本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

裏切った相手に復讐したい男女がらみのトラブルの女の執念

裏切った相手に復讐したいなど、男女がらみのトラブルを解決するのが私のおもな仕事だ。

しかし、男女関係のもつれが単なる個人間の問題で済まなくなり、周囲を巻き込み大きな事件となってしまう場合も少なくない。今回紹介するのは、ある広告会社を舞台に裁判沙汰にまで発展してしまったケースである。

「3カ月ほど前に解雇した社員からイヤガラセを受けて困っているんです。どう考えても犯人はその女性しか心当たりはないのですが、立証のしょうがないんですよ。内藤さん、なんとか証拠をつかんでください」

そう依頼してきたのは、横浜にある中堅どころの広告代理店で専務の肩書きを持つ男だ。顧問弁護士に相談したところうちを紹介され、訪ねてきたという。トラブルの舞台となった広告代理店は、絵に描いたような同族会社。

社長は、現在、会長職にある創業者の長男。専務も従兄弟なら役職者もほとんどが親戚筋で占められている。


1年ほど前、その会社にA子が派遣社員としてやってきた。何人かいる中の1人ではあったが、美人で仕事のできる彼女は非常に目だつ存在だった。

男性社員はあの手この手でアタックを繰り返し、結果、独身の彼女は制作部のヤリ手部長。B男(30才)を選んだ。

B男は妻帯者だったが、不倫をどうのこうの言う社風ではない。周りの人間も「うまくやったな」と黙認した状態で何事もなく半年が過ぎた。ところがある日、会社にB男の奥さんが乗り込んできてA子をなじり倒した。

2人の関係を知った奥さんが、発作的に行動を起こしてしまったらしい。実はB男の奥さんは、取引会社の重役の娘。A子を選べば会社を放り出されるのは目に見えている。決断を迫られたB男は、A子を呼び出し別れを告げた。

それだけなら社内不倫の果てのよくある話で終わったが、B男が社長の甥だったため、この広告代理店は社を上げてA子を追い出しにかかった。

小さなミスを理由に取引先の人間がいる前で大げさに叱ったかと思えば、役職者がことあるごとに辞めてくれと言わんばかりの皮肉を浴びせるなど、まさに針のむしろ状態。彼女は、ほどなくして会社を去っていった。

しかし、よほどその身勝手な仕打ちが腹に据えかねたのだろう。A子は反撃に出る。まず、彼女が辞めてまもなく会社に無言電話が入るようになった。朝といわず昼といわず、受話器を取るとそのまま何も言わず切れてしまう電話が、多いときには日に百本以上かかってくる。

さらに、彼女がいろいろなメーカーに会社のファックス番号を告げて要請したらしい、様々な商品の案内ファックスも延々と届く。それだけでも業務的には大きな打撃であるが、会社がいちばん困ったのは取り引き先へのイヤガラセだった。

A子は半年以上会社にいたので、社内の人事関係はもちろん、取り引き先の担当者のことまで熟知していた。それを利用し、悪質な文面を送り付けたのである。

例えば、「先日は奥様の御葬儀参列できず申し訳ありませんでした。心より御冥福を御祈りします」などという手紙を取り引き先の役職者宛に、その人物を担当している社員の名前で送る。

また、手紙だけでなく、会社の名前で何通となく弔電もバラまいた。送られた方にしてみれば、文而が文面だけにシャレでは済まない・怒って直接、文句を言ってくれば「実は、情けない話ですが…」と事情を説明することもできるが、中にはたぶんそれを理由に仕事を発注してこなくなったと思われるスポンサーも少なくない。

会社の業務成績は徐々に落ちてきた。そんな会社の状況をアザ笑うかのごとく、A子はさらなる手段を講じる。役職者に、脅迫まがい手紙を送ってきたのだ。顧問をやってる弁護士が顔見知りだったこと以上に、3カ月もの間、しつようにイヤガラセを繰り返すA子という女性に興味を覚えた私は、仕事を引き受けることにした。


話を聞いて私が立てた作戦は、2つある。
まずは、無言電話をかけている現場をビデオに押さえることだ。考えてみれば無言電話を何百回とかけるときは、通話明細などが残る自宅の電話や携帯を使うのではなく、公衆電話を使っている可能性が高い。
会社にナンバーディスプレイ式の電話機を置き、無言電話がかかってきたときの日付や時間をビデオに撮る。番号非通知の電話からかかってきた場合は液晶に何も出ないが、公衆電話からかかってきたときは「コウシュウデンワ」の文字が表示されるはずだ。
と同時に、A子を尾行。

日付、時間を入れたビデオで彼女が同時刻に公衆電話から電話をかけている姿を撮影する。1回や2回なら偶然といえるかもしれないが、回しっぱなしのビデオで何度となく両方が合致すれば、それ相当の証拠になるはずだ。
さちに、素人が脅迫文を書くときは、下書きを書いたり書き損じが出るのが普通。そこでA子が出すゴミを拾い、物理的証拠を集めるのだ。方針を決めたら、実行あるのみ。会社で無言電話が多くかかってきた部署の電話機をディスプレー式に換え、液晶部分を撮影できるよう家庭用ビデオを三脚に固定した。

一方、尾行部隊は、近くの会社で事務のバイトをしているA子が家を出るときから付ける。A子は、家を出るとまず駅前の公衆ボックスに入った。バッグからシステム手帳を取り出し、中にはさんであったメモを見ながら、何度も何度もかけ直す。無言電話をかけてるのは間違いない。

その後も、電車から降りて会社まで行く間、公衆電話を見かけるたびにイタ電を繰り返す。会社で勤務中も、休憩時間や昼休みになるとワザワザ出てきて電話をかけるA子。彼女の表情には暗いところなどなく、楽しい日課をこなしているよう。

すでに生活の一部と化しているようだった。

ゴミを担当したスタッフは週3回、彼女の燃えるゴミの袋を欠かさず回収した。ゲットするたび事務所で中身の点検だ。床に新聞紙を敷き、ビニール手袋をはめて中身をあける。そして3週目。

ゴミの調査で、我々がA子の使っている化粧品やよく行く店、ファックスをやり取りする相手に詳しくなったころ、ついに待望の証拠が手に入った。A子がワープロで書いた手紙の書き損じがゴミ袋から出てきたのだ。

おまけに、いつも彼女がイタズラ電話をしているときに見ていたメモも捨ててあった。そこには、B男の会社の各部署のダイヤルがリストアップされていたのである。