本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

特別養護老人ホームの恐ろしすぎる錬金術

「極秘で調べてほしいことがあるんだ。頼まれてくれ」

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知人を介し、ある議員から調査の依頼が入ったのは今年2月のことだ。彼は選挙公約として掲げた特別養護老人ホームの設立を現実のものとし、地元では有言実行の政治家として人望の高い人物である。依頼を受けたオレは、すぐさま彼が理事長を務める特養老人ホームに駆け付けた。すると、

「恥は承知だが、どうしても追い出したい理事がいるんだ。ゼヒ、キミの知恵を貸してくれ」

市議が腰を折り、深々と頭を下げる。オレはその真意もわからぬまま、首をタテにふっていた。
食事は1日300円。お風呂は週に1度
「特別養護老人ホーム」は、介護認定で要介護度が1-5とされた65才以上の人を受け入れる老人ホームのことだ。国や地方自治体などの公的資金で運営されるため、月々の費用は食費を入れてもおよそ6万ほど。民間の施設が何十万とかかるのに比べれば格段に安い。確かに痴呆症になって寝たきりでも、自分の親なら面倒を見たいと思っのが人情だが、それにも限界がある。よって、入所希望者は殺到し、1日だけ預かるデイ・サービスや、2、3日のショートステイ・サービスも順番待ち。ホームは常に満杯だという。

しかし、調査を行うにあたり市議から事情を聞いてビックリ。実態はとんでもないことになっていた。まずこの市議が、20も年下の愛人に所内の喫茶部を任せ、その所得を申告していないのだという。そのことを出入りの不動産屋に知られ、バらされたくなかったらオレを理事にしろといってきて・・

クビにしたい相手とは、その不動産屋の山川(仮名)だ。

「私が不在がちなのをいいことに、やりたい放題なんだ」

理事長室に自分の机を持ち込んだ山川は、まずそれまでの出入り業者を差し止め、自分の息がかかった連中を使い出した。結果、1人1日800円だった食費は300円に押さえられ、病状に応じた個別のメニューは全部おかゆに。業者には800円のまま出させ、差額はすべて山川の懐へ入った。

週3回だった入溶は週1になり、さらに2日に1度交換していたシーツ類などは1カ月間使いっぱなし。それどころか、汚してもいない入所者にまで、おねしょをしたとして別料金をとる。おまけに車椅子や介護ベッドなどの代金は踏み倒すのが当たり前というのだからタチが悪い。

「私が何度忠告しても、逆に脅されるのが関の山で」

特養ホームが閉鎖にでもなれば、溢れた老人を吸収できる施設はない。仕方なく市議が根回しをし、監査日だけ規定の看護士や車椅子をかき集め、入所者の身の回りを清潔にしておくそうだ。
動き回らないようベッドに縛り付ける
「ちょっと中を見ますか」

市議に連れられ、所内を回る。大型テレビの置かれた談話室には誰もおらず看護師の姿も見あたらない。90人もの年寄りが住んでるなんて信じられない静けさだ。

「ここに入ってみましょ」

2人部屋をノックしてみたが、返事はない。そっと中を覗くと、昼というのに2人ともベッドの中だ。

「特養の入所者は家族が面倒を見きれない要介護認定者なんだよ。多いのは痴呆症で、このおばあちゃんたちもそう。以前は介護士がつきっきりで面倒みてたのに、山川はそれじゃ人件費がかさむって、動き回らないようベッドにしばりつけてる」

うーん、いくらなんでもこれはないだろう。こんな姿を見たら、家族は連れて帰るんじゃないか。

「いや、面会人が来たら玄関で足止めして、その間に車イスに乗せて迎えに行くから家族は実状なんかわからない」

シーツや寝間着も取り換え、いかにも大事に世話してますよと体裁を撃える。

「ただ、ここまでは大なり小なりどこのホームでもやってることで、うちが特別ってわけじゃない。しかし山川は、入所者の金に手を出し始めたんだ」

入所に際しては、100万の保証金をホームに預ける決まりになっている。例えば、暴れて備品を壊すなどした場合そこから支払われる。といっても入所者の平均年齢は80才で、退所するのは死ぬか病気になったとき。ホームにいるのは長くても4、5年の間で、特別なことがない限り80万は残る。

「山川はそこに目を付けたんだ。仲のいい業者に請求善を書かせて好き勝手に使い込んで、挙げ句退所となったらホームに寄付しますって書類に拇印を押させる」

遺族にすれば、自分たちが放り出したじいさんばあさんを死ぬまで面倒見てくれたホームである。後ろめたさもあ女金を返せとは言いにくい。

「帳簿を見ると、ヤツは年間800万近い金を1人占めしてる。最近、うちのことが姥捨て山なんてウワサになってるし、コトが公になる前に手を打たないと・・」

★オレはとりあえず、理事長室に盗聴器を什掛けることを提案してみたが、正直言ってこの仕事、まったく気乗りがしない。そりゃ山川も悪いが、市議だって老人を食い物にしているのは一緒じゃないか。あーあ、例えボケたとしても、こんな老人ホームにだけは絶対、世話になりたくない。息子たちに、今からよーく言い聞かせとこう。