうか。
毎晩のようにカジノと高級ソープへ繰り出L金が切れればATMを襲う。しばらくそんな生活が続いた。が、人生は甘くはない。ある日、何を思ったか、梶原が単独で貴金属店に押し入り、強盗未遂で実刑判決を食らってしまったのだ。
血の気が引いた。捜査で芋づる式にオレの名前が挙がったら……。
泣く泣くATM荒らしを諦め、友人のツテを頼って身を隠した。

3年後、オレの携帯に連絡が入った。
「やっと出てきたよ。軽く飲まねえか?」
二つ返事で指定の居酒屋へ向かうと、奥のカウンターで坊主頭の男が手を振っていた。
「お-う、岡崎!」
「梶原!元気そうじゃん」
「ワハハハハ。お前もな!」
が、気さくな雰囲気はそこでストップ。にわかに梶原の声のトーンが低くなった。
「なあ、岡崎。ATMってまだイケるのか?」
なるほど、これが本題か。ったく、懲りねえヤシだな。
「いや、全然ダメだろ。お前が塀の中にいた間に、対策が取られちまったよ」
「対策?」
ATM荒らしの件数が過去最高を記録した2年前、対策に追われた各メーカーは、本体に強力なプロテクトを施した。バールの侵入を防ぐためにスキ間を完全に密閉し、現金箱を厚さ5ミリの合金で覆ったのだ。
その効果はバッグンで、ここ数年で起きたATM荒らしの、実に80%以上が未遂に終わっている。
「つまり、犯罪の手口としては、もはや〔過去の遺物〕も同然ってワケさ」
「そうか…。まだ方法が残ってそうな気もすんだけどな……」
「ムリだって。ま、ATMごとかっさらうなら別だけどな。ワハハハハハ」
沈んだ空気を取り戻そうと、乾いたジョークを飛ばすオレ。
ところが、
「……それだ!」
「へ?なに?」
「ユンボなら出来るじゃん!」
「はあ?ユンボって、パワーショベルのことかよ?」
「おう。あれなら、どんなATMでも一撃だぜ」
「。。。。。。」
マジかよ◎

確かに重機のパワーなら、ATMを地面から引っぺがすのは楽勝だが、そんなバカげた
方法が通じるハズが…。
「バカげてる方がいいんだよ!あんなもんで強盗をやるなんて、普通は思わないだる」
…正論だ。でも、ユンボはどこで手に入れんだよ?

「そこらへんの工事現場に落ちてるじゃん」
「なに?」
「あんなもんは、簡単に盗めんだよ。後輩に詳しいヤシがいるから、実演してもらおうか?」
話は一気に具体的になっていった。ユンボなら確実に数秒でATMをブッ壊せるし、もし作業に手間取っても現場に置いて逃げればいい。ひょっとしてコレ、すげ1アイディアなんじゃねえか?

ユンボをバクるにはジョイントキーを探せ
翌日深夜、オレは梶原に付いて郊外の工事現場へ潜り込んだ。見れば、区画整理用とおぽしき数台のユンポが無造作に並んでいる。
「あ、初めまして。自分が実演させてもらいますんで」
紹介されたのは、山岡(仮名)というマジメそうな若者だ。数年前まで、地元の土建屋で重機を扱っていたらしい。
「んじゃ、さっそく見せてやってくれや」
「はい。え-と、ユンボをパクるときは、まずはジョイントキーから探すのが基本です」
山岡がユンボに近寄り、内部を調べ始めた。ジョイントキーとは、それ1本で、すべての重機が動かせる鍵のことらしい。備品管理がずさんな工事現場は少なくなく、座席の下やバックミラーの裏などに、放り投げてるケースは多いという。
指先にカギをつまんだ山岡が笑顔で戻ってきた。
「シートの後ろに転がってましたよ」
なるほど、言うだけのことはある。が、必ず見つかるって保証もないだろう。
「ああ。大丈夫っすよ。コイッで一発つすから」
オレの疑問に、山岡がニヤリと微笑み、リュックから電動ドリルを取り出した。ハンドル直下のカバーを外し、むき川しのキーシリンダーに2つの穴を開ける。そして、折り畳んだ針金をカギ穴に差し込みガチャガチャと引っかき回せば、なんと、見る間にエンジンが震え出すではないか。時間にして3分の早業だ。
「ね。このまま逃げちゃえばいいんですよ」
「ワハハハハ。どうだ岡崎。オレの言った通りだったろう」
梶原が自慢気に笑う。う-む、ここまでされては認めざるをえまい。ユンボ作戦、イケるぞ!間もなくオレと梶原は、ターゲット選択のため一帯のショッピングセンターを巡り始めた。
チェックポイントは3点あり、
まず第一は警備システムだ。
会社によって防犯意識が違い、
ATMの種類から攻略の難易度が判断できる。例えば、武圏士のマシンなどは警備会社への連絡がスムーズで、約3分でガードマンが駆けつけてくる。すなわち、ターゲットには向かない。
センサーが作動し警備会社へ通報がなされた後、警備貝が現れるまで何分かかるか。これを知るためには、実際に試すに限る。エァガンを窓枠の振動検知器に向け1発撃ち込めば、ガラスがBB弾を跳ね返した瞬間、警備会社に連絡が行く。あとは身を潜めて警備の到着時間を計ればいいのだ。
監視カメラの位置を調べるのも重要だ。特に天井に付けられたボウル状のレンズはクセモノで、赤外線を使った暗視タイプゆえ、深夜でも細部まで録画されてしまう。
が、これにも解決策はある。マグライトの電源部を強化、明るさを極限まで上げた後、レンズに向かってピカッとかざせば、3時間は機能が死ぬ。
この改造に加えて、青色の電球を取り付ければ完壁だ。夜でも目立たず、警備員に見つかった場合も目潰しとしても役立つ。
監視カメラはもう1つ、3ミリ径のピンホールタイプがATMの周囲に数個配置されている。一見難問だが、スプレー缶で塗りつぶせば問題解決だ。
第三に重要なのが、ATMの利用状況だ。奪ったはいいが金庫に10万しかなかったではシャレにならない。狙うは、金庫内に最も札束が詰まっている時期。言わずもがな、それは週末だ。
全てのチェックに1週間を費やし、作戦は決定された。決行は来週末の深夜2時。1キロほど離れた工事現場からユンボを盗み、その足でショッピングセンターへ向かう。

唯一未定だった見張り役には、梶原のツテを頼って、学生時代の後輩を呼んだ。川口(仮名)という名の不良だ。当日の衣装は自然さを装い、作業用のツナギと帽子を着込み、念のため下半身にコマンドナイフを仕込む。逆に怪しまれるので目出し帽は使わない。
また、作業中の会話はすべてインカムを通して行うこととした。
携帯電話は間違っても使わない。決行当日。深夜2時。オレと山岡は、某ショッピングセンターから1キロほど離れた工事現場にいた。一軒家の解体作業中らしく、小山の手前にユンボが置かれたままだ。
「じゃ、始めましょうか」
先日と同じ要領で山岡がキーシリンダーを引っ掻く。と、瞬く間にユンボが吃った。
「さあ行きましょう。重機なんで、あんまりスピードは出せないつすけど」
山岡の運転で、県道沿いにショッピングセンターを目指す。途中で数人のサラリーマンとスレ違ったが、単なる夜間工事と思われたらしく、気にする様子はない。
ノンビリしたドライブを楽しむ。駐車場の入り口に、梶原たちがすでに待機していた。「おう。ご苦労さん。それじゃ、行こう」
梶原の押し殺した声を合図に、各自が担当箇所へ。オレと山岡は再びユンボヘ戻り、川口が近くの高台から周囲の状況を確認。梶原は軽トラックで追走する。
駐車場を斜めに突っ切り、直線コースでATMへ。駐車場に響くキャタピラの音が妙に甲高い。緊張感で聴覚が鋭さを増したようだ。
シャッターの前に到着。
ATMはこの向こうだ。
「焦らずにいけよ」
再び梶原の指示が飛び、山岡が両脇のレバーを前後に揺さぶる。鉄の爪が、フルスピードでシャッターヘ・
ガキューンー.
激しい金属音が響くや、アクセルを踏み込む山岡。シャッターの抵抗に、ユンポのギアがギリギリと悲鳴を上げる。
ペコンッ
気の抜けた音を出しながらシャッターが奥へめくれ上がり、ガラスの破砕音が重なった。警備会社では、異常を示す赤ランプが点滅し始めたはずだ。
「順調だぞ。みんな、時計を合わせてくれ!」
梶原の指示を待つまでもなく、オレは腕時計のタイマーを5分にセットした。
2秒後、オレはユンポから飛び降りた。
段取り通りに赤外線をマグライトで焼き、振り向きざまにピンホールをスプレーで潰す。すべて、秒で片づけた。
すかさず山岡がユンボをATMの1メートル手前へ着け、アームを奥へ差し込む。続けて、赤子を抱きかかえるように、本体を地面から引き離しにかかった。
ベキベキベキッ!
カミナリのごとき作裂音に鼓膜を殴打されながらも、ショベルを下へ回して機械を一気にさらう。
ATM本体の警報機が鳴り響き、えぐれた地面から粉塵が舞った。

「イーヤッホウー」
「ギャハハハハ!」
山岡が歓喜の声を上げる。つられてオレも大爆笑だ。
「笑ってる場合じゃねえぞ、岡崎!ハコを支えてやれ!」
梶原の怒声に前を向くと、重心を間違えたのか、ATMがいまにもズリ落ちそうだ。ええいIクソッタレl
やけくそで、ショベルにタックルを一発。肩の痛みを必死でこらえつつATMの位置を整えると、なんとかアームがトラックの荷台へたどり着いた。
2分51秒。ユンボから飛び降りた山岡と一緒に、荷台をよじ登る。梶原が限界までアクセルを踏み込んだ。
「逃げんぞ!」
声を張り上げ、フルスロットルで駐車場を突っ切る。出口は目の前だ。
「ちょっと待て!入り口の前に誰かいるぞ」
「なに!」
見張りの大声に急ブレーキでトラックが止まる。3分型秒。即座にドアを蹴り開け、梶原が外へ走った。
フロントガラスを透かして見れば、確かに学生風の男が1人。梶原の姿に気づくや、慌てて携帯電話を取り出した。ヤベ!
「んだらぁごるぁ!」
意味不明の言語を叫びつつ梶原が学生風に突っ込み、顔面にコブシを叩き込んだ。
ゴールタイムは3分41秒。上出来だ。
犯行翌朝、新聞をチエックしてみたら30分後、戦利品を乗せたトラックは山道へ入った。
ゆるやかな坂を1キロほど走り、ハイキング用の平地を目指す。
4人がかりでATMを荷台から下ろした。電動ドリルで表面のカバーをこじ開け、ガスバーナーで合金を1ミリ単位で焼き切る。ジリジリとした時間が過ぎ、トビラが硬質の音を立てて開いた。
「うおお-.スゲエ!」
ギッシリ詰まった札束に、誰からともなく歓声が上がる。600万はあるだろうか。
「おつし、お疲れさん。帰って休もうや」
梶原の仕切りで儲けを均等に分けた後、軽トラックを捨てて徒歩で町へ戻る。タイヤの跡から素性がバレるので、自家用車の使用は御法度だ。
翌日、朝一番で新聞をチェックすると、3面に大きな見出しが見つかった。

重機でATM持ち去る600万
セーフー.思わず心の中で叫んだ。もし事件が報道されていなければ、すでに警察の内偵が入っている可能性が高いのだ。
しかも、現場に残したブッは全て盗品だ。犯人につながる証拠はドコにもないハズだ。よっしゃ、久しぶりにハデに遊ぶぞ!
かつての放蕩癖が再燃し、高級ソープで札ビラを切りまくってたら、大金は2カ月で泡と消えた。2度目のターゲットは、某デパートの入り口に置かれたCDに定めた。C
Dのほうが、大量の札束を抱え込んでいるはずという読みだ。
ターゲットの立地は、前回のショッピングセンターとほぼ同じ。
気がかりは、斜向かいの漫画喫茶が深夜まで営業してる点だ。
「別に問題じゃねえだろ。こないだみてえに、見られたらブン殴りゃいいんだよ」
「..…梶原、その考え方はヤバくねえか」
「なんでだよ。いままでもコレでやってきただろ!」
「・・・・」
もはや、初凹の緊張感は微塵もない。下見は1日で済ませ、大まかな監視カメラの位置を確かめただけで終了。前日の深夜まで酒をかつくらった。

かつて、ユンポ強盗ほど素早くATMを荒らせる手口は無かった。
実働時間で考えれば、最も効率の良い犯罪とすら言える。
そう思ったのはオレだけではなかったらしい。2週間後、全国紙のトップに見出しが踊っていた。
『重機でATM破壊相次ぐ数分の荒業』
記事によれば、オレたちが2度目の犯行に及んだ後から同じ手口のATM荒らしが続発。すでに総額2千万円以上もの被害が出ているという。目撃者の証言から、アジア系外国人グループの仕業と警察は見ているようだ。
「おい、新聞見たか!パクリ野郎が出たぞ!」
ほどなく、梶原が興奮気味に電話をよこした。どうやら襲われたのは、ヤシが3回目のターゲットに狙っていたATMだったらしい。
「くそ-。こうなりやガンガン仕掛けて行こうぜ!国道沿いの駐車場にポッンとATMが建っててよ・次はそこをやろうぜ」
「待てよ。そんなもん、目撃者が山ほど出るだる」
「うるせえな!駐車場にユンボがあったところで、誰も気にしねえよ!」「。。・・・・」
冷静さを失った人間と組み続けるほど、バカじゃない。オレはこ
のとき初めて足を洗おうと考えた。
数日後、さらにダメ押しの事件が起きた。オレのアパートに黒塗りの乗用車が張り付き、2人の男が、中から緊張した視線を投げてくるのだ。
ついに来たか、というのが正直なところだ。
「ワリイけど降りる」
3日後、オレは梶原にリタイアを告げた。
「なに言ってんだよ。まだ内偵と決まったワケじゃねえだろ」
「アホ!この手は、もう日本中の警察にマークされてんだぞ。引き際を間違えんな!」
「なんだぁコラー.テメエ、誰のお陰でここまで稼げたと恩ってんだよ!」
☆その後、梶原とはすべての連絡を絶った。未だヤシが捕まったというウワサは聞かない。