本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

足立区の治安はやっぱり悪いのか?竹ノ塚や綾瀬危険な場所を歩いてみた

東京の足立区は、
23区内でもっとも治安の悪い土地と言われている。
 
この手の話題になると、歌舞伎町や渋谷
センター街といった繁華街も必ずその名は
挙がるが、そういった特定の街ではなく、
区全域で治安の悪さを指摘されるのは足立区だけだ。
 
生活保護受給者の比率が23区でトップだ
の、所得水準が低いだの、それを裏付ける
ようなデータも一応はある。
 
が、それ以上に足立区=アブナイとのイメージを植え付けているのは、たびたびこ
の地で発生する有名事件のせいだろう。
 
綾瀬の女子高生コンクリ詰め殺人事件し
かり、足立区首なし殺人事件しかり。小4男児が同級生を殴り殺すと
いう、トンデモ事件まで起きている。暴走族がらみやひったくりの報道が多いのもま
た、この地域の特徴だ。
 
さて、足立区のナマの空気とはどんなものなのだろう。
 
6月某日、午前。足立区最大の繁華街、
北千住にやってきた。駅を出たすぐのとこ
ろに、昭和チックな古い飲み屋が点在し、
それらの軒先で、顔を赤らめたオッサンど
もが黙々と杯を傾けている。いかにも〝ら
しい〞光景だ。
 
まずは情報収集といこう。適当な店に入
り、数人で談笑中のオッサン客に話しかけ
てみる。
「ちょっとお聞きしたいことがあって。足
立区ってよく治安が悪いっていうじゃない
ですか」
「へえ、そうなの?」
 
オッサンがとぼけた顔を向ける。
「でもまあ、言われてみれば確かにそうか
もねえ。昔からやんちゃなヤツが多いから」
「北千住だと、どの辺りにそういう雰囲気
ありますかね」
「北千住?ここは全然そんなのないって、
オニーチャン。近ごろは開発が進んで、す
っかり小ぎれいになっちゃったから」
 
そう、実は俺も来てみてつくづく感じた
ことだが、この北千住、意外と都会的なのだ。
 
オッサンやジーサンが昼間から酒をあお
る光景がある一方、おしゃれなカフェやレ
ストランもあちこちにあり、今どきファッ
ションのアカ抜けた若者やパリッとしたサ
ラリーマンも大勢目につくのだ。少なくと
も、駅周辺にキナ臭い雰囲気は感じられな
い。
 
隣にいた別のオヤジが口を開く。
「北千住なんか俺に言わせれば足立区の中
の世田谷だよ。荒川の向こう側に行ってみ
な。また雰囲気がガラッと変わるから」
 
荒川は足立区南部を横断する大きな河川
で、それを超えた北側には、昔ながらの足
立区の面影がまだ色濃く残っているという。

「やんちゃなところに行きたいなら、綾瀬
とか竹の塚とか西新井とか、あとは南花畑
とか、その辺がいいんじゃないの?
 
俺の知り合いで竹の塚に住んでるやつがいるん
だけどさ、なんか昨日会ったときも変なこと言ってたよ」
 
その友人曰く、つい最近、路上に停めて
あった自転車のサドルが大量に紛失する、
ちょっとした事件があったらしい。
「多分、ガキのイタズラだろうけど、あの
へんは大人でもタチの悪いのがウロチョロ
してっから、何とも言えないな。とにかく、
荒川を超えてみればわかるよ」
 
オッサンのアドバイスを受け、まずは綾
瀬に移動した。駅前はうら寂れた商業ビル
が建ち並び、ちょっと陰気な印象だ。
 
町へ繰り出してみて、気になることがいくつかあった。
 
ひとつは女性の喫煙者の多さだ。町中で
喫煙所を見つけるたびに一服しにいったの
だが、そこに居合わせるスモーカーの8割
が、必ず50代の派手なオバハンたちで占め
られているのだ。どういうことだ?
 
こんなの、都心ではまず見かけない光景なんだ
けど。
 
品のないオッサンたちも至るところで目
についた。道沿いのベンチで缶ビールを飲
んだり、歩きタバコしたりなんてのはザラ。
なかには禁煙マークの目の前でチェーンス
モーキングしながら、競馬談義に花を咲か
せるオヤジまでいたりして、マナーもへっ
たくれもありゃしない。
 
そして、これはやはりというべきか、ヤ
カラちっくな若者とも頻繁に遭遇した。ヤ
ンキー系もいればオラオラ系もありーのと、
あまりにもベタすぎて、かえって笑えてく
る。そうこうするうち、町の風景は商店街か
ら住宅街に変わっていた。目の前には信号
のない横断歩道があり、何気なくそこを渡
っていたら、ムカッとする出来事が。
 
パンパーン! 
 
左手からやってきた軽自動車がけたたま
しくクラクションを鳴らしてきたのだ。運
転手は20代とおぼしき若い女で、何やらイ
ライラした様子でこっちを見ている。え?
もしや、おれにどけと?
 
ここって歩行者優先だよね?
 
追われるように横断歩道を渡りきると、
そのままクルマはマフラーから重低音を出して走り去っていった。

くそ、なんて横柄な!
 
呆れ果てながら、たまたまそばにいたオッサンに話しかける。
「なんすか、アレ。ちょっとヒドくないですか?」
 
しかし、オッサンの顔はなぜかポカーンだ。
「なんで?アンタがトロトロ歩いてっからじゃねえの?」
 
なるほど、そう来るのか。何となく足立
区の民度ってやつが掴めてきたぞ。午後3時。電車を乗り継ぎ、次なる町、
西新井へ。
 
駅を降りて眺めた景色は、どこにでもあ
る東京郊外のソレと大差はない。駅前には
飲食店エリアの他に大型ショッピングモー
ルもあり、あちこちで幸せそうな家族連れ
を見かける点は、むしろ平和的ですらある。
 
しかし駅前をどんどん離れ、込み入った
住宅街の中に入っていくと、そんな印象は
一気に消え失せてしまった。
 
今にも倒壊しそうなアバラ家がたびたび
出現し、そのせいか町全体が昭和の時代に
タイムスリップしたかのような雰囲気を醸
しだしているのだ。
「コラ、やめろ!」ふいに、通りかかった公園から怒声が聞
こえてきた。何事かと視線を向ければ、園
内のベンチのところで、小汚いジーサンが
落ち着きなく立ったり座ったりを繰り返し
ている。周囲に大きなゴミ袋や台車を置い
てるあたり、ホームレスのようだ。
「どうかしたんですか?」
「いやぁ、あのガキどもがさ…」
 
ジーサンが遠くにいる子供2人を
指さした。背格好からして小1か小2くらいだろ
うか。2人はこちらを見ながら、何やらゲ
ラゲラと笑い合っている。
「アイツら、風船を投げつけてきやがって…」
「風船?」
 
見ればジーサンの台車の一部が水のよう
なもので濡れており、地面には色のついた
ゴム破片が。そうか、あのガキどもが、ジ
ーサンに水風船を投げつけたってのか。
 
分別のない子供のことだ。あまり目くじ
らを立てるのもどうかとは思うが、よりに
もよってホームレスを狙うところが悪質と
いうか、末恐ろしいというか。これも足立
クオリティってか。
 
子供たちはまだふざけ足りない様子で、慎重に距離を保ちつつ、ジーサンを挑発し
てくる。
「オジサーン、何でゴミなんか持ってるの?」
「汚いオジサーン、変なニオイするからあ
っち行ってよ〜」
 
うなだれるジーサンを見て決心した。よ
し、ここはひとつ、おれがガツンと叱って
やろう。
 
と、そこで思わぬ事態が。ジーサンがお
もむろに腰をひねり、手に持っていたゴル
フボール大の石をガキどもに投げつけたの
だ。腕がブンと唸るほどの全力で。
 
しかし、力みすぎて手元が狂ったのか、
石はガキどものだいぶ手前でドスンと落ち
た。
 
ジーサンが目をむいて絶叫する。
「オマエら、首へし折ってやろうか!
あっち行け!あっち行けよバカ!」
 
ガキも酷いが、このジーサンもたいがいですな。公園を後にして、さらに町の奥へと進むことしばし、こじんまりとした商店街にた
どり着いた。景気が悪いのか、1軒おきに
店舗が閉鎖されている案配で、とてつもな
く活気がない。
 
喫茶店でもないものかと周辺をウロ
チョロしだした矢先、前方におかしな人物が歩いていることに気づいた。
「邪魔だよ、ババア。コラ、どけよ」
 
派手なシャツを着た男が、すれちがうオ
バサンたちに悪態をついているのだ。狭い
歩道のド真ん中を、自分がノシノシ歩いて
るにもかかわらず。
 
ガラ悪いなぁ。今どきこんなわかりやす
いキャラ、Vシネマにだって出てないぞ。
 
さりげなく追い抜かして顔を確認したと
ころ、サングラスにニット帽とそれなりに
いかつい格好をしているが、よく見れば
60過ぎのジーサンではないか。
 
多少、恐怖心が和らいだので、思い切っ
て話しかけてみることに。
「こんにちは」
ジーサンがピタッと足を止めた。
「なんか怒ってらっしゃいました?どうしたんですか?」
「え、なに?」
「いや、何か怒ってましたよね」
「いや、ぜんぜん」
 
ジーサンは何の話だといわんばかりにキ
ョトンとしている。変だな。たしかに人を
罵っていたハズだけど…。
 
ジーサンが去ったあと、すぐそばの商店から、店主らしきオバチャンが顔を
しかめて出てきた。

「変な人でしょ?大っ嫌い」
 
口ぶりからして事情を知っているようだ。
何なんです、あのジーサン。
「いつもああやって威張りちらしてんのよ。
女の人と年寄りにだけ」
 
あのジーサン、生まれも育ちもこの地域
の人間で、昔は相当なやんちゃ者だったら
しい。で、先ほどおれが見たように、住人
を町中で無用に威嚇していたのだが、ある
日、罵倒した男性にこっぴどく痛手を負わ
されてからというもの、自分より若い男を
挑発するのをいっさい止めたのだという。
「でも女の人には相変わらずああいう態度
なの。本当、みんなから嫌われてるのよ」
 
すごい。すがすがしくなるほどの小悪党だ!
 
次なる目的地、竹の塚にやってきたころ
には、午後8時を回っていた。すっかり日
の沈んだ駅前は家路につくサラリーマンや
中高生がぞろぞろと歩いている。
 
この竹の塚というエリアは足立区の中で
も特にファンキーな土地とのことだが、そ
の理由は町中を歩いてすぐ見当がついた。
 
やたらと団地が多いのだ。一つ団地を見
つけても、100メートルも歩けばまた別
の団地が出現し、また100メートル進め
ば…と、とにかく至るところに巨大な団地
群が点在している。悪ガキや不良少年が大
量生産されるには理想的環境と言えるだろう。
 
とはいえ、その後の3時間は、これとい
ったシーンになかなか遭遇できなかった。
いつのまにやらシトシトと雨が降り始めた
せいで、外を出歩く人が激減したのだ。  それでもめげずに探索を続けていた矢先、突然、遠くの方で物騒な物音が。
 
ヒューーーー、パンッ!
 
この派手な音。間違いなくロケット花火
の音だ。しかし、こんな夜中に誰が花火を?
 
首をかしげているとまた、 
ヒューーーー、パンッ!
 
花火音は、少し離れた団地の方から聞こ
えてきた。とりあえず行ってみるか。
 
団地裏手の生活道路には1台のタクシー
が停まっており、中年の運チャンが何やらあたりをキョロキョロしている。
「あの、何かあったんですか?」
「いやー、いきなり花火を打ち込まれて、
頭に来ちゃってさ」
 
この場所で乗客を降ろしてから、車内で
帳面をつけていたところ、突然、ロケット
花火がクルマめがけて飛んできたそうな。
幸い、花火はクルマには当たらず、傷つく
ことはなかったものの、運チャンは悪質な
イタズラだと憤る。
「たぶんこの団地からなんだよな。クルマ
の外に出たとき、敷地のどっかから何人か
の笑い声が聞こえたから。くそ、腹立つな〜」
 
深夜0時過ぎ。一段と雨足が激しくなっ
てきた。通りという通りはシーンと静まり、
スナックで飲み終えた酔っぱらい客以外に、
人影はほとんど見あたらない。
 
とある住宅街の一角を歩いていたとき、ュース自販機にもたれかかり、傘もささ
ず、スマホをいじっているニーチャン(20代半ばくらい)に遭遇した。見るからに不
良っぽい雰囲気ではあるが、特別、何かし
てるわけでもないのでそのままやり過ごす。
 
およそ1時間後、界隈をぐるっと一周し
てきたら、自販機ニーチャンが、同じ場所
で同じ姿勢のまま、いまだスマホとにらめ
っこしていた。何なんだ、この人。
 
足を止め、あらためて男を観察する。自
販機の明かりに照らされたその顔は雨でずぶ濡れになっており、目の下には濃いクマ
が。ひどくくたびれた印象だ。
 
男と目が合った。 
気まずさに耐えられず話しかける。
「あ、こんばんは」
「……」
「あの、傘ないんですか?
 
さっきからずっとここにいますよね? 
風邪ひいちゃいますよ」
「……」
 
男は声を発しない。ただ、大きく見開い
た目でこちらを見つめ、口をパクパクさせ
ている。
 
いや、よく聞いたらかすかに何かささや
いているぞ。ナニナニ?
「…たい、…たい、死にたい…」
 
聞き取れた瞬間、背筋に冷たいものが走
った。なんだよ、コイツ。ヤク中か?
 
不気味すぎるのでもう退散!
 
竹の塚を離れ、タクシーで最後の目的地、南花畑に向かった。
 
この町は延々と住宅街が広がっているだ
けで、小さな繁華街すらないエリアだが、
夜な夜な、界隈の不良少年たちが徘徊し、悪さをしでかしているとのウワサがある。
 
しかし時刻はすでに深夜2時を回ってい
る。おまけにこの空模様ではさすがに何も
起きないかも…。
 
歩けど歩けど目の前には寝静まりかえっ
た家並みが続くばかりで、人はおろか走っ
ているクルマすら1台も見かけない。町は
完全な静寂に……ん、何だアレは?
 
角を曲がった先に見えたマンション。そ
の1階にあるガレージの周囲に、数人の人
だかりが出来ている。近づくと、不穏な怒
声と悲鳴、そして人間の体を殴打する鈍い
音が交互に聞こえてきた。
「オラァ!オラァ!」
ドス、バキ!
「うぅぅ、ううっ!」
「わかってんのかよ、ああっ!?」 
ドゴ、ドガ!
「わ、わかってます」
ガン!
「ううっ!」
 
奥で誰かがを暴行を受けているのは間違いない。しかしガレージの入り口付近にはいかにもそのスジの人っぽい男たちが数人、見張り番のように立っており、それが壁と
なって、なかの様子が確認できない。
 
その間もバイオレンスな音が耳に飛び込んでくる。
「マジでテメェ、殺すぞ!」
ドゴドゴドゴ!
「ううっ!か、勘弁してください。勘弁してくださーい!」
 
な、なんだこりゃ。 
もう少し様子を伺いたかったのだが、見
張り番のひとりとバッチリ目が合ったため、
いったんは素通りすることに。
 
そして、また素知らぬ顔でUターンをしたところで、見張り役が声をかけてきた。

「どうしたの? このマンションの人?」
「え、いえ。人の声が聞こえたような気がしたので…。何かあったんですか?」
 
男がニコニコと不気味に笑う。
「ん?別になんでもないよ。用がないなら来ない方がいいと思うけど」
「あ、はい。すいません」
 
素直にきびすを返した。背後では、打撲音と悲鳴がいまだ続いていた。