本当にあったリアルな怖い話・恐怖の事件 ~現代の怪談~

なんだかんだで生きている人間が一番怖い・現代の怪談ともいえる本当にあった怖い話や恐怖の未解決事件です。

精神病院に通っていた弱者から大金を絞り取った鬼畜

もし、老人や障害者などの弱者からカネをダマしとり、嬉々としている人間を見かけたら、皆さんはどう思うか。

きっと「惨たらしいことするなよ」と大半が凄まじい嫌悪感を抱くだろう。かくいうオレも、他人のそんな外道行為を見れば必ずや気分を害すに違いない。正直、オレはやんちゃな人問だ。ケンカ、カツアゲ、バイクの窃盗と、一通りの悪事は経験してきた。

そして別にカッコつけるわけじゃないが、そんなオレでも不良と犯罪者の区別はつく。いやういていたつもりだった。ならば、なぜあんなことができたのか。今考えてもよくわからない。オレはつい最近まである親子をダマし続け、1500万弱もの大金を奪った。その行為はまさに鬼畜。当のオレでさえ、吐き気を催す外道な所業だったのだ。

オレは大阪の某デートクラブで働いていた。中学を卒業して以来、職を転々とし、初めて長続きした仕事である。それまで鉄工場の作業員や土方ばかりやっていたオレにとって、デートクラブでの仕事は未知の世界だった。

しかし、ラクな上に比較的給料もよく、何より店長にかわいがられたことが妙に居心地をよくさせた。店長は辰吉似の強面で、某広域暴力団の元組員だったが、面倒見がよかった。2人が兄弟のように仲良くなるのはごく自然の流れだった。そんなオレたちの前にその客、マコトが現れた。ヤツをどう説明したらわかってもらえるだろう。

第一印象は、とにかく鈍くさいのである。シワくちゃでスソの足りないズボン、常にニタニタして頭の弱そうな顔つき。典型的なオタクの風貌。

「ぬうわんですか?ボク?童貞ですよお」

とまるで「クレョンしんちゃん」のごとき話し方をする男が世の中に存在することを知ったのもこれが初めてだ。歳は22才ぐらいだったか。以後、マコトは毎日のように店
を訪れる(オレが働いていたデークラは客が来店し、アルバムから女の子を選ぶシステムだった)。

しかし、「何番の何々ちゃんいてます?」

と女の子を誘っても食事をするだけで、何もせずに帰っていく。目的はあくまで純粋な"デート"。どこにカネがあるのか知らんが、今までこんな野郎見たことがない。それでも、日がたつにつれ、親しい合詰を交わすようになる。オレはある日、冗談のつもりでヤツに話しかけた。

「マコトくん、10万貸して。車のホイール買いたいねん、オレ」

「ええですよー、うふふ。ちゃんと返してなあ」「え」

これがオレ、そしてしばらく様子を窺っていた店長が、マコトに対し本格的に興味をもち始めた瞬間だった。こいつ、ひょっとしてひょっとするかもしれん、と。そこでーつの実験を試みた。そこらで購入した女モンの下着を数枚、「華原朋美のパンツセット」と称して売りつけてみる。これを買ったら本当のアホや。
果たしてヤツは疑いようのないアホだった。全部で2千円もしないパンツに喜んで5万円を差し出したのである。つくづく見上げた野郎やで、ホンマ。

マコトは一応某大手電機メーカーに勤務しているれっきとした社会人なのだが、同時に精神病院にも通っていた。職場でイジメられ心神喪失にでもなったのか、それともヤツの両親が血族結婚した(このことはマコト自身から聞いた)遺伝子のせいか。ま、そんなことはどうでもいい。オレたちにとって重要なのは、マコトが限りなく魅力的なカモであるということなのだ。
折しも、デートクラブは経営難に陥り近日中に閉店することが決まっていた。失業後はどうしようか。店長に悪企みを聞かされたのはそんなある日のことだ。

「な、あのマコトって結構アホやん。まとまったカネ、取ったれへん?」

「まあ、取れるんやったらいいで好すけど。何か考え持ってはるんですか」

「おう。まあ見とれ」数日後、店長が電話でマコトを呼び出した。

「マコトくん、トイチ(10日で1割の利息がつく金貸し)やらへん?」

「儲かります?」

「そりゃ儲かるって。オレらの友人に100万借りたいヤツがおんねんけど。貸せば10万の儲けになるで、社長」

馬鹿馬鹿しいが、たったこれだけの会話で商談は成立した。無論、友人に貸すなど真っ赤なウソ。10万の利息をやっておけば頭の弱いマコトのこと、残りの90万をガメてもきっとうやむやにできる、こう店長は踏んだのだ。翌日、ヤツは何の疑いもなく自分の口座から下ろした100万を持ってきやがった。10万をヤツに利息として渡し、残った90万はオレたちがいただく。まだいけるはずだ。

10万をもらって「儲けた、儲けた」と喜ぶマコトを見て思った。ヤツの度を過ぎた性格のよさが正常な感覚を麻癖させたのだろう。オレたちは完全に歯止めを失っていたのだ。「社長、今度は70万の客が付きましたよ」

「え、もうおカネないよ」

最初の100万でヤツの貯金がほとんどなくなったことは知っている。しかし、手加減はしない。サラ金で借りさせればいいのだ。

「10日で一割の儲けになるから、サラ金で借りても損はせえへんて。やろうや、社長」「うん、わかった」素直なマコトは各サラ金会社から70万、その2日後にはさらに50万を引き出してきた。いくら大手電機メーカー勤続4年とはいえ、あのアホ面で審査に落とされなかったのは驚きである。

「あのカネ、どうなったん?」いくら抜けてる「社長」でも貸したカネのことを忘れてくれるほど甘くはなかった。どうやら、オレたちは社長を見くびりすぎていたようだ。が、心配は無用。なにしろ相手はマコトなのだ。
「あー、オレら忙しくて回収でけへんねん。ちょっと恐い人やけど、住所ここにあるから自分でいってきて」

これで十分だ。1人で回収にいく勇気はこれっぽっちもない(もっとも住所はデタラメだが)。後は勝手に泣き寝入りしやがれ。ブランド品を購入したり、ギャンブルに大金を注ぎ込んだりと派手な暮らしを満喫するオレたちの陰で、マコトはしだいに借金に追いつめられていた。カネを借りたはいいが、本人に返済能力があるわけない。

ブラックリストに載るのはもちろん、しばらくして借金取りが実家や会社に度々取り立てにきたようだ。結局借金の肩代わりをしたのはマコトの親父だった。当然、マコトは借金の理由を聞かれたが、最後まで黙り通した。後で真相を聞いて大笑いしたのだが、いい歳こいて父親の説教が怖かったらしく、自分のカネ儲け(のつもり)のための借金だとはとても説明できなかったようだ。おかげでオレたちは親父に疑われることもなく事なきを得たが、ヤツの不辛はそれだけでは済まなかった。

今まで職場で起こしてきた失敗や奇行に加え、今回の借金取り騒動がダメ押しとなり、とうとう退職勧告を受けたのだ。以前から簡単な作業もマトモにこなせず、職場の能率を思いっきり下げていたヤツのこと。上司はここぞとばかり強気だったに違いない。書類上は依願退職となったが、事実上の解雇だった。こうして、マコトの精神状態はますます不安定になっていく。

時を同じくしてヤツにちょっとした変化が現れた。デートクラブ時代は女と食事をするだけで精一杯だった野郎が今では風俗、ホテトル、果ては援交にまで手を出し始めたのだ。もともとイカレてた頭にセックスの快感が火に油を注いだのか「ファック、ファック」と人混みの中で突然叫んではウフフフと笑うマコト。そんな姿を目の当たりにしても、オレにヤツの人生を大きく狂わせてしまったという自覚は微塵もない。

どころか、なぜ仕事もしていない人間がコレだけ派手に女遊びができるのか、オレの関心はその資金の出所に向いた。

「おーマコトくん、えらい景気ええな。どないしたん、そのカネ」

「んー。お父さんの財布からな、キャッシュカードを抜いてきたってん」

「まじで?お父さんのお金、勝手に使ってええの?」

「ため込んでるモンが悪いんや」ほほー。女を覚えたら、泥棒することまで覚えてきよった。セックスしたさに父親のカードを盗んでくるなんて、ええぞ、マコトくん。それでこそ成長や。えげつないが、マコトの話を聞いて心底そう思った。とにかくカネ。ヤツからいくら引き出せるかが、何よりも重要事項なのだ。

「マコトくん、そのカネで今度はレディースローンせえへん?」

店長がまたぞろ,商談を持ちかける。

「でも、また失敗するんちゃう?」

「大丈夫やって。女が客やから恐いことあらへんし、もし利息払わんかったら体で払ろてもらえんねんで」

翌日、150万円を手にし、ニタニタ笑ってオレたちを待つマコトの姿があった。もっとも、父親がすぐに口座を閉じてしまい、レディースローンはたった1回で立ち消えとなったが、オレたちは止まらない。ヤツの車をボコボコに壊しては、その都度知り合いの車屋に法外な修理代を見積もらせ、20、30万のカネをピンはねさせてもらったのだ。

もう何でもありだ。さて、すでにお気づきとは思うが、マコトの親父も息子同様、かなり鈍く気も弱い。たかがパンクやフロントガラスの破損に何10万という請求書がくることに少しも疑問を感じずにポン、とカネを出すとはいったいどういう神経をしているのか。しかもその態度は決して豪快なわけじゃない。どこかこう、判断力の欠けた人物なのである。

「上田くん、車屋を紹介してもろてありがとな。マコトは鈍くさい子やさかい、一緒にその車屋についていってくれへんかな」

ここでこういうセリフは普通出ない。マコトが方々で借金したり、親父のカードからカネを盗み始めたのはオレたちが原因。限り無く怪しいオレを疑うのが筋というものだろう。もっとも、このお人好しな親父の存在があったからこそ、上手くマコトからカネをだまし取れたのだ。オレたちはとことん親父に感謝した。

しかし、レディースローンや車の件で、間抜け親父もさすがに懲りたのだろう。ついに、マコトに外出禁止を命じたのである。散々オイシイ思いをさせてもらったのだ。今さら無理をしてまで会う気はサラサラない。オレたちは自然、マコトと疎遠になっていった。
再びヤツから連絡があったのはそれから半年後のことだ。父親の言いつけを守り、外出を控えていたうっぷんが爆発したらしい。なんと、家を出るから迎えにこいという。愚かとはこういうことをいうのであろう。忘れかけていたカネづるが自らこっちへ飛び込んできたのだ。カネをむしり取ったオレたち以外に頼る者のなかったマコト。

オレが言うのも何だが、こんなに切ない人間も珍しい。店長にその件を知らせるが早いか、オレはマコトの実家近くへ向かっていた。また賛沢な暮らしができる、その誘惑に勝てるはずがない。ご対面したマコトには明らかに病気の悪化が認められた。

なにを聞いても返事がなく、ただ、ボーっと宙を見つめては何事かを咳いている。家出をするのはいいが、オレも店長もそんな気色の悪い野郎を自分の家に上がり込ませるのはまっぴら御免だ。かといって、側に置いておけば何かとカネを作ってくれる人間をみすみす逃す手はない。さて、どうしたものか。考えた末、マコトには不法投棄された車の中で生活してもらうことにした。

関西は某所に、10台近い不法投棄車の放置された道路がある。人通りが稀にあるものの、ホームレスが時々雨風しのぎに利用しているため、そこに1人増えたところで不審がる者はいない。マコトはまったく従順だった。言われたとおり車の外へは一歩も出ず、1日に1回オレか店長が運ぶコンビニ弁当やハンバーガを食べて暮らし続けた。そこへ毎日メシを運ぶのは容易ではなく、2、3日行けずじまいだったことも少なくない。

しかし、独力で食料の調達ができないマコトをみかねたホームレスが時折世話をしてくれているらしく、概ねヤツの車生活は順調に推移した。

マコトが家を出て1カ月半くらいが過ぎ、オレたちはかねてから温めていた計画を実行に移した。まずオレがマコトの実家に電話を入れる。

「お久しぶりです。上田ですけどマコト、いてますか」
「えっ、上田さんと一緒じゃないんですか?」

「はあ?あいつ、どっか出かけてるんですか」

「実は家にずっと帰らないんですわ。早く見つけないとまた方々で借金するに決まってるし、一回警察に捜索願を出そうかなって」

「そんな。小学生じゃあるまいし、ええ歳した息子が帰ってこないなんて騒いだら、近所の笑いものになるのはお父さんですよ」

マコトから連絡があればすぐ知らせると一言いい残し、電話を切った。まあ、切り出しとしてはこんなもんだろう。ただ、親父が警察に連絡しようとしていることに少なからずビビった。以来オレは、オッサンが妙な気を起こしはしないか、時々マコトの安否を気遺う振りをして電話を頻繁に入れるようになる。

その一方で店長は、知人から不要になった銀行口座を譲り受けてきた。元組員なのだ。これで準備は完了だ。

「今、マコトから連絡ありました。競馬でエライ負けて、いろんなトコから借金したらしいんですわ。ボクもできれば貸してあげたいんですけど、何しろ額が330万ほどあるらしくって」

「あいつはホンマに…。マコトからまた連絡あったら振込先を聞いといてくれます?」この一言を待っていた。しかし、こんな簡単にいってエエんか

翌日、マコト本人に電話をかけさせる。

「オトウサン、ゴメン。シャッキン330マンアル。ゴメンナ」

紙に書いたセリフを読ませて電話を切り、ダメ押しは金融屋を装った店長が決める。「あ、お父さんですか。返済が滞ってて困ってるんですよ。借りたものはちゃんと返してもらわな。さくら銀行の〇〇支店普通、森本タケシ、口座番号は…。ここへ入金、早急にお願いしますよ」

口座にカネが入ったのは、電話をした日から1カ月後のことだ。金額は要求どおり330万。もう笑いが止まらなかった。洋服、馬券、車、買えるものは何でも買いまくった。狂っていたのはマコト引でも親父でもなく、多分オレたちだったのだ。

大声で叱り飛ばし殴る、蹴るの暴行…
カネが尽きた7月、オレと店長は再び同じ企みに打ってでた。

「あ、お父さん?今さっきマコトから電話をもらったんです。また借金あるって・・」「…またですか。ホンマにあいつは。ナンボくらい借りたか言ってました?」

「528万って」「528万何にそんなカネ博っんやろか」

「また競馬らしいですわ。京都競馬場によく出入りしてるって。本人は怒られるのが恐くて、お父さんに直接言えないって言ってますけど、正直ボクにはどうすることもできないんで」

「すんません、いつも迷惑かけてしまって」口座をその場で伝え待つこと5日。528万はきっかり振り込まれた。いつもマコト絡みのカネは店長と折半だが、今回は1人頭250
万(28万は口座譲渡の謝礼に消えた)と今までの中では最高金額。オレはいつもの賛沢生活に加え、念願のアパート暮らしを彼女とスタートし、家具や電気製品などを新調する。ただ、マコトは3カ月以上の車生活が崇ったのか、幻聴に悩まされるほど精神が侵されていた。暴れられでもしたら警察に保護されかねない。仕方なくヤツをオレのアパートに引き取り3人暮らしを余儀なくされた。その生活が最低だったのは言うまでもない。

オレも彼女もプータローのため、家では常にマコトの世話が付きまとう。かといって外出するにもー人で家に置いておくわけにもいかず、結局は四六時中ヤツのお守りである。メシは口まで持っていってやらないと1人で食べることもできず、外に連れ出そうにも手を引っ張ってやらないと歩こうともしない。ヤツはまるで赤ん坊のように手がかかった。ヒドイときなど、夜通し見えない相手と延々話し続け、突然笑い出したり、車に乗せようとしても「乗るなって声が聞こえる」と叫びだす始末だ。

まったくやってられない。連れてこられたマコトに罪はなかったが、ストレスの溜まったオレと彼女はしだいに暴力を振るうようになった。連日大声でヤツを叱り飛ばし、殴る、蹴るの暴行。ときには木刀さえ用いた。相当騒がしかったに違いない。近所のオバちゃん連中が窓の隙間から中を覗いたり、部屋の前をウロウロするのは日常茶飯事で、彼女が何度ヤッらを怒鳴り倒したかかわからない。

「何をチョロチョロ見てんねん、クソババー」

こんな状態でよく警察に通報されなかったものだ。

9月、オレたちは最後の集金を決意した。カネが底をつき始めたうえ、家の中で糞尿を垂れ流す末期状態のマコトに我慢も限界だったのだ。何が悲しくて他人のウンコ掃除
などせなアカンねん。カネとって早くヤツとおさらばしたい、そんな気持ちだった。「あ、お父さん。またマコトから電話があったんですけど」

「マコト、何て?」「また借金らしいですわ」

「借金?もうどこからも借りられんように全国にストップかけてんけどな」

「いや、モグリでやってる金融屋まではストップかけられないでしょう。多分そっから420万も借りたんやないかと・・」

「420万て…。もうワシ、カネないで。はー、首つろうかな」

「誠意だけ見せたら相手も少しは負けてくれるんじゃないですか」

オレも必死だった。尋常な神経はとうになくなっている。ーカ月後、360万が振り込まれてきた。要求した額より少ないのは、知人、親戚を駈けずり回ってやっとかき集めたからなのだろう。オッサンの手許にはもつ一銭も残ってないはずだ。翌日の深夜、マコトを車に乗せヤツの実家付近まで送り届けた。

「マコト、もう家に着くぞ。帰りたくないかも知れへんけど、オレもそろそろきついしな」

ヤツはブツブツ言いながら窓から見える風景を眺めていた。また誰かと話をしているのだろうか。あの親父がマコトを見たらさぞ驚くに違いない。ヤツは家に帰るとすぐ、精神病院に入院した。相当重症だったのだろう、半年は出てこないという話だった。しかし、調子がよくなれば、何を言い出すかわからない。そんな心配から親父にちょくちょく電話をかけて探りを入れた。

「どうも。マコトの調子どうですか?」

「あ、上田くん?それがあいつ、おかしなことを言うんですわ。彼と彼女と3人で暮らしたとか何とか」

「へー。ボクはそんな話聞いてないですけどね。ちなみに誰と誰のことか言ってました?」

「そんなもん、でたらめに決まってますがな。アイツは昔から都合の悪いこと聞かれるとウソばっかりいいよるんですわ。ほんまにもう、頼むわ」

・・最後まで頼もしいオッサンだ。この調子ならもう、心配する必要はないだろう。ようやく肩の荷が下りた気がした。

★現在、無事退院したマコトはクスリのせいか随分と回復し、まだ多少おかしなところはあるものの、元気にやっているらしいと風の便りで聞いた。言い訳がましいが、あの「マコト」という人間が並の、そこいらのアホだったなら、オレがここまで悪ノリをすることはなかっただろう。ヤツは人にからかわれ、ダマされ、搾取されるために生まれてきたような人間だったのだ。しかし、だとしたら、この救いのない絶望感をどう説明したらいいのだ。弱者から徹底的にカネを絞り取ったという鬼畜にも劣る所業。オレはいつかマコトと親父に殺されるかもしれない。