本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

美人キャバ嬢を口説き落としたら恐怖の粘着社長の愛人だった

京都市内の小さな広告代理店に勤務。彼女はいないが、実家暮らしで給料は人並み以上。

そんな悠々自適な毎日を送る私の唯一の趣味がキャバクラ通いだ。もっとも戦果のほどと言えば、ここ4年間、ほぼ毎月3回は遊んで、お持ち帰りできたのがたったの2人。店側にとっちゃ、単なる『いいお客さん』である。だからこそ、その日起きたことは我ながら信じられなかったのだ。
3月某日。河原町にある馴染みのキャバクラに入ったのは、深夜過ぎのことだ女の子の待機席に、1人のキャバ嬢がポツンと座っていた。見かけぬ顔だが、途端に心が浮ついた。伊藤美咲似の超美形。めちゃめちゃ可愛いやん。
私の視線に気づいたのか、彼女も、こちらをチラ見している。
おっしゃ、指名!ここのテーブルおいで〜。彼女はマユ22才。今日が初出勤らしい。愛くるしい笑顔、服の上からでもわかる豊かな胸。ものの5分で心を奪われた。
ダメで元々や。ここは強引にいったろ。来店前にひっかけていた酒の勢いも手伝い、私はいきなり口説きにかかる。
「マユちゃん、本当は最初から俺のこと好きなんやろ?」
「え〜、なんでですかぁ?」
「入口で俺のことエエと思ってる目してたもん」
若い頃の掛布(元タイガース)似の男が、何をァホなこと言うとんねん。そう思われても構へん。俺は、キミみたいな美人と話しできてほんまうれしいんや。この正直な態度が良かったのか、初めて指名してくれた客だからなのか、よくわからない。が、この後、驚惜の展開が待つていた・
アフターの誘いをあっさり承諾したマユは、その数時間後にはラブホで見事な裸体をさらし、さらには私の「付き合ってほしい」という申し出に、首を縦に振ったのである。人生の幸福が一度に襲ってきたような1日だった。正直、このまま死んでもいいとさえ思った。こんな可愛い子が、こんな冴えない男の彼女になってくれるなんて。鳴呼、夢よ醒めないでくれ!醒めなかった。
いでくれ!
醒めなかった。それから私とマユは、週に2 度はデートする仲となり、映画だ遊園地だセックスだと、2 人の時間を楽しんだ。何度か目のデートで、彼女から「雅彦のこと、マジで好きになったみたいやわ」と耳打ちされたときは、感激で体が震えたものだ。
付き合い始めて2 力月がたった。
5月下旬のある日、ラブホで愛し合った後、何やらマユの様子がおかしいことに気づいた。どこか落ち着かない顔で、タバコを立て続けに吸っている。
どしたん?何かあったんか?
「…あのな」
ィヤな予感がした。
「雅彦に黙ってたことあんねん。伝えておいた方がええと思って」
「…なんや、恐いこと言わんといてゃ」
「…ウチ、ホンマは、ある会社の社長の愛人やねん…」
「ぇ」
「ごめん、黙ってて…」「なんや、それ!」「ちょっと、待って」
逆上する私をマユは制して言う。関係を崩したいわけではない、傷つ付けたことは謝る。実は、もう愛人も辞めたいと思っている
「そうすれば、ええやろ!」
「せやけど、なんか…私と、こんな関係になって伝えておいた方がええと思って」
「だったら、なんや?何なら俺が直接、話しよか?」
「うん…。あんな、ウチ、雅彦と一緒に居出したんは、あの人との関係精算したいと思ってたときに、優しくされたからってのもあるねん。……ごめんなあ、いっぱいヘンなこと言って…」
「ま、正直に言うてくれたから、俺のことはええよ。でも、そこはきちんとしてほしいねん。わかってくれるよな?」
「…そやなあ…」
歯切れの悪いまま、マユは口をつぐみ、それ以上、このことに関しては話そうとしなかった。私の不満と疑問が解決されるのは、その3日後のことだ。
夜8時、自宅の部屋で雑誌を眺めているとき、見知らぬ番号から携帯に着信が入った。私は昔から知り合い以外の電話は取らない主義。このときもまた無視していたのだが….メッセージは一切無し。誰や…。恐る恐る通話ボタンを押す。その瞬間だった。
「ワレ、どこの奴じゃ!女盗りくさりやがって!」
耳に男の怒声が飛び込んできた。女?盗る?…まさか、マユの!?
「そうや。あいつに持たせとる携帯の明細書で、おまえの番号が上がったんじゃ、コラ!」
「ぁ…い…」
「おまえ、今から京都駅まで出て来いや」
「おまえ、どこにおるんや?」
「やったら、こっちから行くから、待っとれ」
電話が一方的に切れた後、私は思わず、その場に座り込んだ。
マユからはどっかの会社の社長としか聞いてなかったが、あの恫喝ぶり、
もしかしてヤクザか…。あかんて。そんなん勘弁してくれょ。震える指で、マユの携帯番号を押した。が、呼び出し音は鳴るものの、一向に出ない。
どうしよ。ホンマに家まで来るんか。いやいや、それはないで。俺の家がわかるわけないやないか。ハッタリに決まってる。
そう信じたかったのだが…。
ドンドンドン!
1時間後、突然、玄関のドアが激しく叩かれた。
「ワレ、出てこんかい!」
ドア越しに聞こえてくる怒声は、紛れもなく、先ほどの電話の男だ。あかん、ほんまに来よったがな。どうしよ!
場に居合わせた両親が、不安な面もちで玄関を見ている。親に頼んで、出かけたことにしてもらうか。あかん、そんな迷惑はかけられない。だったら…警察?いやいや『ヤクザっぽい客を追い返したい』では、来てくれるわけがない。嗚呼。
訊ねてきたモンを待たすんやな。この家は!あぁぁん
狼狽しているうちにも、怒鳴りは続く。親や近所の目を考えれば、もはや出ていくより他に道はなさそうだ。
意を決して、玄関を開けると、作業服を着た細眉のパンチ頭が立っていた。門先に大型ダンプヵーが駐車されている。その横っ腹にX Xエ務店の文字。社長は社長でも、土建屋のオヤジらしい。
「おまえ、どないしてくれんじゃ。マユと俺の仲を壊したいんか?」
「いや、それは…」
緊張で震えつつ、上に目をやり腰を抜かしそうになった。ダンプの助手席にマユがいたのだ。しかも、顔面を腫らして口角から血を滲ませている。
男に殴られた上、私の家まで連れてくるよう強要されたのだろう。なんていうことを…。
「なんや、その目は。逆ギレかああ。ナメとつたらアカンどお!」
「いや、なんて、いうか…」
言い終わらぬ前に、男は私の左腕を背中の方に絞り上げた。ギャアアアア!
「今日は顔の確認や。これから、きつちり追い込むさかいに。楽しみに待っとけや」
捨てセリフを吐き、男は私の腕を解放し、そのままうダンプで走り去つた。マユが泣きそうな顔で見ているが、何をどうすることもできない。
どうやら私は、とんでもない男の愛人に、手を出してしまつたらしい。
「ごめんな。私が家を教えても
うたばっかりに」襲来の翌日深夜3 時、マユが電話をかけてきた。何でも、今は与えられているマンションに軟禁状態で、男も一緒だといぅ。
「話して大丈夫なんか?」
「うん、寝てるから。小さな声しかしゃべられへんけど」
危険を顧みず連絡をくれたマユ。急に胸が痛くなってくる。
「雅彦のこと好きになったから、乱暴なあの人のこと知られて、逃げられるんが恐くて。ちゃんと話せばよかったんや…」
「それはもぅええって。ホント、気にせんでええから。それょり、社長さん、どんな人なん?」
聞けは、男はx xにあるエ務店の経営者で歳は38才。同じ町内にある自宅で、妻と子供2
人の4人暮らしらしい。マユは月30万という金に魅せられ愛人関係を始めたそうだが、蓋を開けてみると、異常なまでの嫉妬家で、これまでに何度も大きなトラブルがあったという。
「すぐ殴るし、しつこいし…」
「そうなんや…」
「ごめん…ホントにごめん…」
「マユは大丈夫か」
「うん、私も…もう逃げたい。雅彦、助けてほしい…」
「あ、うん…そうやなあ」
情けない返事しかできなかった。私は昔からそうなのだ。おっとりした性格で、争い事は常に避けていた。いや、逃げていた。で、今回もオマエはそうなんか?愛する女が助けてと訴えてるのにまた知らんぷりか?怒鳴られようが殴られようが、きっちり話を付け、彼女を取り戻すのが男いうもんやないんか?
頭ではわかっている。でも、体が動かない。マュを救いたい気持ちは山ほどあるのに、男に対する恐怖が邪魔して足が前に進まないのだ。
実は、今日だけで男から携帯に117件もの着信が入っていた。むろん男の携帯と非通知は着信拒否している。が、電話の大半は別の番号か公衆からかけられていた。なんたる執念。不気味としか言いようがない。
「雅彦、またダンプ来てたで」
翌日、会社から戻ると、お袋が慌てて近づいてきた。
「オマエを出せえ出せえって、大変やったんや」
「そうか。すまんかったわ…」
「何なの?あの人は?」
「…ちょっとした知り合いや。心配せんでええ。これからは、仕事中でも。すぐ電話してくれたらええから」
努めて平静を装ったが、内心ドキドキである。どうやら男は本気らしい。このままだったら、いつまた暴力を振るわれるかわからない。いや、下手すりや.・・・
その後5日間、男は毎日、自宅にやって来た。しかも、私がまだ仕事から帰らぬ間に、親父やお袋を追い込みに来ていた。
「息子のケツは、親が拭くんやろうが、コラ」
「何を、かばっとんねん、早よう出せえやあ!」
実際、両親は私をかばい、男が来ても連絡を寄越さなかった。が、それが逆に堪える。自分が撒いた種で両親に大きな迷惑をかけている自分。
何とかせなあかん。何とか…。
しかし、実際の私は、このピンチから逃げ出してしまう。男への恐怖、両親からの追及等々、ストレスがピークに達し、ビジネスホテルに隠れこんでしまったのだ。「悪いけんど、今の状況だけやったら、相手を指導することはできひんなぁ」
○○警察署の中年巡査の返答は、想像どおりだった。男からら受けている被害は、形のない暴力。実際に、身に危険の及ばぬ限りは、その行動を戒めることはできぬという。
月半ばの昼過ぎ、私は死んだような目で、男の自宅前に立っていた。火を付けるつもりだった。男空の家に放火し、ヤツに復讐しようと考えていた。
それにしては、引火する道具は100円ライターしか持っていない。何をどうする気なのだ。支離滅裂。思考壊滅。自暴自棄。
放火した後、自殺すればええやん。もうどないなってもええ。あまりにも身勝手な理屈。でも、さほどに私は追い込まれていた。
ふらふら玄関に近づいた。その瞬間、庭に人がいるのに気づ、いた。幼い子供と、その母親らしき女性。そこで我に返った。
「すんません」
「……あっ、何なん?」
奥さんは、明らかに不審な目をくれた。歳のころ30前後か。
往年の飯島愛のごとき前髪は、いかにも土建屋らしい。
「旦那さんのことで、ちょっと話があって…」
「自分、誰なん?」
「いや、知り合いと零っか…イジメられてまして、旦那さんに」
「はああんたイジメられっ子か?アホやな〜。大丈夫か?」
思わず掴みかかりそぅになるのをグッと我慢し、話を続ける。
「そのイジメなんですけど、きっかけは、旦那さんの愛人問題にありまして…」
「え、アイッ、また、やりよったんか!」
私は、マユとの付き合いから、現在に至るまでを、かいつまんで話した。奥さんは聞くにつれ、どんどん顔を赤くさせていく。
「これで4 度目やわ。やると思とったら、本当にやったわ」
彼女日く、愛想はとっくに尽きており、今はいかに大金の慰謝料を取るかを考えているのだそうだ。
「…離婚されるんですか?」
「あたりまえやわ。アホらしゅうて、付き合えんでえ。あんたも、イジメられっ子やってないで、やり返したり!」
「はい。でも、どうやって」
「男のクセに、しっかりしいや。とりあえず告訴。私とじっくり相談しようや」
1週間後、警察に脅迫の被害届を提出。そのまた1 週間後に、男の工務店が加盟する『建築業組合』( 以下、建業) の事務所に足を運んだ。これから、ここで奥さんに教えてもらつた手口で一芝居を打つ腹づもりだ。
『建業』は、字面のとおり、建築業界の社会保険や労働基準法を司る機関で、他業種と同様、寄り合いで仕事の斡旋も行つている。
『建業』の悩みの種は、この業界に、昔からヤクザ者が多いこと。粗暴な対応が原因で、仕事が無くなることも少なくない。
『建業』としては、クリーンなイメージを保ちたい。規律や社会常識を守らぬ業者は除名も辞さない。規律や社会常識を守らぬ業者。まさに、私の旦那のことじゃない。訴えなさい。絶対、除名されるから。奥さんのことばに後押しされ、覚悟を決めた。
「すいません。そちらに加盟の業者さんに酷い目に遭わされまして。陳述に来たのですが、担当者の方いらっしゃいますか」
受付の女性スタッフに声をかけると、奥から事務所長が飛んできた。私は、これまで受けた脅迫、両親がノイローゼになるまで追い込まれたこと等、事の詳細をつぶさに話した後、所長の顔を見て言った。
「あんな方を置いておられて、いいのですか?」
「申し訳ございません」
「告訴は、してますんで」
「えっ!それは組合でも大きな問題です。きちんと対処させていただきますので」
後日、奥さんに聞いたところによれば、男は脅迫の嫌疑で組合に呼びだされ、除名と同時に3年間の«所払い»(同じ地域では営業不可能) を言い渡されたらしい。
このことで、男が逆上し、より過激な報復に出てくるかもしれない。が、私はもう逃げない。すでに自宅には戻ってるし、もし暴力行為があれば、改めて警察に訴え出るまでだ。私個人で法に触れるような復讐を図る気はさらさら無い。
マユとはもう、5 力月近く音信不通のままだ。携帯は切ったままのか、相変わらず呼び出し音は鳴らないが、まだ解約はされてないようだ。
留守番電話にも、何度かメッセ—ジを残した。聞いているのかどうかはわからない。いや、たとえ聞いていても、返事をする気はないのだろう。
あのときもっと勇気を持っていれば。愛する女を失い、改めて自分の不甲斐なさを悔やむ私だ。