本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

暴力団のヤクザとホステスが寝るぐらい珍しくもなんともない

彼と出会ったのは2年前、銀座のクラブだ。
当時の私はその年の春先に長野県の片田舎から単身上京
し、銀座の新人ホステスとして忙しい毎日を送っていた。


閉店後は誰かのアフターとして焼き肉やカラオケに付き合い、
週に2度の同伴出勤日には夕方から豪華な食事をする。世間は
不景気のはずだったが、客はみ
んな金持ちで、周りはいつも賑
やか、活気に溢れているように見えた。


その男、島崎(仮名)は常連客の1人で、自称会社員。
著名な政治家や芸能人もよく来るその店の中では、ずいぶん地味目のおっさんだった。
銀座には「永久指名」という制度があり、いったんあるホステスのお客になると、その後どの女の子が横に付いたとしても、売り上げは元々のホステスの成果となる。

よく、○子ちゃんの客、○美ちゃんの客などと呼ぶのはそういう意味だ。
島崎は「ママの客」だった。まだ新入りの私が顔なじみになったのは、ヘルプとしてママの横にちょこちょこくっつき回っていたせいだ。
「この子、亜矢ちゃんって言うのよ、面倒見てあげてね」
「へえ、長野出身か。若く見えるな」
「はい、よろしくお願いします」
「まあ隣に座りな」
「はい、失礼します」

この不景気にもかかわらず高い金を落としてくれるお客様は、
神様のようなもの。しかもママの客とあっては、ニコニコと機
嫌を取るしかない。私にとって島崎は、他の誰よりも大事に扱
わなければならない人間だった。
そんなある日、彼が言った。
「来月、俺の誕生パーティがあるからおいでよ」
「あ、そうなんですか」
そんな会に参加する暇があれば、ゆっくり部屋で寝ていたい。
ここは失礼のないよう、適当に
あいづちを打ってお茶を濁しておくか。
ところが隣に座ったママが高い声を張り上げる。
「いいじゃな-い・亜矢ちゃん、行ってらっしやいよ」

お店の絶対権力者にこう言われて、誰が断れるだろう。
ああ、いい歳こいたオッサンが誕生パーティってか。ムサ苦し
い男が集まり、ケーキを囲んでクラッカーをパー、毛想像するだに気色悪い。そもそも、大人が誕生日を祝ってる場合か?

てっきり自宅に呼ばれるものと思っていたのに、なんと誕生パーティは神奈川県の某温泉旅館を貸し切って行われるという。
なんでまたそんなとこでと嘆きながら、私は電車とタクシーを
乗り継いで山奥の和風旅館へ向かった。
しかも到着してびっくり、怖そうな顔の男たちが大勢でお迎
えに出てくるではないか。
「苦労様です、ネエさん」
「は、はい」
「ネエさん、こちらです」
「。。。。。。」
膳の並んだ大広間で、私は島
崎と並んで上座に着席した。両
わきにズラッと並ぶ怖そうな人たち。普通の誕生パー
ティじゃないことはすぐにわかる。じゃあ何だ?社員旅行?
コンパニオンも混ざっての宴
会は賑やかに続く。女客は私だけ、全然おもしろくない。
「ねえ島崎さん、なんで私がネ
エさんなんですか?」
「そりゃ、みんな亜矢の名前を
知らないからだよ」
「そっかあ。でもあの人たちよ
り私のほうが若いんですけどね」
のんきな会話で時は過ぎ、そ
ろそろいいかと退席しようとし
た矢先、島崎がケロッと言った。
「もう送っていけないよ」
「え-!」
「酒も入ってるしさ。今日は泊
まっていけよ」
この夜に山奥の旅館から1人
で帰るわけにもいかず、ダダを
これてママの大事なお客さんを
怒らせるのもヤバイ。自然、そ
の日は島崎と一緒に寝ることに
なった。こりや、まんまとダマされたか。
不思議なパーティの内実は、寝床に入ってようやく明らかに
なった。彼の背中に歌舞伎役者
のイレズミが彫ってあるのだ。
どう見たってヤクザじゃん。
しかもアソコがボコボコと膨
れ上がっていては、何の疑いようもない。
「あの、これって…」
「なんだ知らないのか、真珠だよ真珠」
うっ、これが噂の真珠か!
ヤクザってマジで入れてんだ。
1,2,3…その数10個。こんなの気持ちいいの?
その晩、布団の中で私は、彼が暴力団の組長
だということを知らされた。ちなみに真珠チンチンは痛いだけだった。

なんでも買ってくれるしお出かけは運転手つき
この業界、客とホステスが寝るぐらい珍しくもなんともない。
実際、私もそれまでに2人の客に体を許した経験があった。
ただそれは、お得意様に嫌わ
れてはいけない、同伴出勤の相
手を確保しなければ、カッコイ
イからいいかな、といった色ん
な要因があってのこと。向こうは遊び、こちらは営業の一環、
それでうまく治まるなら万事オッケーというわけだ。
ところがこの組長、ただの遊びじゃなかった。奥さんのいな
い彼は、私と真剣に付き合いたいと言うのだ。
年齢が上で、職業はヤクザ。普通に考えりや、ご勘
弁願いたいところではある。マ
マの客を寝取っただなんて噂が立つのも困る。
しかし彼の強引さに、結局私は負けてしまう。ママも公認し
てくれたし、一人暮らしもそろ
そろ寂しくなっていた。後ろ盾、
というほどではないにしろ、頼れる彼氏がほしい時期だった。

ほどなくして、彼が住む4LDKマンションで同棲生活が始まった。組長との生活と
いっても、特別変わったことが
あるわけじゃない。1日のサイクルもいたって規則的だ。
過去に懲役の長かった彼は(な
にやら人を撃ったことがあるら
しい)毎朝8時に目が覚める癖
があり、朝食を作ってから私を起こす。
午後になって事務所に出かけると、私はゴロゴロ昼寝をして、
夕方からお店に出勤。深夜に帰
宅し、セックスしたりしなかっ
たりの後で就寝、という毎日だ。
彼が事務所で何をしているのかはわからない。小さな組らしいのだが(誕生会にいたのは関係者)、いわゆるシノギというやつが何なのかも教えてはくれなかった。
ただ、さすがに一国一城の主だけあってお金はたんまり持っていた。2人で買い物に出かけるときは運転手付きのベンツが送り迎えし、ねだってもいないのに高価な時計や洋服を買ってくれる。

「イタリアに連れて行ってやる」と、いきなりビジネス
クラスで飛び立ったこともあった。
面倒なのは、嫉妬心の強さだった。同伴出勤やアフターは駄
目、いっそのことお店を辞めてくれとまでグチグチとこぼす。
「彼女が水商売するのはイヤなんだよ」
「でも他に仕事ないもん」
「お金は渡すからいいだる」
「嫌よ、それじゃ愛人になっちゃうじやない」